ー特別編ーWORLD・THE・LinkⅡ
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ギャラリーを連れまわされてから、個室につれていかれた。
同じような安っぽい合板の扉が三枚並んでいる。
エリーと俺がはいったのは、その左端。
薄手のドア越しに話し声が聞こえたから、ほかの部屋はすでに商談中なのだろう。
木目のテーブルとカンチレバー式の椅子が四脚。
壁には小ぶりサイズのジョナサンなんとか。
この男はいったい何千枚のリトグラフを刷っているのだろうか。
でてきたのは冷たいジャスミン茶だった。気がきいてる。
それから拘束が始まった。
「桐山さんが選んだ絵は、ジョナサン・デイヴィスの作品のなかでも、とくに価値があるものです。描いた当人も自信作だとメッセージを寄せてくれました。」
ジャスミン茶をひと口。
なれない画廊巡りでくたくただった。
「あの作品を目にとめるなんて、美的センスが素晴らしいですね。」
すでに俺が気づいてることを再確認させてくれた。エリーはおおきな胸をのせるようにした。体を左右にくねらせて話す。
「あんな素敵なリトグラフが飾ってあるお部屋なら、私も遊びに行きたいなあ。女の子なら、みんなそう思いますよ。」
ほんとうにそれだけのパワーがあるなら、いくら出しても買うのだが。
俺はコミック誌の裏表紙の広告を思い出した。特殊なパワーストーンを買うと、女にモテモテで、宝くじも当たるという例のでたらめだ。
「そうなんだ。で、あの絵はいったいいくらするの」
エリーはテーブルに身体をのりだした。カットソーの胸がたるんで、深い谷間がのぞく。
俺の視線がそっちに向いたのは、ただの本能だと思ってくれ。
「八十万円です。」
キヨヒコのやつより三十万も値が張る。
「それは高すぎる俺には手が出せないな。」
「だけど、あのリトグラフを自分のものにすれば、毎日眺めて過ごせるんですよ。心豊かな日々になると思いませんか。」
そんな気には全然ならないが、俺は調子をあわせた。
「それはそうかも。平和と愛と環境問題のシンボルだもんな。」
女はさらに胸を突き出した。美術の鑑賞眼はともかく、自分の武器についてはよく知っているようだった。
そこで話は突然変わった。
「桐山さんは子供のころから、絵がお好きだったかですか。」
「いや、特別に好きなわけじゃないけど。」
幼稚園から、小学校、中学、高校と俺のガキの頃の話を延々と聞きだしてくるのだ。
普段はめったに思い出すこともない記憶も、そうやって質問されると案外よみがえってくるものだった。
この時点で、すでにエウレーカに来てから一時間半が過ぎようとしていた。俺とエリーのあいだにも、奇妙に熱のある関係が生まれている。
グリーン大通りで偶然会った中学の同級生みたいな感じ。
しかも相手は昔とは比較にならないくらい美人になっているのだ。
エリーは突然、悲しげな顔をした。
「私はずっと絵が好きで、美術大学に行きたかったんですけど、父親の病気で進学は断念したんです。」
それまでは口先だけの言葉だったのに、そのときだけは真剣だった。
「ほんとに」
俺はじっと女の目を見た。
嘘かどうかを判断するには、やはりここが一番よくわかる。もっとも女に関しては、俺はよく間違えるのだが。
「ええ。肝臓ガンでした。うちの家族はすごく大変だった。美大に行くとか、油彩の絵の具を買うなんて余裕は、まったくなかったです。」
どうやら真実のようだ。
目がかすかに赤くなっている。
同じような安っぽい合板の扉が三枚並んでいる。
エリーと俺がはいったのは、その左端。
薄手のドア越しに話し声が聞こえたから、ほかの部屋はすでに商談中なのだろう。
木目のテーブルとカンチレバー式の椅子が四脚。
壁には小ぶりサイズのジョナサンなんとか。
この男はいったい何千枚のリトグラフを刷っているのだろうか。
でてきたのは冷たいジャスミン茶だった。気がきいてる。
それから拘束が始まった。
「桐山さんが選んだ絵は、ジョナサン・デイヴィスの作品のなかでも、とくに価値があるものです。描いた当人も自信作だとメッセージを寄せてくれました。」
ジャスミン茶をひと口。
なれない画廊巡りでくたくただった。
「あの作品を目にとめるなんて、美的センスが素晴らしいですね。」
すでに俺が気づいてることを再確認させてくれた。エリーはおおきな胸をのせるようにした。体を左右にくねらせて話す。
「あんな素敵なリトグラフが飾ってあるお部屋なら、私も遊びに行きたいなあ。女の子なら、みんなそう思いますよ。」
ほんとうにそれだけのパワーがあるなら、いくら出しても買うのだが。
俺はコミック誌の裏表紙の広告を思い出した。特殊なパワーストーンを買うと、女にモテモテで、宝くじも当たるという例のでたらめだ。
「そうなんだ。で、あの絵はいったいいくらするの」
エリーはテーブルに身体をのりだした。カットソーの胸がたるんで、深い谷間がのぞく。
俺の視線がそっちに向いたのは、ただの本能だと思ってくれ。
「八十万円です。」
キヨヒコのやつより三十万も値が張る。
「それは高すぎる俺には手が出せないな。」
「だけど、あのリトグラフを自分のものにすれば、毎日眺めて過ごせるんですよ。心豊かな日々になると思いませんか。」
そんな気には全然ならないが、俺は調子をあわせた。
「それはそうかも。平和と愛と環境問題のシンボルだもんな。」
女はさらに胸を突き出した。美術の鑑賞眼はともかく、自分の武器についてはよく知っているようだった。
そこで話は突然変わった。
「桐山さんは子供のころから、絵がお好きだったかですか。」
「いや、特別に好きなわけじゃないけど。」
幼稚園から、小学校、中学、高校と俺のガキの頃の話を延々と聞きだしてくるのだ。
普段はめったに思い出すこともない記憶も、そうやって質問されると案外よみがえってくるものだった。
この時点で、すでにエウレーカに来てから一時間半が過ぎようとしていた。俺とエリーのあいだにも、奇妙に熱のある関係が生まれている。
グリーン大通りで偶然会った中学の同級生みたいな感じ。
しかも相手は昔とは比較にならないくらい美人になっているのだ。
エリーは突然、悲しげな顔をした。
「私はずっと絵が好きで、美術大学に行きたかったんですけど、父親の病気で進学は断念したんです。」
それまでは口先だけの言葉だったのに、そのときだけは真剣だった。
「ほんとに」
俺はじっと女の目を見た。
嘘かどうかを判断するには、やはりここが一番よくわかる。もっとも女に関しては、俺はよく間違えるのだが。
「ええ。肝臓ガンでした。うちの家族はすごく大変だった。美大に行くとか、油彩の絵の具を買うなんて余裕は、まったくなかったです。」
どうやら真実のようだ。
目がかすかに赤くなっている。