ー特別編ーWORLD・THE・LinkⅡ
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キヨヒコはなにかいいにくそうに俺のほうをちらっとみていた。
「なんだよ。いいたいことがあるなら、いえよ」
「それを……あと三日でやってほしいんだけど」
「なんで」
俺は心を落ち着かせるために、頭上を見上げた。ビルの谷間の青い空は、どこまでも高い。
この空の向こうには今も星々の世界が広がっているのだ。愚かな人間たちよ。
「あの、最後の絵を買ったのが五日まえで、クーリングオフの期間があと三日残ってるんです」
クーリングオフの期間は確か八日以内。
その間なら、解約できるのだ。
俺はあきれていった。
「それならさっさと解約するか、自分で会いに行って話をすればいいだろう。第一、こいつは事件ですらないじゃないか」
キヨヒコはまたうつむいた。
「話なんてできないですよ。お店に会いに行けば、また新しい絵を買ってしまうだろうし」
じれったい男。
「そうだアズサさん、絵を見てもらえませんか。僕の部屋は歩いてすぐなんです。」
店番にもどるのもつまらなかった。
この程度のトラブルなら悠やリッカに伝える必要もない。
おまけに夏の午前のいい天気。
「いいよ。」
見る前からわかっていそうなものだが、ダメなものをきちんと見てダメとわかるのもひとつの経験だろう。
もしかすると、実物はすごくいい作品かもしれないしな。
まあ、俺の美術に対する鑑賞眼など、走りのスイカを見る目より遥かに落ちるのだが。
立ち上がったところで、キヨヒコの携帯電話が鳴った。着メロはジェイムス・ブラントの「ユア・ビューティフル」地下鉄で見かけた女の子ことを、きれいだ、きれいだと繰り返すオタクのラブソングである。
「はい、今泉です。」
やつの顔つきがさっと変わった。
携帯のスピーカーからは甘えた女の声が流れてくる。俺がなにかいおうとしたら、キヨヒコが手でとめた。
「うん、だいじょうぶ」
女はなにかすごい勢いでまくしたて、笑い声をあげた。キヨヒコは頬を染めて、うなずく。
「はい、また今度遊びにいきます」
セールストークが始まったようだった。
ジョナサンなんとかという単語がちらりと耳に残った。
しばらくしてキヨヒコは電話を閉じると、俺にぼんやりとした視線を向けた。
「満足したか」
やつは笑って、恥ずかしげな顔をする。
「やっぱり電話をかけてきた。」
「どういう意味だ。」
「きっと店で教えられてるんだと思う。クーリングオフの八日間は毎日メールや電話があるから」
なるほど、やっとおれにもわかった。
親しい友人を装って、解約をさせにくくする販売手法なのだろう。
俺は尻をはたきながらいった。
「九日目以降は、電話はかかってくるのか」
「これまでは一度もなかった」
やつはそういうと俺に背を向けて、西口公園を歩き出した。
「なんだよ。いいたいことがあるなら、いえよ」
「それを……あと三日でやってほしいんだけど」
「なんで」
俺は心を落ち着かせるために、頭上を見上げた。ビルの谷間の青い空は、どこまでも高い。
この空の向こうには今も星々の世界が広がっているのだ。愚かな人間たちよ。
「あの、最後の絵を買ったのが五日まえで、クーリングオフの期間があと三日残ってるんです」
クーリングオフの期間は確か八日以内。
その間なら、解約できるのだ。
俺はあきれていった。
「それならさっさと解約するか、自分で会いに行って話をすればいいだろう。第一、こいつは事件ですらないじゃないか」
キヨヒコはまたうつむいた。
「話なんてできないですよ。お店に会いに行けば、また新しい絵を買ってしまうだろうし」
じれったい男。
「そうだアズサさん、絵を見てもらえませんか。僕の部屋は歩いてすぐなんです。」
店番にもどるのもつまらなかった。
この程度のトラブルなら悠やリッカに伝える必要もない。
おまけに夏の午前のいい天気。
「いいよ。」
見る前からわかっていそうなものだが、ダメなものをきちんと見てダメとわかるのもひとつの経験だろう。
もしかすると、実物はすごくいい作品かもしれないしな。
まあ、俺の美術に対する鑑賞眼など、走りのスイカを見る目より遥かに落ちるのだが。
立ち上がったところで、キヨヒコの携帯電話が鳴った。着メロはジェイムス・ブラントの「ユア・ビューティフル」地下鉄で見かけた女の子ことを、きれいだ、きれいだと繰り返すオタクのラブソングである。
「はい、今泉です。」
やつの顔つきがさっと変わった。
携帯のスピーカーからは甘えた女の声が流れてくる。俺がなにかいおうとしたら、キヨヒコが手でとめた。
「うん、だいじょうぶ」
女はなにかすごい勢いでまくしたて、笑い声をあげた。キヨヒコは頬を染めて、うなずく。
「はい、また今度遊びにいきます」
セールストークが始まったようだった。
ジョナサンなんとかという単語がちらりと耳に残った。
しばらくしてキヨヒコは電話を閉じると、俺にぼんやりとした視線を向けた。
「満足したか」
やつは笑って、恥ずかしげな顔をする。
「やっぱり電話をかけてきた。」
「どういう意味だ。」
「きっと店で教えられてるんだと思う。クーリングオフの八日間は毎日メールや電話があるから」
なるほど、やっとおれにもわかった。
親しい友人を装って、解約をさせにくくする販売手法なのだろう。
俺は尻をはたきながらいった。
「九日目以降は、電話はかかってくるのか」
「これまでは一度もなかった」
やつはそういうと俺に背を向けて、西口公園を歩き出した。