ー特別編ーWORLD・THE・LinkⅡ
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夏の池袋がどういう街かは、おれよりもあんたのほうがよくしっているかもしれない。
埼玉や北東京から集まった冴えないガキが粋がって、明け方まで羽虫のように飛び回るのだ。
『潜入、警視庁24時!カメラは見た!!』なんて番組で、補導される家出少年少女を見たことがあるだろう。
俺の夏の朝一番の仕事は、そのガキどもが残したゴミ掃除だ。
中でも一番たちが悪いのは、中身の半分残ったカップ麺(割り箸は刺さったまま)とタイルの歩道に刷り込むように残されたチューインガムのあとである。
爽やかに晴れた夏の朝に、そんなごみをたっぷり見せつけられるのは最高だよな。
春先にはこの店の娘の宗方六花の友達(?)であるジイさんが毎朝掃き清めていてくれたのがうそのようだ。
だからその日、おれが最初にやつを見たのは、聞いたことのないいんちきスニーカーのつま先からだった。
ひと目でわかる。
この格社社会で、やつや俺やその他大勢と同じドン底組メンバーだってこと。
頭上から降ってきた声は、苦悩に満ちていた。
「小鳥遊悠さんですか」
腐りかけのスニーカー、高価なダメージ加工ではなく、ただ穴のあいたジーンズ、最後に恐ろしくセンスの無い黄色いTシャツ。
俺は順番に目をあげた。
「違う。俺は桐山梓だ。悠はダチだけどな。その足どかしてくれないか。まだガムのかすが残ってるんだ。」
やつはあわてて、一歩下がった。
俺は思う存分、東京ハンズで売っている、ドイツ製の金属へらでガムを落とし、立ち上がって腰を伸ばした。
「で、悠に話ってなんなんだ。あいつは確かにここによく顔は出すけど、毎日来てるってわけじゃないよ。」
「なんで、話があるってわかるんですか。」
コンビニのポリ袋にヘラを突っ込んだ。
なんだかめんどくさいやつ。
「なにか困ったトラブルにはまって無けりゃ、ここで悠かリッカを訪ねるやつはいない。」
男は二十五、六だろうか。
坊っちゃん刈りを短くしたような形容不可能な髪形をしている。暗い顔がさらに暗くなった。
賭けてもいいが、こいつにステディの女はいないだろう。
「ぼくのはトラブルではありません。」
顔に似合った暗い声。
朝の池袋の高原のような爽やかさが台なし。
「じゃあ、なんなんだ。なぞなぞなら、もっとひまなやつとやってくれ。」
男は自分のつま先を見つめていた。
きっと世界の秘密を解くコードでも書いてあるのだろう。
ダ・ヴィンチとか、ミケランジェロとか、あの手の陰謀。
「トラブルじゃなくて、彼女の気持ちが知りたいんです。」
いきなり大声を出す。
街を行く会社員や主婦が驚いて俺たちに注目した。
いきなりこんなところで、大切な告白をするやつがどこにいる。
男は顔を真っ赤にして、身体を震わせている。腹から絞り出すように繰り返した。
「彼女の本当の気持ちを確かめたいんです。桐山さん、お願いします。」
どうなっているんだ。
俺は結婚相談所でも、雑誌なんかでいい加減なコメントする恋愛の達人でもない。
まじめで奥手な池袋の店番にすぎない。
それになにより、コイツは悠を訪ねてきたんじゃないのか。
埼玉や北東京から集まった冴えないガキが粋がって、明け方まで羽虫のように飛び回るのだ。
『潜入、警視庁24時!カメラは見た!!』なんて番組で、補導される家出少年少女を見たことがあるだろう。
俺の夏の朝一番の仕事は、そのガキどもが残したゴミ掃除だ。
中でも一番たちが悪いのは、中身の半分残ったカップ麺(割り箸は刺さったまま)とタイルの歩道に刷り込むように残されたチューインガムのあとである。
爽やかに晴れた夏の朝に、そんなごみをたっぷり見せつけられるのは最高だよな。
春先にはこの店の娘の宗方六花の友達(?)であるジイさんが毎朝掃き清めていてくれたのがうそのようだ。
だからその日、おれが最初にやつを見たのは、聞いたことのないいんちきスニーカーのつま先からだった。
ひと目でわかる。
この格社社会で、やつや俺やその他大勢と同じドン底組メンバーだってこと。
頭上から降ってきた声は、苦悩に満ちていた。
「小鳥遊悠さんですか」
腐りかけのスニーカー、高価なダメージ加工ではなく、ただ穴のあいたジーンズ、最後に恐ろしくセンスの無い黄色いTシャツ。
俺は順番に目をあげた。
「違う。俺は桐山梓だ。悠はダチだけどな。その足どかしてくれないか。まだガムのかすが残ってるんだ。」
やつはあわてて、一歩下がった。
俺は思う存分、東京ハンズで売っている、ドイツ製の金属へらでガムを落とし、立ち上がって腰を伸ばした。
「で、悠に話ってなんなんだ。あいつは確かにここによく顔は出すけど、毎日来てるってわけじゃないよ。」
「なんで、話があるってわかるんですか。」
コンビニのポリ袋にヘラを突っ込んだ。
なんだかめんどくさいやつ。
「なにか困ったトラブルにはまって無けりゃ、ここで悠かリッカを訪ねるやつはいない。」
男は二十五、六だろうか。
坊っちゃん刈りを短くしたような形容不可能な髪形をしている。暗い顔がさらに暗くなった。
賭けてもいいが、こいつにステディの女はいないだろう。
「ぼくのはトラブルではありません。」
顔に似合った暗い声。
朝の池袋の高原のような爽やかさが台なし。
「じゃあ、なんなんだ。なぞなぞなら、もっとひまなやつとやってくれ。」
男は自分のつま先を見つめていた。
きっと世界の秘密を解くコードでも書いてあるのだろう。
ダ・ヴィンチとか、ミケランジェロとか、あの手の陰謀。
「トラブルじゃなくて、彼女の気持ちが知りたいんです。」
いきなり大声を出す。
街を行く会社員や主婦が驚いて俺たちに注目した。
いきなりこんなところで、大切な告白をするやつがどこにいる。
男は顔を真っ赤にして、身体を震わせている。腹から絞り出すように繰り返した。
「彼女の本当の気持ちを確かめたいんです。桐山さん、お願いします。」
どうなっているんだ。
俺は結婚相談所でも、雑誌なんかでいい加減なコメントする恋愛の達人でもない。
まじめで奥手な池袋の店番にすぎない。
それになにより、コイツは悠を訪ねてきたんじゃないのか。