ー特別編ーWORLD・THE・LinkⅡ
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矢口と岸の話は珍しくもない話。
あたしの周囲には掃いて捨てるほどある。
高校を中退してぶらぶら遊んだ。
遊びに飽きると仕事を探した。
中卒では体が楽で、金が良く、格好のいい職は無かった。
あたりまえよね。
ふたりとも自分で何か努力したことはない。
こいつらも小脳だけで生きてるトカゲの種族だった。
話の続きは単純だ。
親がうるさいから家を出た。
たちまちこづかいはそこをついた。
月に二万の家賃も払えず、腹が減って死にそうになった。
最初のひったくりを起こした。
うまくいった。
あとはただ習慣で続けた。
けがをした人にはすまないと思っている。
泣きながら自分の事情だけを話す矢口と岸には、まったく同情できなかった。
あたしはだんだんイライラしてきた。
「ねえ、こんなやつら、警察に渡して、少年院でもどこでも送っちまえばいいじゃん。口先で反省しているだけよ。放っておけば、また次のひったくりをやる。ほかにできることが、なにもないんだから」
目を細めて話を聞いていた、喜代治が静かにいった。
「そうかもしれんな。だが、警察ならいつでも行ける。もう一度くらいはチャンスをやってもいいじゃろう。おまえたち、丈夫な赤ん坊に感謝しとけ。」
鉄があたしに金歯を見せた。
「ねえちゃん、喜代治のいうことを聞いておけ。そんなにせっかちじゃ、兄ちゃんだって逃げ出すぞ。」
喜代治はうなだれて鼻水をたらしているガキに声をかけた。
「ところで、おまえたち、早起きは得意かな?」
あたしは運転免許証を持ったまま、その場を離れた。
だから、そのあとの話はすべて西口公園で春の終わりになって、喜代治に聞いたもの。
佐伯にはひったくり犯人は結局見つからなかったと報告した。
とちゅうまではうまくいったけど、やはりだめだった。
そういうと逆にやつになぐさめられた。
ガキの情報だけじゃ、うまくいかないこともある。それでもあの腕輪に目をつけたのはなかなかのものだ。
やっぱり警察にならないか。
あたしは礼をいって断った。
だって警察より、街のほうが千倍いいからね。
うちのまえの清掃は、雨の日も欠かさずぴったり三カ月続いた。
年寄りがみな義理堅いわけじゃないわよね。
喜代治と鉄がそういう人間だったのだとあたしは思う。
うちの母は二週間目になると、売れ残りの果物をふたりに持たせてあげるようになった。
喜代治はあのひったくりのガキ二人にも同じことをやらせた。
ただし、掃除をするのはうちの店ではなく、なんと長谷部三佐男のスタジオまえ。
あの目白のお屋敷の通りね。
こちらも一日も欠かさず、誰がやったかも明らかにせず、ひたすら丁寧に掃き清めていくだけ。
二か月が過ぎた六月の早朝に、奇跡は起こった。
長谷部三佐男当人が例の革パンをはいて、階段を下りてきたという。
やつは掃除の最中の矢口と岸に声をかけ、そのまま事務所につれて上がったそうだ。
長谷部はその場でふたりを仮採用した。
なんだかおとぎ話みたいな話。
あたしの周囲には掃いて捨てるほどある。
高校を中退してぶらぶら遊んだ。
遊びに飽きると仕事を探した。
中卒では体が楽で、金が良く、格好のいい職は無かった。
あたりまえよね。
ふたりとも自分で何か努力したことはない。
こいつらも小脳だけで生きてるトカゲの種族だった。
話の続きは単純だ。
親がうるさいから家を出た。
たちまちこづかいはそこをついた。
月に二万の家賃も払えず、腹が減って死にそうになった。
最初のひったくりを起こした。
うまくいった。
あとはただ習慣で続けた。
けがをした人にはすまないと思っている。
泣きながら自分の事情だけを話す矢口と岸には、まったく同情できなかった。
あたしはだんだんイライラしてきた。
「ねえ、こんなやつら、警察に渡して、少年院でもどこでも送っちまえばいいじゃん。口先で反省しているだけよ。放っておけば、また次のひったくりをやる。ほかにできることが、なにもないんだから」
目を細めて話を聞いていた、喜代治が静かにいった。
「そうかもしれんな。だが、警察ならいつでも行ける。もう一度くらいはチャンスをやってもいいじゃろう。おまえたち、丈夫な赤ん坊に感謝しとけ。」
鉄があたしに金歯を見せた。
「ねえちゃん、喜代治のいうことを聞いておけ。そんなにせっかちじゃ、兄ちゃんだって逃げ出すぞ。」
喜代治はうなだれて鼻水をたらしているガキに声をかけた。
「ところで、おまえたち、早起きは得意かな?」
あたしは運転免許証を持ったまま、その場を離れた。
だから、そのあとの話はすべて西口公園で春の終わりになって、喜代治に聞いたもの。
佐伯にはひったくり犯人は結局見つからなかったと報告した。
とちゅうまではうまくいったけど、やはりだめだった。
そういうと逆にやつになぐさめられた。
ガキの情報だけじゃ、うまくいかないこともある。それでもあの腕輪に目をつけたのはなかなかのものだ。
やっぱり警察にならないか。
あたしは礼をいって断った。
だって警察より、街のほうが千倍いいからね。
うちのまえの清掃は、雨の日も欠かさずぴったり三カ月続いた。
年寄りがみな義理堅いわけじゃないわよね。
喜代治と鉄がそういう人間だったのだとあたしは思う。
うちの母は二週間目になると、売れ残りの果物をふたりに持たせてあげるようになった。
喜代治はあのひったくりのガキ二人にも同じことをやらせた。
ただし、掃除をするのはうちの店ではなく、なんと長谷部三佐男のスタジオまえ。
あの目白のお屋敷の通りね。
こちらも一日も欠かさず、誰がやったかも明らかにせず、ひたすら丁寧に掃き清めていくだけ。
二か月が過ぎた六月の早朝に、奇跡は起こった。
長谷部三佐男当人が例の革パンをはいて、階段を下りてきたという。
やつは掃除の最中の矢口と岸に声をかけ、そのまま事務所につれて上がったそうだ。
長谷部はその場でふたりを仮採用した。
なんだかおとぎ話みたいな話。