ー特別編ーWORLD・THE・LinkⅡ
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息のあった見事な演武のようだった。
投げが決まっても、喜代治は手首を内側に折ったまま離さない。
ヤグチは驚いて声も出ないようだ。
すべては一瞬のうちに片がついた。
凍りついたように見つめていたもうひとりのガキが身体の硬直を解いたとき、鉄がうしろから羽交い絞めにした。
こちらは技もなにもない。
頭をガキの背中に押し当て、ただひたすら締め上げる。
鉄の重ねたてのひらに静脈が盛り上がった。
ガキの腰から力が抜けて、ドスンと路上に尻が落ちるまで、さして時間がかからなかった。
うつぶせの背中に座りこんだ鉄は、ガキの頭をひざで地面に押しつける。喜代治がいった。
「どうだった、鉄。わしの左足の運びは、きちんと扇を開いておったか。」
鉄は荒い息をついたまま、頭を横に振った。
「喜代治も老けたものよ。危なくて見ておれんかった。のう、ねえちゃん、喜代治は、昔はそりゃあすごかった。わしなんぞポンポン投げられたもんじゃ。」
あきれた。あたしには足の運びどころか。どうしてヤグチが倒れているのかさえわからなかった。喜代治は恥ずかしそうにいう。
「まったくだのう。若いころなら、あの程度の突きなぞ、かすらせもせなんだ」
すり切れた革ジャンのまえを見た。
横腹のあたりに小さなくさび型の穴があいている。喜代治は吐くように笑った。
「誰でも年を取るもんじゃ」
あたしは目を丸めて、ふたり組の目を見つめていた。
喜代治と鉄は、ガキの懐から財布を取り出し、あたしに投げてよこした。
喜代治がいう。
「免許証を抜いてくれ。」
中型自動二輪の免許を残し、財布を戻した。
一枚は矢口勝、十六歳。もう一枚は岸秀和、十七歳。
悪ぶってカメラをにらみつけた童顔の写真がふたつ。
喜代治は手首を折ったまま、ガキを引き起こす。矢口はそれだけしかできないといったふて腐れた表情。
かわいげないガキだ。
「さあ、いこうかの」
歩きだした喜代治にあたしはいった。
「警察に突き出すの」
矢口の背中が警察のひとことにピクリと反応した。
「いいや、こいつらのアジトじゃ。話を聞かなきゃならんからな。」
鉄は岸というガキの腰ベルトを両手でつかむと、ひっくり返すように立たせてやった。
軟骨までピアスがはまったガキの耳元に口を寄せていう。
「逃げても無駄だぞ。お前らの身元は、このねえちゃんが押えとる。」
道端に落ちてるスイスアーミーナイフを拾うと、あたしはアパートに向かう四人のあとを追った。
階段を鳴らして二階にあがり、板戸を引いた。畳の目が見えない六畳間。
中は西一番街の路上より散らかっていた。
食いのこしの弁当や袋菓子、どろりとした中身に緑のカビが浮いたペットボトルが部屋一面に広がって、ゴミを踏んで歩くしかない。
鉄と喜代治はやつらを座らせ、正面にむかい合って腰をおろした。
座るところが無くなったあたしは、曇りガラスの窓を開いて窓枠に尻をのせた。
外の新鮮な空気を深呼吸する。
喜代治は矢口の目をまっすぐにのぞきこんだ。
「さぁ、話してもらおうかの」
投げが決まっても、喜代治は手首を内側に折ったまま離さない。
ヤグチは驚いて声も出ないようだ。
すべては一瞬のうちに片がついた。
凍りついたように見つめていたもうひとりのガキが身体の硬直を解いたとき、鉄がうしろから羽交い絞めにした。
こちらは技もなにもない。
頭をガキの背中に押し当て、ただひたすら締め上げる。
鉄の重ねたてのひらに静脈が盛り上がった。
ガキの腰から力が抜けて、ドスンと路上に尻が落ちるまで、さして時間がかからなかった。
うつぶせの背中に座りこんだ鉄は、ガキの頭をひざで地面に押しつける。喜代治がいった。
「どうだった、鉄。わしの左足の運びは、きちんと扇を開いておったか。」
鉄は荒い息をついたまま、頭を横に振った。
「喜代治も老けたものよ。危なくて見ておれんかった。のう、ねえちゃん、喜代治は、昔はそりゃあすごかった。わしなんぞポンポン投げられたもんじゃ。」
あきれた。あたしには足の運びどころか。どうしてヤグチが倒れているのかさえわからなかった。喜代治は恥ずかしそうにいう。
「まったくだのう。若いころなら、あの程度の突きなぞ、かすらせもせなんだ」
すり切れた革ジャンのまえを見た。
横腹のあたりに小さなくさび型の穴があいている。喜代治は吐くように笑った。
「誰でも年を取るもんじゃ」
あたしは目を丸めて、ふたり組の目を見つめていた。
喜代治と鉄は、ガキの懐から財布を取り出し、あたしに投げてよこした。
喜代治がいう。
「免許証を抜いてくれ。」
中型自動二輪の免許を残し、財布を戻した。
一枚は矢口勝、十六歳。もう一枚は岸秀和、十七歳。
悪ぶってカメラをにらみつけた童顔の写真がふたつ。
喜代治は手首を折ったまま、ガキを引き起こす。矢口はそれだけしかできないといったふて腐れた表情。
かわいげないガキだ。
「さあ、いこうかの」
歩きだした喜代治にあたしはいった。
「警察に突き出すの」
矢口の背中が警察のひとことにピクリと反応した。
「いいや、こいつらのアジトじゃ。話を聞かなきゃならんからな。」
鉄は岸というガキの腰ベルトを両手でつかむと、ひっくり返すように立たせてやった。
軟骨までピアスがはまったガキの耳元に口を寄せていう。
「逃げても無駄だぞ。お前らの身元は、このねえちゃんが押えとる。」
道端に落ちてるスイスアーミーナイフを拾うと、あたしはアパートに向かう四人のあとを追った。
階段を鳴らして二階にあがり、板戸を引いた。畳の目が見えない六畳間。
中は西一番街の路上より散らかっていた。
食いのこしの弁当や袋菓子、どろりとした中身に緑のカビが浮いたペットボトルが部屋一面に広がって、ゴミを踏んで歩くしかない。
鉄と喜代治はやつらを座らせ、正面にむかい合って腰をおろした。
座るところが無くなったあたしは、曇りガラスの窓を開いて窓枠に尻をのせた。
外の新鮮な空気を深呼吸する。
喜代治は矢口の目をまっすぐにのぞきこんだ。
「さぁ、話してもらおうかの」