ー特別編ーWORLD・THE・LinkⅡ
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距離にして二十メートルくらいかしら。
まだ幼い顔つきのガキがふたり、だるそうにこちらにむかって歩いてくる。
年は十六~七、あたしと同いぐらい。髪はふたりとも長く、シルバーのメッシュいり。
日焼けサロンにでも通っているのかしら、ミルクチョコのような褐色の胸をはだけ、揃いのスエードシャツを着ている。
ジーンズはあちこちがすり切れた古着のようだ。
よく似た印象のふたりだったが、背の低いほうが左手にバンダナを巻いているのが目についた。
うしろをのろのろと鉄がつけてくる。
喜代治はともかく、あたしがじろじろ観察していると感づかれそうだった。
正面の金物屋に目をそらす。ノコギリ、レンチ、プライヤー、金色のやかん。
春の午後の丸い光を浴びて、金属の表がさまざまな色を見せている。
喜代治がパイプ椅子から立ち上がり、止める間もなくすたすたとガキに近づいていった。
声が出そうになった。
あたしも慌ててあとを追う。距離は三メートル。
ふたりともまるで年よりなど目に入らない様子だ。
喜代治が声をかけた。
「アンタ、ヤグチ・マサルさんかい。その手はどうなさった?」
ヤグチ・マサルは「シルヴァークロス」のリストにのっていた名前だ。
ガキのうしろには、鉄が腰を落とし、足を広げ立っていた。
クレーンを支える台座のような安定感。
声をかけられたガキの目がキョロキョロ泳いだ。
あたしに気づいたようだ。
ヤグチは傷を隠すように右手を左手に重ねた。
そのときあたしにもはっきりとそれが見えた。
手の甲でゆるやかに優雅な曲線を描くブレスレットの十字。
つや消しの銀は鈍く光を弾き、黒い漆は日ざしを吸い込み底光していた。
「約束だ。手は出さんでくれ。」
喜代治は背中ごしにいった。
ガキも事態にようやく気付いたようだ。
腰をさげ戦闘態勢を取る。
ヤグチは右手で尻ポケットを探り、ジャラジャラと鍵がついたキーホルダーを出した。
鍵に混ざって小ぶりのスイスアーミーナイフが見えた。
栓抜きやドライバーやペンチなんかがついた多機能ナイフ。
震える手で小指ほどの長さの刃を開いた。
もうひとりのガキはあわてて後ろを振り向く。鉄は土俵入りする力士のように、狭い路地いっぱいに腕広げていた。
「なんなんだよ、このクソジジイ」
目のまえに浮浪者のような格好をした謎の年寄りがふたり。
わけがわからないのも無理はない。
ヤグチは泣きそうな声を漏らした。
喜代治はナイフを見ても、まったくひるまない。
長身の背筋を伸ばし、あいさつでもするようにまっすぐ歩いていく。
ヤグチの顔が恐怖にひきつった。
閉じたまぶたまで焼けたガングロの顔をくしゃくしゃにして、目を閉じ右手を喜代治の腹につきだした。
赤いハンドルの先で、銀のナイフがむき出しに光る。
「キヨジー、危ない!!」
あたしが駆け寄ろうとしたとき、目のまえでそれが起こった。
喜代治は腹につきこまれたガキの右手を両手でつまむように押え、左に身体を開くと軽々と反転した。
ガキはふわりと浮きあがり、きれいに宙に円を描く。
ヤグチは足先からアスファルトにたたきつけられた。
まだ幼い顔つきのガキがふたり、だるそうにこちらにむかって歩いてくる。
年は十六~七、あたしと同いぐらい。髪はふたりとも長く、シルバーのメッシュいり。
日焼けサロンにでも通っているのかしら、ミルクチョコのような褐色の胸をはだけ、揃いのスエードシャツを着ている。
ジーンズはあちこちがすり切れた古着のようだ。
よく似た印象のふたりだったが、背の低いほうが左手にバンダナを巻いているのが目についた。
うしろをのろのろと鉄がつけてくる。
喜代治はともかく、あたしがじろじろ観察していると感づかれそうだった。
正面の金物屋に目をそらす。ノコギリ、レンチ、プライヤー、金色のやかん。
春の午後の丸い光を浴びて、金属の表がさまざまな色を見せている。
喜代治がパイプ椅子から立ち上がり、止める間もなくすたすたとガキに近づいていった。
声が出そうになった。
あたしも慌ててあとを追う。距離は三メートル。
ふたりともまるで年よりなど目に入らない様子だ。
喜代治が声をかけた。
「アンタ、ヤグチ・マサルさんかい。その手はどうなさった?」
ヤグチ・マサルは「シルヴァークロス」のリストにのっていた名前だ。
ガキのうしろには、鉄が腰を落とし、足を広げ立っていた。
クレーンを支える台座のような安定感。
声をかけられたガキの目がキョロキョロ泳いだ。
あたしに気づいたようだ。
ヤグチは傷を隠すように右手を左手に重ねた。
そのときあたしにもはっきりとそれが見えた。
手の甲でゆるやかに優雅な曲線を描くブレスレットの十字。
つや消しの銀は鈍く光を弾き、黒い漆は日ざしを吸い込み底光していた。
「約束だ。手は出さんでくれ。」
喜代治は背中ごしにいった。
ガキも事態にようやく気付いたようだ。
腰をさげ戦闘態勢を取る。
ヤグチは右手で尻ポケットを探り、ジャラジャラと鍵がついたキーホルダーを出した。
鍵に混ざって小ぶりのスイスアーミーナイフが見えた。
栓抜きやドライバーやペンチなんかがついた多機能ナイフ。
震える手で小指ほどの長さの刃を開いた。
もうひとりのガキはあわてて後ろを振り向く。鉄は土俵入りする力士のように、狭い路地いっぱいに腕広げていた。
「なんなんだよ、このクソジジイ」
目のまえに浮浪者のような格好をした謎の年寄りがふたり。
わけがわからないのも無理はない。
ヤグチは泣きそうな声を漏らした。
喜代治はナイフを見ても、まったくひるまない。
長身の背筋を伸ばし、あいさつでもするようにまっすぐ歩いていく。
ヤグチの顔が恐怖にひきつった。
閉じたまぶたまで焼けたガングロの顔をくしゃくしゃにして、目を閉じ右手を喜代治の腹につきだした。
赤いハンドルの先で、銀のナイフがむき出しに光る。
「キヨジー、危ない!!」
あたしが駆け寄ろうとしたとき、目のまえでそれが起こった。
喜代治は腹につきこまれたガキの右手を両手でつまむように押え、左に身体を開くと軽々と反転した。
ガキはふわりと浮きあがり、きれいに宙に円を描く。
ヤグチは足先からアスファルトにたたきつけられた。