ー特別編ーWORLD・THE・LinkⅡ
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次の朝はうららかな春の日。
階段をおりると、うちの店先はきれいに掃き清められている。律儀ね。
ドアの足元に茶封筒がおいてあるのが目に入った。拾いあげ、中を確かめる。
俳句の添削にでも使うようなわしの一筆箋に、達者にくずした万年筆の字が散っていた。
『宗方六花殿 ひと足先に西巣鴨で張り込みを開始いたします。後刻、合流願います。K/T』
気が早いのか、朝が早くて退屈なのか、喜代治と鉄は午前六時から張り込みにでかけてるらしい。
犯行時間から考えて、まともな職についているとも思えない犯人を早朝から張る。
ご苦労な話ね。
若いやつならどう考えても、昼近くまでは寝てるだろう。長く寝られるだけのスタミナがあるからね。
あたしはいつも通り教会の掃除に行くことにした。
教会から戻り、さっさと店を開け終えたのが十一時半。
あたしは母さんにひとこと残して、西巣鴨に目指した。
途中でシャケ弁当と缶の緑茶を三人分買っても、余裕で正午前には到着する。
四丁目の商店街をゆっくりと歩いていくと、例の木造アパートに続く路地の角に喜代治がいた。どこから持ってきたのかしら、道端にパイプ椅子をおいて、ひなたぼっこでもするように堂々と座っている。
張り込み中というより、近所の店の隠居したジイサンみたい。
あたしはあいさつした。
「おはよう、調子はいかが?」
「若いやつはなまけもんでいかんな。まだ、それらしい男は誰も出てこん」
ちっともあせっていない調子で喜代治はいった。むしろ最初に会った時よりいきいきしているくらいね。シャケ弁とお茶を渡してあげる。
「すまんな、いくらだ?」
「いいわよ、そんなの」
喜代治は毅然という。
「いいや、だめだ。ただで仕事を頼んで、昼飯までおごられるわけにはいかん」
口がへの字に曲がった。しかたないわね。
「三百八十円。」
財布を取り出し、たくさんの十円玉と百円玉で払ってくれた。
喜代治にもらった小銭は体温で温かくなっている。
やっぱりお金って無理やりひったくるもんじゃないわよね。
路上の奥に座っている鉄にも昼食をもっていった。
鉄も喜代治と同じだった。
あのころの日本人には、理由もなく飲食をふるまわれてはいけないというしつけが行き届いていたのかしら。
それとも、あたしなんかと同じで他人に借りをつくりたがらない、貧乏人特有の潔癖性なのかしら。
それから二時間、あたしは近くの路上駐車場で、ふたりは路地の両端を固めて、張り込みが続いた。
午後二時すこしまえ、パイプ椅子に座る喜代治が右腕を高く伸ばした。合図だ。
あたしは、足早に喜代治のもとへ移動した。
一方通行の路地に目をやる。
階段をおりると、うちの店先はきれいに掃き清められている。律儀ね。
ドアの足元に茶封筒がおいてあるのが目に入った。拾いあげ、中を確かめる。
俳句の添削にでも使うようなわしの一筆箋に、達者にくずした万年筆の字が散っていた。
『宗方六花殿 ひと足先に西巣鴨で張り込みを開始いたします。後刻、合流願います。K/T』
気が早いのか、朝が早くて退屈なのか、喜代治と鉄は午前六時から張り込みにでかけてるらしい。
犯行時間から考えて、まともな職についているとも思えない犯人を早朝から張る。
ご苦労な話ね。
若いやつならどう考えても、昼近くまでは寝てるだろう。長く寝られるだけのスタミナがあるからね。
あたしはいつも通り教会の掃除に行くことにした。
教会から戻り、さっさと店を開け終えたのが十一時半。
あたしは母さんにひとこと残して、西巣鴨に目指した。
途中でシャケ弁当と缶の緑茶を三人分買っても、余裕で正午前には到着する。
四丁目の商店街をゆっくりと歩いていくと、例の木造アパートに続く路地の角に喜代治がいた。どこから持ってきたのかしら、道端にパイプ椅子をおいて、ひなたぼっこでもするように堂々と座っている。
張り込み中というより、近所の店の隠居したジイサンみたい。
あたしはあいさつした。
「おはよう、調子はいかが?」
「若いやつはなまけもんでいかんな。まだ、それらしい男は誰も出てこん」
ちっともあせっていない調子で喜代治はいった。むしろ最初に会った時よりいきいきしているくらいね。シャケ弁とお茶を渡してあげる。
「すまんな、いくらだ?」
「いいわよ、そんなの」
喜代治は毅然という。
「いいや、だめだ。ただで仕事を頼んで、昼飯までおごられるわけにはいかん」
口がへの字に曲がった。しかたないわね。
「三百八十円。」
財布を取り出し、たくさんの十円玉と百円玉で払ってくれた。
喜代治にもらった小銭は体温で温かくなっている。
やっぱりお金って無理やりひったくるもんじゃないわよね。
路上の奥に座っている鉄にも昼食をもっていった。
鉄も喜代治と同じだった。
あのころの日本人には、理由もなく飲食をふるまわれてはいけないというしつけが行き届いていたのかしら。
それとも、あたしなんかと同じで他人に借りをつくりたがらない、貧乏人特有の潔癖性なのかしら。
それから二時間、あたしは近くの路上駐車場で、ふたりは路地の両端を固めて、張り込みが続いた。
午後二時すこしまえ、パイプ椅子に座る喜代治が右腕を高く伸ばした。合図だ。
あたしは、足早に喜代治のもとへ移動した。
一方通行の路地に目をやる。