ー特別編ーWORLD・THE・LinkⅡ
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「ええ、何人かに絞りこんであるわ。まだ確定という訳じゃないけど……」
それからあたしは手短に「シルヴァークロス」の腕輪の話をした。
犯人がしていたものに間違いないこと。
馬鹿みたいに高価で、買った客は限られていること。
豊島区東部の四人の住所を確認したこと。
電話の向こうでは、佐伯が息をつめて耳を立てているのが分かった。
やつは真剣な声で言う。
『お前、警察官になれ。きっと向いてるぞ。』
「それより、どうせ南大塚にいるんでしょ。今度の事件で何か新しいこと、わかってないの。そっちの情報も教えてくれるんでしょ。」
今度は佐伯が腹をくくる番だった。
ひと声うなると、やつは諦めたようにいう。
『しかたないな。そのかわり、あとで話は聞かせろよ。』
「わかってるわ。」
『被害者は二十八歳の主婦。今回は現金の被害は無し。気の強い奥さんだったらしいな。ショルダーバックのストラップをつかんだ犯人の手をかなり強く引っ掻いたらしい。爪のあいだに男の生皮が残っていた。目撃者の話ではヘルメットの後部から、銀色の長髪がのぞいていたそうだ。』
「ということは、犯人の髪型に変化はなく、どちらかの手に傷が残ってるのね。」
『ああ、そうだ』
それにたぶん手もちの金もわずかになっているはずね。
近いうちに奴らはまた動きだすだろう。佐伯はいった。
『こっちでも、その腕輪の話を確認しておく。だがな……』
驚いたことに、やつは一転して優しげな声を出した。
『……リッカ、あまりむちゃはするなよ。いくらでかくてもお前は女の子なんだからな』
「わかってる。そっちこそ、あんまりストレスためると、頭の方が薄くなっちゃうよ」
面白くもない冗談を鼻で笑って、あたしたちは通話を切った。
日本の警察官は二十二万と少々。
まあ、なかには話せるやつもいるのよね。
その日は大きなニュースがないらしく、ひったくり事件が夜のテレビニュースの最初に流れた。
豊島区発の全国トップニュース。
今回の被害者が妊娠八カ月だったことも、ニュースバリューを高めているようだった。
あたしは果物屋で店番をしながら、画面を見つめていた。女性アナウンサーはカメラに目をすえたまま、冷静な声で読み上げる。
『主婦は事件のショックで切迫早産を起こしましたが、すぐに病院に運ばれ、母子とも生命に別条がないことが確認されています。警察は現場周辺の聞き込み調査に全力をあげ、逃走した犯人の行方を追跡中です。』
とりあえず赤ん坊と母親が助かったのはよかった。
犯人は今頃どんな気持ちでこのニュースをきいているのかしら。
小金のために赤ん坊を死なせなくてよかったと、胸をなでおろしているのか。
それとも、なんの関心もなく乱れるほどの心ももたないか。
たんたんと商売ものの果物を売りさばきながら、あたしが気になっていたのは、このニュースを聞いた喜代治と鉄の反応だった。
犯人を見つけることがあたしの仕事で、そのあとはあのふたりが自由にやるという。
あたしにはよくわからなかった。
七十すぎの年寄りがいう「自由」って、いったいどんなものなのかしら。
それからあたしは手短に「シルヴァークロス」の腕輪の話をした。
犯人がしていたものに間違いないこと。
馬鹿みたいに高価で、買った客は限られていること。
豊島区東部の四人の住所を確認したこと。
電話の向こうでは、佐伯が息をつめて耳を立てているのが分かった。
やつは真剣な声で言う。
『お前、警察官になれ。きっと向いてるぞ。』
「それより、どうせ南大塚にいるんでしょ。今度の事件で何か新しいこと、わかってないの。そっちの情報も教えてくれるんでしょ。」
今度は佐伯が腹をくくる番だった。
ひと声うなると、やつは諦めたようにいう。
『しかたないな。そのかわり、あとで話は聞かせろよ。』
「わかってるわ。」
『被害者は二十八歳の主婦。今回は現金の被害は無し。気の強い奥さんだったらしいな。ショルダーバックのストラップをつかんだ犯人の手をかなり強く引っ掻いたらしい。爪のあいだに男の生皮が残っていた。目撃者の話ではヘルメットの後部から、銀色の長髪がのぞいていたそうだ。』
「ということは、犯人の髪型に変化はなく、どちらかの手に傷が残ってるのね。」
『ああ、そうだ』
それにたぶん手もちの金もわずかになっているはずね。
近いうちに奴らはまた動きだすだろう。佐伯はいった。
『こっちでも、その腕輪の話を確認しておく。だがな……』
驚いたことに、やつは一転して優しげな声を出した。
『……リッカ、あまりむちゃはするなよ。いくらでかくてもお前は女の子なんだからな』
「わかってる。そっちこそ、あんまりストレスためると、頭の方が薄くなっちゃうよ」
面白くもない冗談を鼻で笑って、あたしたちは通話を切った。
日本の警察官は二十二万と少々。
まあ、なかには話せるやつもいるのよね。
その日は大きなニュースがないらしく、ひったくり事件が夜のテレビニュースの最初に流れた。
豊島区発の全国トップニュース。
今回の被害者が妊娠八カ月だったことも、ニュースバリューを高めているようだった。
あたしは果物屋で店番をしながら、画面を見つめていた。女性アナウンサーはカメラに目をすえたまま、冷静な声で読み上げる。
『主婦は事件のショックで切迫早産を起こしましたが、すぐに病院に運ばれ、母子とも生命に別条がないことが確認されています。警察は現場周辺の聞き込み調査に全力をあげ、逃走した犯人の行方を追跡中です。』
とりあえず赤ん坊と母親が助かったのはよかった。
犯人は今頃どんな気持ちでこのニュースをきいているのかしら。
小金のために赤ん坊を死なせなくてよかったと、胸をなでおろしているのか。
それとも、なんの関心もなく乱れるほどの心ももたないか。
たんたんと商売ものの果物を売りさばきながら、あたしが気になっていたのは、このニュースを聞いた喜代治と鉄の反応だった。
犯人を見つけることがあたしの仕事で、そのあとはあのふたりが自由にやるという。
あたしにはよくわからなかった。
七十すぎの年寄りがいう「自由」って、いったいどんなものなのかしら。