ー特別編ーWORLD・THE・LinkⅡ
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電信柱の住所に目を凝らしていた喜代治がいう。
「四丁目二十番。このあたりのようじゃな」
リストの最後の住所を探した。
細やかな一方通行を歩いて行くと、木造アパートの引き戸の玄関が生け垣のあいだに口を開けていた。
壁はひび割れたモルタル塗り。
上がり口は雑然と腐ったスニーカーが脱ぎ捨ててある。
玄関の横手で薄暗い階段が二階に続く闇に消えていた。
外はまだ明るいのに、点灯したままの裸電球がかえってさびしげな雰囲気だった。
黒ずんだ表札には、第二高松荘の名。
どうやらここが探していた場所みたい。
「犯人はここに住んでおる。間違いなかろう」
自信を持って喜代治は断定する。
貧乏人は貧乏人を容赦しないということかしら。
「明日からここを張り込んでみよう」
収入差別かもしれないけど、あたしもその意見に賛成だった。
「さあ、今日はこのくらいで帰ろうよ」
風が吹けば倒れそうな木造二階建てを、目を光らせ見つめるふたりにあたしはいった。
老人ホームの夕食は早い。
そろそろ喜代治と鉄を「茅の里」へ送り届ける時間だった。
北池袋でふたり組と別れて、うちの店に帰りつくころ携帯が鳴った。
壁をまえに電話に出た。
「はい、もしもし?」
『リッカか?』
「ああ、なんだ。」
めずらしい。タカシからだった。
『お前の獲物が、また現れた。』
あたしは壁を叩いた。
『ほんの三十分前だ。場所は南大塚。大塚駅から春日通り沿いにのびる商店街の路地裏だそうだ。』
さすが地元。S・ウルフは情報が早い。
「被害者は?」
『二十代後半の女だそうだ。ついてないな』
めずらしくタカシのクールな声が湿っていた。
「どうして」
『女は妊娠中だった。つき倒されたショックで、腹の中のどこかが破れたらしい。すでに病院に運ばれているそうだ。』
「くそっ!」
三十分まえなら、ちょうどあたしたちが西巣鴨のアパート近辺をうろついていたころだ。
ひと足違いだったのか。
お礼をいって電話を切った。
殴った壁を背にしてもたれて携帯の番号を押した。
一瞬の空白に続いて、気味悪いほどリアルに街のざわめきが電話から流れ出した。
すぐに言葉が背景から立ち上がってくる。
『もしもし……』
池袋署・佐伯のチャラっぽい声。心なしか緊張しているみたいだった。
「あたし、リッカ」
舌打ちしてから、佐伯が言った。
『なんだこのいそがしいときに』
「ひったくりが現れたと聞いたの。どんな状態なのか、教えてくれない?」
『また、ガキのネットワークか。お前ら新聞やテレビより早いな。どうせまた警官と泥棒ごっこでもやってんだろう。そっちは、ホシは絞れてんのか?』
情報をもらうには、情報と取り替えるしかない。
佐伯なら少々流してあげてもいいわね。
あたしは腹をくくった。
「四丁目二十番。このあたりのようじゃな」
リストの最後の住所を探した。
細やかな一方通行を歩いて行くと、木造アパートの引き戸の玄関が生け垣のあいだに口を開けていた。
壁はひび割れたモルタル塗り。
上がり口は雑然と腐ったスニーカーが脱ぎ捨ててある。
玄関の横手で薄暗い階段が二階に続く闇に消えていた。
外はまだ明るいのに、点灯したままの裸電球がかえってさびしげな雰囲気だった。
黒ずんだ表札には、第二高松荘の名。
どうやらここが探していた場所みたい。
「犯人はここに住んでおる。間違いなかろう」
自信を持って喜代治は断定する。
貧乏人は貧乏人を容赦しないということかしら。
「明日からここを張り込んでみよう」
収入差別かもしれないけど、あたしもその意見に賛成だった。
「さあ、今日はこのくらいで帰ろうよ」
風が吹けば倒れそうな木造二階建てを、目を光らせ見つめるふたりにあたしはいった。
老人ホームの夕食は早い。
そろそろ喜代治と鉄を「茅の里」へ送り届ける時間だった。
北池袋でふたり組と別れて、うちの店に帰りつくころ携帯が鳴った。
壁をまえに電話に出た。
「はい、もしもし?」
『リッカか?』
「ああ、なんだ。」
めずらしい。タカシからだった。
『お前の獲物が、また現れた。』
あたしは壁を叩いた。
『ほんの三十分前だ。場所は南大塚。大塚駅から春日通り沿いにのびる商店街の路地裏だそうだ。』
さすが地元。S・ウルフは情報が早い。
「被害者は?」
『二十代後半の女だそうだ。ついてないな』
めずらしくタカシのクールな声が湿っていた。
「どうして」
『女は妊娠中だった。つき倒されたショックで、腹の中のどこかが破れたらしい。すでに病院に運ばれているそうだ。』
「くそっ!」
三十分まえなら、ちょうどあたしたちが西巣鴨のアパート近辺をうろついていたころだ。
ひと足違いだったのか。
お礼をいって電話を切った。
殴った壁を背にしてもたれて携帯の番号を押した。
一瞬の空白に続いて、気味悪いほどリアルに街のざわめきが電話から流れ出した。
すぐに言葉が背景から立ち上がってくる。
『もしもし……』
池袋署・佐伯のチャラっぽい声。心なしか緊張しているみたいだった。
「あたし、リッカ」
舌打ちしてから、佐伯が言った。
『なんだこのいそがしいときに』
「ひったくりが現れたと聞いたの。どんな状態なのか、教えてくれない?」
『また、ガキのネットワークか。お前ら新聞やテレビより早いな。どうせまた警官と泥棒ごっこでもやってんだろう。そっちは、ホシは絞れてんのか?』
情報をもらうには、情報と取り替えるしかない。
佐伯なら少々流してあげてもいいわね。
あたしは腹をくくった。