ー特別編ーWORLD・THE・LinkⅡ
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「そう、あたしの知り合い。ああ見えても年寄りだから小金をもってる。あのブレスレットを買おうか考えてるんじゃないかな。」
ますますおかしな顔をするひげ面に、声をひそめていった。
「それから、ここだけの話、あのふたりはゲイでできてるの。とくにあのがに股のほうがひどい焼きもちやきだから、背の高いほうと話すときは注意した方がいいよ。」
喜代治が顔をあげて、ひげ面に声をかけた。
「すまんが、この腕輪を見せてくれんか」
ふたり組のところにむかう革パンの腰がすこし引けているのがわかったのは、きっとあたしだけだろう。
西口公園の円形広場に戻り、封筒を開いた。
喜代治と鉄はあたしの横に座り、手元を覗き込んでくる。
封筒の中身はA4のプリントアウトが四枚。
一枚に三十人分、あのブレスレットを買った客の名が、住所と電話番号といっしょに並んでいた。
去年から今年の春にかけて、東京都内だけで百本以上もあんな高価な腕輪が売れているのだ。
この不景気にちょっと考えられない話。
低所得者のひがみかしら。
あたしは黄色いラインマーカーで、豊島区在住の名前だけチェックしていった。百十二人中九人。
さらにそのなかから、埼京線の東側だけを選んでいく。残りは四人。
「だいぶ網がしぼれてきたようじゃの」
喜代治の声がめずらしく興奮しているようだった。
鉄が胸をたたいていった。
「よっしゃ、一発かましにいくか」
あたしはいった。
「今日中にこの四件の下見だけでもすませておこう」
喜代治と鉄もうなずいた。あたしたちはベンチから立ち上がり、西口公園を離れた。
春は池袋のビル風さえやわらかね。
Tシャツのなかを抜ける風が、ここちよく身体を冷ましてくれる。
ようやく犯人の尻尾をつかんだよろこびであたしはハイになっていた。
だけど、それは一日だけ遅すぎたのだ。
「シルヴァークロス」の腕輪を購入した四人の住所は、高田、雑司が谷、東池袋、西巣鴨の四地区。
最初の高田三丁目にむかった。
明治通りを歩いてると、喜代治がいった。
「のう、リッカ、これで引ったくりが見つかったら、そこでアンタの仕事は終わりでいいかな。」
「どういうこと?」
「引ったくりの犯人の扱いは、わしらにまかせて手は出さんということじゃ。」
あたしのとなりで鉄もうなずいている。
「まさか、ぶっ殺そうなんて思っちゃいないわよね」
喜代治は鼻でわらった。
「そんなことは考えておらん。だが、相手の動きによるな」
こんな年寄りふたりで大丈夫なのかしら。
あたしはちょっと不安になったけど、とりあえず返事をしておいた。
「わかった。あんたたちふたりで、自由にやってちょうだい」
鉄があたしの肩をげんこつで殴った。けっこう痛い…。
「心配せんでいい。わしらの経験を信じとけ。だてに三桁の女を泣かしとりゃせんぞ」
だから心配なんだよエロジジイといおうとして、チラリと横を見ると鉄の目はいつになく真剣だった。
ますます不安になったけど、あたしは口を閉じていた。
ますますおかしな顔をするひげ面に、声をひそめていった。
「それから、ここだけの話、あのふたりはゲイでできてるの。とくにあのがに股のほうがひどい焼きもちやきだから、背の高いほうと話すときは注意した方がいいよ。」
喜代治が顔をあげて、ひげ面に声をかけた。
「すまんが、この腕輪を見せてくれんか」
ふたり組のところにむかう革パンの腰がすこし引けているのがわかったのは、きっとあたしだけだろう。
西口公園の円形広場に戻り、封筒を開いた。
喜代治と鉄はあたしの横に座り、手元を覗き込んでくる。
封筒の中身はA4のプリントアウトが四枚。
一枚に三十人分、あのブレスレットを買った客の名が、住所と電話番号といっしょに並んでいた。
去年から今年の春にかけて、東京都内だけで百本以上もあんな高価な腕輪が売れているのだ。
この不景気にちょっと考えられない話。
低所得者のひがみかしら。
あたしは黄色いラインマーカーで、豊島区在住の名前だけチェックしていった。百十二人中九人。
さらにそのなかから、埼京線の東側だけを選んでいく。残りは四人。
「だいぶ網がしぼれてきたようじゃの」
喜代治の声がめずらしく興奮しているようだった。
鉄が胸をたたいていった。
「よっしゃ、一発かましにいくか」
あたしはいった。
「今日中にこの四件の下見だけでもすませておこう」
喜代治と鉄もうなずいた。あたしたちはベンチから立ち上がり、西口公園を離れた。
春は池袋のビル風さえやわらかね。
Tシャツのなかを抜ける風が、ここちよく身体を冷ましてくれる。
ようやく犯人の尻尾をつかんだよろこびであたしはハイになっていた。
だけど、それは一日だけ遅すぎたのだ。
「シルヴァークロス」の腕輪を購入した四人の住所は、高田、雑司が谷、東池袋、西巣鴨の四地区。
最初の高田三丁目にむかった。
明治通りを歩いてると、喜代治がいった。
「のう、リッカ、これで引ったくりが見つかったら、そこでアンタの仕事は終わりでいいかな。」
「どういうこと?」
「引ったくりの犯人の扱いは、わしらにまかせて手は出さんということじゃ。」
あたしのとなりで鉄もうなずいている。
「まさか、ぶっ殺そうなんて思っちゃいないわよね」
喜代治は鼻でわらった。
「そんなことは考えておらん。だが、相手の動きによるな」
こんな年寄りふたりで大丈夫なのかしら。
あたしはちょっと不安になったけど、とりあえず返事をしておいた。
「わかった。あんたたちふたりで、自由にやってちょうだい」
鉄があたしの肩をげんこつで殴った。けっこう痛い…。
「心配せんでいい。わしらの経験を信じとけ。だてに三桁の女を泣かしとりゃせんぞ」
だから心配なんだよエロジジイといおうとして、チラリと横を見ると鉄の目はいつになく真剣だった。
ますます不安になったけど、あたしは口を閉じていた。