ー特別編ーWORLD・THE・LinkⅡ
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「こいつを見ろよ。おれはこの五年間、毎日このパンツをはいている。丈夫で機能的で温かく、ハーレーでこけても肌を保護してくれる。イギリス産の最高級の牛革で、ドイツやイタリアでは同じ革を使ったソファを一脚二百万で売っている。それが、一本二十万なら、賢い買い物だろう?」
かけ値なしの一生ものか。
たしかに一理あるかもしれない。
ユニクロのジーンズの事は黙っていた方が良さそうね。
長谷部三佐男は背もたれに寄りかかり、丸天井を見上げた。その格好だとソバージュの頭から、銀の十字架が生え出しているように見える。
「しかし、おれのブレスをしたやつが、ばあさんたちを襲ってまわっているのも気に入らんな……」
しばらく間があいた。
あたしは長谷部三佐男の気が変わらないように、ソファで身動きをせず凍りついていた。
「いいだろう。うちの店のデータをみせてやろう。」
「POSシステムのデータ?」
長谷部三佐男はにやりと笑った。
「それもあるが、もっと簡単なやつだ。うちの店で買い物した客の九割以上は『シルヴァークロス』の会員カードに入ってる。次の回から、全商品テン・パーセントオフになるからな」
「ありがと。助かるよ。」
「ただし客に気づかれないように慎重にやると約束してくれ。」
うなずいた。
長谷部三佐男の笑いが大きくなる。
「それから、ふたりにも仕事をしてもらいたい。うちで今、秋冬カタログの制作をすすめているんだが、そこに文章を書けよ。それとガキのギャングの王様に『シルヴァークロス』を教えろ。両方とも商品を褒めたりする必要なんてない。感じたままに伝えて、書いてみろ。いいな。」
宿題が増えた。
街でネタを集めるより、あたしにはタカシに何かを伝える方が何倍もきつい。
だけど、やるしかないわね。
長谷部三佐男の好意にただ乗りするよりは、気分がいいしね。
あたしたちは手はずを決め、最後のおまけに森下はコラムのために十五分ほど雑談した。
中にいたのは正味三十分ぐらいかしら。
あたしが階段を下りていくと、喜代治と鉄は駐車場のシャッターのしたで雨を避けてたっていた。
「戦果はどうじゃった」
喜代治にこたえた。
「悪くない。まち子さんの証言がようやく生きてきそうよ。」
「そうか」
やせた老人はそういって、雨に目をやった。
鉄がいう。
「おぬしもまち子さんのようにいい女にならないかんぞ」
「あら、あたしはあたしで結構いい女なのよ。」
鉄は自信満々に作業ズボンの前をつかんだ。
「なんなら勝負するか?」
喜代治は傘をさすと、目白駅にむかって歩き出した。あたしもひさしの外に出る。ほほに当たる雨が柔らかだった。
鉄を無視して無人の高級住宅街を歩きながら、別なことを考えていた。
かけ値なしの一生ものか。
たしかに一理あるかもしれない。
ユニクロのジーンズの事は黙っていた方が良さそうね。
長谷部三佐男は背もたれに寄りかかり、丸天井を見上げた。その格好だとソバージュの頭から、銀の十字架が生え出しているように見える。
「しかし、おれのブレスをしたやつが、ばあさんたちを襲ってまわっているのも気に入らんな……」
しばらく間があいた。
あたしは長谷部三佐男の気が変わらないように、ソファで身動きをせず凍りついていた。
「いいだろう。うちの店のデータをみせてやろう。」
「POSシステムのデータ?」
長谷部三佐男はにやりと笑った。
「それもあるが、もっと簡単なやつだ。うちの店で買い物した客の九割以上は『シルヴァークロス』の会員カードに入ってる。次の回から、全商品テン・パーセントオフになるからな」
「ありがと。助かるよ。」
「ただし客に気づかれないように慎重にやると約束してくれ。」
うなずいた。
長谷部三佐男の笑いが大きくなる。
「それから、ふたりにも仕事をしてもらいたい。うちで今、秋冬カタログの制作をすすめているんだが、そこに文章を書けよ。それとガキのギャングの王様に『シルヴァークロス』を教えろ。両方とも商品を褒めたりする必要なんてない。感じたままに伝えて、書いてみろ。いいな。」
宿題が増えた。
街でネタを集めるより、あたしにはタカシに何かを伝える方が何倍もきつい。
だけど、やるしかないわね。
長谷部三佐男の好意にただ乗りするよりは、気分がいいしね。
あたしたちは手はずを決め、最後のおまけに森下はコラムのために十五分ほど雑談した。
中にいたのは正味三十分ぐらいかしら。
あたしが階段を下りていくと、喜代治と鉄は駐車場のシャッターのしたで雨を避けてたっていた。
「戦果はどうじゃった」
喜代治にこたえた。
「悪くない。まち子さんの証言がようやく生きてきそうよ。」
「そうか」
やせた老人はそういって、雨に目をやった。
鉄がいう。
「おぬしもまち子さんのようにいい女にならないかんぞ」
「あら、あたしはあたしで結構いい女なのよ。」
鉄は自信満々に作業ズボンの前をつかんだ。
「なんなら勝負するか?」
喜代治は傘をさすと、目白駅にむかって歩き出した。あたしもひさしの外に出る。ほほに当たる雨が柔らかだった。
鉄を無視して無人の高級住宅街を歩きながら、別なことを考えていた。