ー特別編ーWORLD・THE・LinkⅡ
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アポの日はあいにく朝から雨だった。
激しくも強くもないけど一定のペースで降り続け、肺の中まで湿らせそうな春の雨。
あたしが長谷部三佐男にあいにいくといったら、喜代治と鉄もいっしょにいくといって聞かなかった。
同行を許されているのはあたしだけで、カメラマンさえだめなのだといってもまるで無駄。
しかたなく四人で目白のお屋敷町を歩いた。
車道の両側に広い歩道があり、ガードレールの代わりに角を落とした金属の柱がならび、そのあいだを同じブロンズ色の鎖がゆるやかに結んでいる。
出会う犬もアフガンハウンドやジャイアントプードルみたいな純血種の猟犬ばかり。
同じ豊島区でも池袋とここじゃ天と地の差がある。
喜代治と鉄はどこかのゴミ箱から拾ってきたような汚れて半透明になったビニール傘をさして、森下とあたしのあとをついてくる。
貧乏臭い格好だけど、それでも背筋だけはすっきりと伸びていた。
あたし達は、都市銀行の社員寮なんかが緑のなかに見え隠れする通りを歩いていった。
長谷部三佐男のスタジオは、目白庭園の裏側に見つかった。
一階は半地下の駐車場になっていて、古いムスタングやハーレー・ダビッドソンがずらりと向きをそろえてならんでいる。
脇には素焼きのタイルをはめこんだ階段がうえに延びていた。
赤い屋根と白い漆喰壁のリゾートホテルのような建物は、サンタフェスタイルとでもいうのかしら。
あたしは喜代治と鉄にいった。
「悪いけど、ここで待っていてもらえるかな。時間はかからないと思うし。」
喜代治はスタジオを見上げ、冷ややかな調子でいう。
「よくわからんが、デザイナーというのはもうかる仕事のようだの」
鉄がつけ加えた。
「まったくだ。これほどかせぐんじゃ、なにか悪いことをしとるに違いない。」
そうかもしれない。
ボールペン一本七万円というのは、デザインの名を借りた霊感商法みたいなものかも。
だけど、世の中のブランドはみんなそうした錯覚を商売にしてる。
プラダのナイロン袋が十万円なんて、ホントにアホくさいよね。
階段を登りきると、広い板張りのバルコニーだった。
玄関の代わりに一枚が横二メートルもある特注サイズのサッシが四枚ならび、分厚いガラスの向こうには打ち合わせ用のテーブルやドラフィティングデスクがおいてある。
例の黒い革パンの男たちが四人、静かに働いていた。
あたしがガラスをノックすると、そのうちのひとりがサッシを引いてくれる。
「なんの用?」
迷いこんできたファンにでも見えたのかしら。
ぶっきら棒に革パンがいった。
「「ストビー」の取材で、長谷部さんと約束しているんですが」
「どうぞ」
革パンに案内され、どんどん事務所の奥に入っていった。
何度目かの角を曲がると男は立ち止り、明るい白木の扉をノックした。
「三佐男さん、約束の記者が来ました。」
革パンはあたしたちに振りかえると、ドアの奥へあごをしゃくった。
フレンドリーなのか、荒っぽいのか、よくわからない仕草。
「記者じゃない。コラムニストだ。入ってくれ。」
部屋のなかの声に導かれ、あたしたちは敷居をまたいだ。
激しくも強くもないけど一定のペースで降り続け、肺の中まで湿らせそうな春の雨。
あたしが長谷部三佐男にあいにいくといったら、喜代治と鉄もいっしょにいくといって聞かなかった。
同行を許されているのはあたしだけで、カメラマンさえだめなのだといってもまるで無駄。
しかたなく四人で目白のお屋敷町を歩いた。
車道の両側に広い歩道があり、ガードレールの代わりに角を落とした金属の柱がならび、そのあいだを同じブロンズ色の鎖がゆるやかに結んでいる。
出会う犬もアフガンハウンドやジャイアントプードルみたいな純血種の猟犬ばかり。
同じ豊島区でも池袋とここじゃ天と地の差がある。
喜代治と鉄はどこかのゴミ箱から拾ってきたような汚れて半透明になったビニール傘をさして、森下とあたしのあとをついてくる。
貧乏臭い格好だけど、それでも背筋だけはすっきりと伸びていた。
あたし達は、都市銀行の社員寮なんかが緑のなかに見え隠れする通りを歩いていった。
長谷部三佐男のスタジオは、目白庭園の裏側に見つかった。
一階は半地下の駐車場になっていて、古いムスタングやハーレー・ダビッドソンがずらりと向きをそろえてならんでいる。
脇には素焼きのタイルをはめこんだ階段がうえに延びていた。
赤い屋根と白い漆喰壁のリゾートホテルのような建物は、サンタフェスタイルとでもいうのかしら。
あたしは喜代治と鉄にいった。
「悪いけど、ここで待っていてもらえるかな。時間はかからないと思うし。」
喜代治はスタジオを見上げ、冷ややかな調子でいう。
「よくわからんが、デザイナーというのはもうかる仕事のようだの」
鉄がつけ加えた。
「まったくだ。これほどかせぐんじゃ、なにか悪いことをしとるに違いない。」
そうかもしれない。
ボールペン一本七万円というのは、デザインの名を借りた霊感商法みたいなものかも。
だけど、世の中のブランドはみんなそうした錯覚を商売にしてる。
プラダのナイロン袋が十万円なんて、ホントにアホくさいよね。
階段を登りきると、広い板張りのバルコニーだった。
玄関の代わりに一枚が横二メートルもある特注サイズのサッシが四枚ならび、分厚いガラスの向こうには打ち合わせ用のテーブルやドラフィティングデスクがおいてある。
例の黒い革パンの男たちが四人、静かに働いていた。
あたしがガラスをノックすると、そのうちのひとりがサッシを引いてくれる。
「なんの用?」
迷いこんできたファンにでも見えたのかしら。
ぶっきら棒に革パンがいった。
「「ストビー」の取材で、長谷部さんと約束しているんですが」
「どうぞ」
革パンに案内され、どんどん事務所の奥に入っていった。
何度目かの角を曲がると男は立ち止り、明るい白木の扉をノックした。
「三佐男さん、約束の記者が来ました。」
革パンはあたしたちに振りかえると、ドアの奥へあごをしゃくった。
フレンドリーなのか、荒っぽいのか、よくわからない仕草。
「記者じゃない。コラムニストだ。入ってくれ。」
部屋のなかの声に導かれ、あたしたちは敷居をまたいだ。