ー特別編ーWORLD・THE・LinkⅡ
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あたしは形だけでもボールペンでメモを取りながら聞いていた。
「その後、警察からは何か連絡は入りましたか。」
福田まち子は熱心にあたしの手元を見つめていた。
色を抜いているのかしら、プラチナブロンドのように白く長い髪を軽く押さえていった。
「被害届を出した時に話を聞かれたくらいで、一度も連絡はありません。放りっぱなしね。こんなおばあちゃんでなくて、もっと大切な事件で忙しいのでしょう。思い出したことがあるんですけれど」
「へぇ、なんですか」
あまり気乗りしない調子で答えた。
「そのボールペンと同じよ。私に見えたのは犯人の左手だったけれど、手首にブレスレットが巻いてあったの。銀色のブレスレットは、それと同じ形の十字架をたくさんつなげた作りだった」
三人の視線があたしの右手に集中した。
そのペンは悠君から貰った物だった。
正しくいえば、ストリートファッション誌のコラムを書いている森下(下の名前はわすれた)が忘年会のビンゴゲームで当てた賞品を悠君に何かのお礼としてあげて、その内の一本をあたしにプレゼントしてくれたのだ。
純銀の固まりから削りだした軸はどっしりと重く、キャップの頭には縦と横の棒の長さがいっしょで、中央が黒い漆で丸く盛り上がった銀色の十字架がついている。
「シルヴァークロス」という新ブランドのマークなのだそうだ。
あたしはただのボールペンだと思ってたけど、本郷さんから値段を聞いてびっくりしたのを覚えている。
一本七万円!
文章がうまくなる魔法がかかっているわけでもないのに、たかがボールペン一本にそんな金を払う。
まともな神経じゃないわ。
その話をするあいだ、三人は黙ってあたしの右手を見ていた。
鉄が手を伸ばし、あたしの手からペンを取った。
はじめて望遠鏡を見る類人猿のように、銀のペンを目の高さにあげて、上からしたから確かめている。
「こんなものがソープ三回分もするんか。わけのわからん世の中じゃのう。」
老人ホームからの帰り道、あたしはぶらぶらと東上線の線路沿いを歩くことにした。
池袋駅までは一キロ半。
春の湿った空気にふくらんだ夕日が、電線が切り取る狭い空に沈もうとしていた。
ポケットから携帯をだして、小鳥遊悠の番号を押した。
『なんの用事だ?』
予想はしていたけど、人の話を先まわりされた。
「どうして、みんな用があるってわかるの? 」
悠くんは愉快そうに笑った。
『タカシが話してたんだよ。リッカが妙なことに首突っ込んでるってな。』
こうやってあたしの預かり知らないところで噂は広まっていくようだった。
有名人はこれだからつらいわ。
「その後、警察からは何か連絡は入りましたか。」
福田まち子は熱心にあたしの手元を見つめていた。
色を抜いているのかしら、プラチナブロンドのように白く長い髪を軽く押さえていった。
「被害届を出した時に話を聞かれたくらいで、一度も連絡はありません。放りっぱなしね。こんなおばあちゃんでなくて、もっと大切な事件で忙しいのでしょう。思い出したことがあるんですけれど」
「へぇ、なんですか」
あまり気乗りしない調子で答えた。
「そのボールペンと同じよ。私に見えたのは犯人の左手だったけれど、手首にブレスレットが巻いてあったの。銀色のブレスレットは、それと同じ形の十字架をたくさんつなげた作りだった」
三人の視線があたしの右手に集中した。
そのペンは悠君から貰った物だった。
正しくいえば、ストリートファッション誌のコラムを書いている森下(下の名前はわすれた)が忘年会のビンゴゲームで当てた賞品を悠君に何かのお礼としてあげて、その内の一本をあたしにプレゼントしてくれたのだ。
純銀の固まりから削りだした軸はどっしりと重く、キャップの頭には縦と横の棒の長さがいっしょで、中央が黒い漆で丸く盛り上がった銀色の十字架がついている。
「シルヴァークロス」という新ブランドのマークなのだそうだ。
あたしはただのボールペンだと思ってたけど、本郷さんから値段を聞いてびっくりしたのを覚えている。
一本七万円!
文章がうまくなる魔法がかかっているわけでもないのに、たかがボールペン一本にそんな金を払う。
まともな神経じゃないわ。
その話をするあいだ、三人は黙ってあたしの右手を見ていた。
鉄が手を伸ばし、あたしの手からペンを取った。
はじめて望遠鏡を見る類人猿のように、銀のペンを目の高さにあげて、上からしたから確かめている。
「こんなものがソープ三回分もするんか。わけのわからん世の中じゃのう。」
老人ホームからの帰り道、あたしはぶらぶらと東上線の線路沿いを歩くことにした。
池袋駅までは一キロ半。
春の湿った空気にふくらんだ夕日が、電線が切り取る狭い空に沈もうとしていた。
ポケットから携帯をだして、小鳥遊悠の番号を押した。
『なんの用事だ?』
予想はしていたけど、人の話を先まわりされた。
「どうして、みんな用があるってわかるの? 」
悠くんは愉快そうに笑った。
『タカシが話してたんだよ。リッカが妙なことに首突っ込んでるってな。』
こうやってあたしの預かり知らないところで噂は広まっていくようだった。
有名人はこれだからつらいわ。