ー特別編ーワルツ・フォー・ベビー
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翌日は一年最後の日だった。
さすがに今日は気持ち的にもな事もあり一日中部屋で過ごした。
トシの件でうごいたのはほんの少しだけ。
南条に電話してあのテラスで会うことにしたのだ。
そのすぐあとで晴美に電話して、アキヒロのおじいちゃんと会うことを告げ、心配しなくていいといった。
電話の向こうでは男の子がおおきな声で『きかんしゃトーマス』の歌をうたっていた。
晴美はいう。
『心配しないでいいってどういう意味』
俺は今回はめずらしく素直だった。
「全部おれのおせっかいだった。おれはあけてはいけない箱をあけちまった。だから、南条さんにはうまくつじつまをあわせて誤魔化しておく。これからもオヤジさんをアキヒロのいいおじいちゃんのままにしてやってくれ。」
晴美はしばらく黙っていた。トーマスは二番になった。
『ありがとう。未佐子さんにもそういっておく』
「それがいいな。真実なんてろくなもんじゃない。正月になったら、フルーツもって顔出すよ。」
ありがとねと晴美はいった。
おれは感謝されるようなことなどなにもしていない。気を取り直して買い物いくことにした。
真桜はあざだらけの顔でうろつくおれに嫌な顔をしたが、池袋の街に青タンだろうが赤タンだろうが気にする奴など一人もいない。
大晦日の夜、ガキつかを見ながら天ぷらそばを食った。
おれは小さな贅沢に唐津の名のある陶芸家のもののどんぶりを使った。
年が変わると同時におれはいった。
「あけましておめでとうございます」
改まってそういうと、和服に着替えたまおも腰を折り、同じようにていねいに返した。
これがうちの正月の迎えかただ。
俺が礼儀正しい青少年なのはちゃんとした理由がある。
元旦はどれもこれも似たようなお笑い番組を寝そべって眺め、俺とまおの共作おせち料理をつまんだ。
そのあいだずっと考えていたのは、どうやって南条のオヤジをごまかすかって話。
俺は嘘がうまいけれど、あとで笑えない嘘は好きじゃない。
だから、トシヒロについての嘘を考えるのはなんだか気が重かった。
ちょっとでてくるといって、家をでたのが夜十時十分まえ。
池袋西口駅まで車を使い、そこからは歩いた。芸術劇場までは五分でいける。
俺はロマンス通りにでていた軽トラックの花屋で、白いユリの花を買って約束の場所に向かった。
遠くからでもテラスはすぐにわかった。
最初にオヤジを見つけたときと同じように、ロウソクのやわらかな炎が揺れていたからだ。
正月の通行人は楽しそうに酔ってテラスの横を賑やかに過ぎていった。
俺はオヤジの花束のうえにユリをおいた。
ポケットからあの夜と同じ缶コーヒーをとりだす。
さすがに今日は気持ち的にもな事もあり一日中部屋で過ごした。
トシの件でうごいたのはほんの少しだけ。
南条に電話してあのテラスで会うことにしたのだ。
そのすぐあとで晴美に電話して、アキヒロのおじいちゃんと会うことを告げ、心配しなくていいといった。
電話の向こうでは男の子がおおきな声で『きかんしゃトーマス』の歌をうたっていた。
晴美はいう。
『心配しないでいいってどういう意味』
俺は今回はめずらしく素直だった。
「全部おれのおせっかいだった。おれはあけてはいけない箱をあけちまった。だから、南条さんにはうまくつじつまをあわせて誤魔化しておく。これからもオヤジさんをアキヒロのいいおじいちゃんのままにしてやってくれ。」
晴美はしばらく黙っていた。トーマスは二番になった。
『ありがとう。未佐子さんにもそういっておく』
「それがいいな。真実なんてろくなもんじゃない。正月になったら、フルーツもって顔出すよ。」
ありがとねと晴美はいった。
おれは感謝されるようなことなどなにもしていない。気を取り直して買い物いくことにした。
真桜はあざだらけの顔でうろつくおれに嫌な顔をしたが、池袋の街に青タンだろうが赤タンだろうが気にする奴など一人もいない。
大晦日の夜、ガキつかを見ながら天ぷらそばを食った。
おれは小さな贅沢に唐津の名のある陶芸家のもののどんぶりを使った。
年が変わると同時におれはいった。
「あけましておめでとうございます」
改まってそういうと、和服に着替えたまおも腰を折り、同じようにていねいに返した。
これがうちの正月の迎えかただ。
俺が礼儀正しい青少年なのはちゃんとした理由がある。
元旦はどれもこれも似たようなお笑い番組を寝そべって眺め、俺とまおの共作おせち料理をつまんだ。
そのあいだずっと考えていたのは、どうやって南条のオヤジをごまかすかって話。
俺は嘘がうまいけれど、あとで笑えない嘘は好きじゃない。
だから、トシヒロについての嘘を考えるのはなんだか気が重かった。
ちょっとでてくるといって、家をでたのが夜十時十分まえ。
池袋西口駅まで車を使い、そこからは歩いた。芸術劇場までは五分でいける。
俺はロマンス通りにでていた軽トラックの花屋で、白いユリの花を買って約束の場所に向かった。
遠くからでもテラスはすぐにわかった。
最初にオヤジを見つけたときと同じように、ロウソクのやわらかな炎が揺れていたからだ。
正月の通行人は楽しそうに酔ってテラスの横を賑やかに過ぎていった。
俺はオヤジの花束のうえにユリをおいた。
ポケットからあの夜と同じ缶コーヒーをとりだす。