ー特別編ーワルツ・フォー・ベビー
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タカシから電話があったのは翌日の夜だった。
一ダースのSウルフを投入して、OBにローラー作戦をかけたが、手応えはゼロ。
あのころ上野と構想があったなどということはなかったそうだ。
しかたなく俺は礼をいって夜の散歩にもどった。
リッカの店を通りすぎると、酔っ払いに温室もののメロンやサンランボを売り付けていた。
どれも形はいいが、味はどこかの研究所で精巧にほんものの味を再現したような感じ。
今はなんだってほんものより偽物のほうが高く売れる時代なのだ。
俺の書く反省文のようなものかもしれない。
だって時間も知性も、俺にはいつだって大幅に足りないのだ。
トシヒロの命日に俺は白い花束をもってテラスにいった。犯人につながる手がかりなどひとつもない。
到着したのはちょうど真夜中。
すでに七、八人が集まり、うつむいてぽつぽつと話をしていた。
手すりを越える高さまで重なったら花束のうえに、俺が白いカーネーションをおくとジャズタクシーのオヤジが手招きをして、隣をあけてくれた。
「悠さん、よくきてくれた」
また同じレターカーディガンだった。今どきこんなものどこで買うのだろうか。
俺はつらい話は最初にすませるほうだ。
「池袋のストリートギャングにも聞いてみたけど、やっぱり心当たりのあるやつはいなかった。役に立たなくてすまない」
オヤジはいいんだ、いいんだと小さくうなずいて、俺にガラスのコップをまわした。
底をもたないと火傷しそうに熱い焼酎のお湯割りだった。
あちこちで死んだトシヒロの話が続いている。
なんだか場違いなところにきてしまったようだが、俺は黙ってきいていた。
アメ横のトシといえば、ストリートギャングの走りだった当時、上野初のチーム「アポロ」を結成したので有名だという。
そういわれて気づいてみるとそこにいた男たちはみな深紅のアポロキャップを被っていた。
花の山のわきにはナンバー1と大きく刺繍されたキャップがおいてある。
俺は近くにいたアメ横のギャングにいった。
やつの首筋にはおおきな蜘蛛のタトゥーがはいっていて、片側の伸ばした四本の足が右の頬をつかんでいる。おっかない。
「チームは今でも活動しているのか」
やつはどこのガキだという目で俺を見てからいった。
「初代のトシさんから、今は三代目のリンタローさんにヘッドは変わってるけど、今じゃあ上野一のチームだ」
「そうなんだ」
「あんたは」
「俺はトシヒロさんのオヤジさんの知り合い。上野の人間じゃないんだ」
ストリートギャングは俺から目をそらせた。ぽつりという。
「どんなに肩で風きってギャングだなんていっても、死んじまったら人間ゼロだな。思いで以外はなにも残らない」
そのとき後ろの方で子供の声がした。ジージ、ジージ。
振り向くと甘えるように叫びながら、五歳くらいの着ぶくれした男の子が南条に飛び付いていくところだった。
一ダースのSウルフを投入して、OBにローラー作戦をかけたが、手応えはゼロ。
あのころ上野と構想があったなどということはなかったそうだ。
しかたなく俺は礼をいって夜の散歩にもどった。
リッカの店を通りすぎると、酔っ払いに温室もののメロンやサンランボを売り付けていた。
どれも形はいいが、味はどこかの研究所で精巧にほんものの味を再現したような感じ。
今はなんだってほんものより偽物のほうが高く売れる時代なのだ。
俺の書く反省文のようなものかもしれない。
だって時間も知性も、俺にはいつだって大幅に足りないのだ。
トシヒロの命日に俺は白い花束をもってテラスにいった。犯人につながる手がかりなどひとつもない。
到着したのはちょうど真夜中。
すでに七、八人が集まり、うつむいてぽつぽつと話をしていた。
手すりを越える高さまで重なったら花束のうえに、俺が白いカーネーションをおくとジャズタクシーのオヤジが手招きをして、隣をあけてくれた。
「悠さん、よくきてくれた」
また同じレターカーディガンだった。今どきこんなものどこで買うのだろうか。
俺はつらい話は最初にすませるほうだ。
「池袋のストリートギャングにも聞いてみたけど、やっぱり心当たりのあるやつはいなかった。役に立たなくてすまない」
オヤジはいいんだ、いいんだと小さくうなずいて、俺にガラスのコップをまわした。
底をもたないと火傷しそうに熱い焼酎のお湯割りだった。
あちこちで死んだトシヒロの話が続いている。
なんだか場違いなところにきてしまったようだが、俺は黙ってきいていた。
アメ横のトシといえば、ストリートギャングの走りだった当時、上野初のチーム「アポロ」を結成したので有名だという。
そういわれて気づいてみるとそこにいた男たちはみな深紅のアポロキャップを被っていた。
花の山のわきにはナンバー1と大きく刺繍されたキャップがおいてある。
俺は近くにいたアメ横のギャングにいった。
やつの首筋にはおおきな蜘蛛のタトゥーがはいっていて、片側の伸ばした四本の足が右の頬をつかんでいる。おっかない。
「チームは今でも活動しているのか」
やつはどこのガキだという目で俺を見てからいった。
「初代のトシさんから、今は三代目のリンタローさんにヘッドは変わってるけど、今じゃあ上野一のチームだ」
「そうなんだ」
「あんたは」
「俺はトシヒロさんのオヤジさんの知り合い。上野の人間じゃないんだ」
ストリートギャングは俺から目をそらせた。ぽつりという。
「どんなに肩で風きってギャングだなんていっても、死んじまったら人間ゼロだな。思いで以外はなにも残らない」
そのとき後ろの方で子供の声がした。ジージ、ジージ。
振り向くと甘えるように叫びながら、五歳くらいの着ぶくれした男の子が南条に飛び付いていくところだった。