ー特別編ーワルツ・フォー・ベビー
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次の日の夜から、散歩の途中であのテラスにいくのが俺の新しい習慣になった。
花束は日に日に増えていった。
アメ横のギャングというより、どこかのロックスターでも死んだようだ。
ときには何人かのガキが丸く円を描いて座り酒盛りをしていたりする。
そんなときは遠くから様子を眺めていた。
実際には今回のような件では、俺にできることなどほとんどないのだ。
できることは警察がすべてはやっている。
せいぜい池袋の現キング・虎狗琥崇に電話でもいれて話を聞くくらい。
それで空振りなら、西口街道の鈴猫の花屋で白いカーネーションでも買って、供えてやればそれで終わりになるはずだった。
俺は夜の散歩の途中でタカシの番号を押した。
最近はとりつぎとも仲がいいので、つまらない冗談を飛ばしたりする。
『はい、こちら、キング』
カタシに負けず冷たい女の声が返ってきた。
頬にホシガタのタトゥーをいれたヒロミって炎銃の部隊員の女だ。
とんでもないあばずれだと予想していたのが、実物はクラス委員の役を振られるアイドルのような正統派美人だ。
もっとも着ているのは米軍放出品のカーキの軍服なのだが。
「クリスマスの予定が詰まってなかったら、テラスで俺とキャンドルの灯を見て夜をすごさないか」
ヒロミは途中から聞いていないようだった。
すぐにタカシと替わる。
『悠、おまえ、俺とキャンドル見てどうするんだ』
まったくジョークを理解していない声だった。
あわてて俺はいった。
「芸術劇場裏のテラスを知ってるか」
『ああ』
「じゃあ、あそこで五年前におきた殺人事件は?」
タカシは考えているようだった。
ようやくいう。
『俺が高校のころの話だな。あいつは確か未解決だったはずだが。また、新しい仕事か』
俺は夜の池袋を眺めながら歩いていた。
タカシの声でさえこの季節の街できくとどこかあたたかく感じられる。
さみしがり屋の探偵。
「今回はそんなに動くつもりはないんだ。ただ、死んだアメ横のギャングのオヤジさんに池袋の様子に詳しいやつにちょっときいてみてくれと頼まれたんだ。」
『そうか、死んだのは上野のやつだったんだ。』
俺は信号のない横断歩道で立ち止まった。
シボレー・アストロが窓が割れるほどの大音響で「君の瞳に恋してる」を流しながら通りすぎていった。
「あのころ上野ともめてたなんて話はきかないか」
『知らないな。だが、お前の頼みだからSウルフのOB連中に確かめておく。まあ、俺がやりましたなんてやつはいないだろうがな。』
俺は信号をわたり劇場通りにはいった。
冬の夜の散歩ってけっこうたのしいのに、なぜ俺しか愛好者がいないのだろうか。
東京ではなくどこかの砂漠の夜のようだ。
俺は池袋の王様にいった。
「それでいいよ。クリスマスまではもう会わないだろうからな。タカシ、メリークリスマス」
センチメンタルな俺の挨拶に王は無関心でこたえた。
「おまえはバカか」
いつか革命を起こして、やつの首をはねてやる。
花束は日に日に増えていった。
アメ横のギャングというより、どこかのロックスターでも死んだようだ。
ときには何人かのガキが丸く円を描いて座り酒盛りをしていたりする。
そんなときは遠くから様子を眺めていた。
実際には今回のような件では、俺にできることなどほとんどないのだ。
できることは警察がすべてはやっている。
せいぜい池袋の現キング・虎狗琥崇に電話でもいれて話を聞くくらい。
それで空振りなら、西口街道の鈴猫の花屋で白いカーネーションでも買って、供えてやればそれで終わりになるはずだった。
俺は夜の散歩の途中でタカシの番号を押した。
最近はとりつぎとも仲がいいので、つまらない冗談を飛ばしたりする。
『はい、こちら、キング』
カタシに負けず冷たい女の声が返ってきた。
頬にホシガタのタトゥーをいれたヒロミって炎銃の部隊員の女だ。
とんでもないあばずれだと予想していたのが、実物はクラス委員の役を振られるアイドルのような正統派美人だ。
もっとも着ているのは米軍放出品のカーキの軍服なのだが。
「クリスマスの予定が詰まってなかったら、テラスで俺とキャンドルの灯を見て夜をすごさないか」
ヒロミは途中から聞いていないようだった。
すぐにタカシと替わる。
『悠、おまえ、俺とキャンドル見てどうするんだ』
まったくジョークを理解していない声だった。
あわてて俺はいった。
「芸術劇場裏のテラスを知ってるか」
『ああ』
「じゃあ、あそこで五年前におきた殺人事件は?」
タカシは考えているようだった。
ようやくいう。
『俺が高校のころの話だな。あいつは確か未解決だったはずだが。また、新しい仕事か』
俺は夜の池袋を眺めながら歩いていた。
タカシの声でさえこの季節の街できくとどこかあたたかく感じられる。
さみしがり屋の探偵。
「今回はそんなに動くつもりはないんだ。ただ、死んだアメ横のギャングのオヤジさんに池袋の様子に詳しいやつにちょっときいてみてくれと頼まれたんだ。」
『そうか、死んだのは上野のやつだったんだ。』
俺は信号のない横断歩道で立ち止まった。
シボレー・アストロが窓が割れるほどの大音響で「君の瞳に恋してる」を流しながら通りすぎていった。
「あのころ上野ともめてたなんて話はきかないか」
『知らないな。だが、お前の頼みだからSウルフのOB連中に確かめておく。まあ、俺がやりましたなんてやつはいないだろうがな。』
俺は信号をわたり劇場通りにはいった。
冬の夜の散歩ってけっこうたのしいのに、なぜ俺しか愛好者がいないのだろうか。
東京ではなくどこかの砂漠の夜のようだ。
俺は池袋の王様にいった。
「それでいいよ。クリスマスまではもう会わないだろうからな。タカシ、メリークリスマス」
センチメンタルな俺の挨拶に王は無関心でこたえた。
「おまえはバカか」
いつか革命を起こして、やつの首をはねてやる。