ー特別編ーワルツ・フォー・ベビー
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それは寒さがいつまでも季節に陣取った冬の日のことだった。
池袋の街はもうバレンタイン一色。
マルイの正面エントランスには格納車の扉くらいある真っ赤な看板がふたつならび、きらきらと照明を反射していた。
俺は学校が終わると、iPodをポケットにいれて通りにいた。
別に誰かいい人と待ち合わせがあるわけではない。
息が白く伸びて、風は氷水のような二月の夜。
しっかりと厚着をして散歩するのが俺は好きなのだ。
信号や自動車のテールライトが奇妙に澄んで、ぼんやりと明るい夜道を地上のネオンを映す赤黒い雲がゆっくりと動いていく。
俺の格好は厳寒の池袋をアタックするには最適だ。
半袖、長袖のインナーを重ね着したうえに黒のパーカ(背中には銀糸で昇龍の刺繍)。
6ポケットの迷彩ワイドパンツを腰ばきする。
この季節の外出には小物だって書かせない。
ニット帽に革手袋(こいつは両方黒だ)、マフラーはちょっと派手な赤のストライプにする。
こうして準備万端な俺は足どりも軽く、酔っぱらいとカップルだらけの街に出ている。
いくら不景気だとはいえ、酒を飲まないサラリーマンはいないし、Hをしないカップルだっていない。
そんな街の裏通りをひとりで好きな音楽を聞きながら夜歩く。
背を伸ばし、両手を振ってゆったりとクルーズする。時間はせいぜい三十分から一時間。
いくら汚いとはいえ、東京の副都心の近くに生まれてよかったなと俺が思う数少ない瞬間なのだ。
その夜は西口の五差路の先を立教通りに抜けた。
学生のいなくなったキャンパスを横目にぐるりと西池袋三丁目を散歩する。
その日あったこと(つまらないことばかり)を思いだし、つぎの日の予定(同じくつまらないことばかり)を考えながら、夜の校舎や影絵のような木々を眺める。
するとつまらないことだって不思議と悪くならないように思えてくるのだった。
一回りして劇場通りに戻ってくるころには、時刻は真夜中の一時近く。
そこで俺は電気の照明ではないあたたかな明かりを見つけた。
ちいさな光はゆらゆらと揺れながら灯台のように行く手を照らしている。
俺は帰り道の途中ということもあり、吸い寄せられるようにその光を目指し歩いていった。
そこであのオカシナオヤジと出会ったのだ。
いきなりの正面衝突。
凍りついた路上に座ってるオヤジとぶらぶら散歩する俺。
人間同士でも交通事故は起きるのだ。
東京芸術劇場の裏側は広いテラスになっている。
白い石張りのテラスは歩道よりステップ数段ほど高くなっていて、数十メートルは続くステージのような階段の途中にはところどころステンレスの手すりがついていた。
池袋の街はもうバレンタイン一色。
マルイの正面エントランスには格納車の扉くらいある真っ赤な看板がふたつならび、きらきらと照明を反射していた。
俺は学校が終わると、iPodをポケットにいれて通りにいた。
別に誰かいい人と待ち合わせがあるわけではない。
息が白く伸びて、風は氷水のような二月の夜。
しっかりと厚着をして散歩するのが俺は好きなのだ。
信号や自動車のテールライトが奇妙に澄んで、ぼんやりと明るい夜道を地上のネオンを映す赤黒い雲がゆっくりと動いていく。
俺の格好は厳寒の池袋をアタックするには最適だ。
半袖、長袖のインナーを重ね着したうえに黒のパーカ(背中には銀糸で昇龍の刺繍)。
6ポケットの迷彩ワイドパンツを腰ばきする。
この季節の外出には小物だって書かせない。
ニット帽に革手袋(こいつは両方黒だ)、マフラーはちょっと派手な赤のストライプにする。
こうして準備万端な俺は足どりも軽く、酔っぱらいとカップルだらけの街に出ている。
いくら不景気だとはいえ、酒を飲まないサラリーマンはいないし、Hをしないカップルだっていない。
そんな街の裏通りをひとりで好きな音楽を聞きながら夜歩く。
背を伸ばし、両手を振ってゆったりとクルーズする。時間はせいぜい三十分から一時間。
いくら汚いとはいえ、東京の副都心の近くに生まれてよかったなと俺が思う数少ない瞬間なのだ。
その夜は西口の五差路の先を立教通りに抜けた。
学生のいなくなったキャンパスを横目にぐるりと西池袋三丁目を散歩する。
その日あったこと(つまらないことばかり)を思いだし、つぎの日の予定(同じくつまらないことばかり)を考えながら、夜の校舎や影絵のような木々を眺める。
するとつまらないことだって不思議と悪くならないように思えてくるのだった。
一回りして劇場通りに戻ってくるころには、時刻は真夜中の一時近く。
そこで俺は電気の照明ではないあたたかな明かりを見つけた。
ちいさな光はゆらゆらと揺れながら灯台のように行く手を照らしている。
俺は帰り道の途中ということもあり、吸い寄せられるようにその光を目指し歩いていった。
そこであのオカシナオヤジと出会ったのだ。
いきなりの正面衝突。
凍りついた路上に座ってるオヤジとぶらぶら散歩する俺。
人間同士でも交通事故は起きるのだ。
東京芸術劇場の裏側は広いテラスになっている。
白い石張りのテラスは歩道よりステップ数段ほど高くなっていて、数十メートルは続くステージのような階段の途中にはところどころステンレスの手すりがついていた。