ー特別編ーWORLD・THE・Link【後】
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西口ミッドナイトサマーレイヴから三日後、俺は岡崎ヒデキが搬送された要町昭和病院にいった。
トワコは集中治療実の外の長椅子に座っていた。
俺が前に立つとトワコはすっぴんの顔をあげた。
俺はまた美人は得だと思った。
トワコは最後に見たときより、何倍も綺麗に見えたからだ。
その日の義足は最初に会ったときにつけていたチタン製で、飾り気のない麻のワンピースによく似合っていた。
隣に座り、俺はいった。
「医者はなんだって」
「ずっとこのままかもしれないし、ある日突然意識を取り戻すかもしれない。誰にも予想できないって」
そうかといった。
トワコは俺の目をまっすぐ見つめ返してくる。
「ヒデキの最後の様子はだいたい御厨さんからきいてる。でも、悠くんはその場にいたんだよね。最後にヒデキはわたしのこといってなかった」
嘘をつくことはできなかった。
俺は黙って首を横に振った。
「わかった。最後の言葉をなるべく正確に教えて」
俺は集中して記憶を探った。
「この世界は十分に見た。自分は魂を信じている。向こう側の世界の存在もね。今度はあっちに旅する。そんな感じだった」
トワコの表情が明るくなった。それだけで病院の廊下が明るく照らされたように感じる。
「旅をしてるなら、いつか帰ってくるかもね」
「そうだな」
俺はトワコの手を握った。今度はセクシーな意味のない励ましの握手だ。
おれはいった。
「ヒデキの仕事内容はまったく知らなかったのか」
トワコは義足のシャフトのように細く精巧な首を傾げる。
「予測はしてたけど知らなかった。ヒデキは仕事のことを自分に聞くなといっていたの。それを知ればわたしも罪に問われることになるかもしれない。ぼくもおしえないからトワコも聞くなって」
「そうか。もうひとつきいてもいいかな。」
義足のモデルはやつれた顔でうなずいた。
「トワコはなにか情報を絞りだすために、俺と寝たのか。」
俺の頬を両手ではさんでトワコはいった。
「もっと自信をもったほうがいいよ、悠くん。情報なんて寝なくても手にはいるもの。私は本当にいいなって思った人としか寝ないよ。こう見えてもわたしはトワコなんだから」
俺たちは声を揃えて笑った。
確かにトワコはトワコだった。
何が起ころうが、たとえ片足だろうが、絶対に自分の足で立ち続ける女なのだ。
俺はいった。
「なあ、別に俺と付き合わなくてもいいからさ、もうヒデキに付き添ったりするのやめておけよ。今回もそうだし、インドで事故を起こしたときも責任は全部やつにあるじゃないか。」
それは……
俺がこの数日間考えてきたことだった。
あんなクスリで眠り続けるヒデキにはトワコはもったいなさすぎる。
かりに目を覚ましてもヒデキには厳しい警察の取り調べが待っているだけだ。
トワコはひとりで笑っていた。
「あのときもじつはヒデキってものすごくハイだったから、事故のことはなにも覚えていないんだよね」
俺は目を丸めていった。
「じゃあ、やつは自分の運転ミスだって知らないのか」
トワコは肩をすくめた。
「そうだと思う」
「話してもいないのか、信じられない。………それでもトワコは目を覚ますまで、やつの面倒を見るつもりなのか?」
トワコは俺を見てしっかりうなずいた。
かすかに笑っている。
俺は…俺の負けだとわかった。
そんなふうに笑われたらなにも言えなくなる。
トワコは集中治療実の外の長椅子に座っていた。
俺が前に立つとトワコはすっぴんの顔をあげた。
俺はまた美人は得だと思った。
トワコは最後に見たときより、何倍も綺麗に見えたからだ。
その日の義足は最初に会ったときにつけていたチタン製で、飾り気のない麻のワンピースによく似合っていた。
隣に座り、俺はいった。
「医者はなんだって」
「ずっとこのままかもしれないし、ある日突然意識を取り戻すかもしれない。誰にも予想できないって」
そうかといった。
トワコは俺の目をまっすぐ見つめ返してくる。
「ヒデキの最後の様子はだいたい御厨さんからきいてる。でも、悠くんはその場にいたんだよね。最後にヒデキはわたしのこといってなかった」
嘘をつくことはできなかった。
俺は黙って首を横に振った。
「わかった。最後の言葉をなるべく正確に教えて」
俺は集中して記憶を探った。
「この世界は十分に見た。自分は魂を信じている。向こう側の世界の存在もね。今度はあっちに旅する。そんな感じだった」
トワコの表情が明るくなった。それだけで病院の廊下が明るく照らされたように感じる。
「旅をしてるなら、いつか帰ってくるかもね」
「そうだな」
俺はトワコの手を握った。今度はセクシーな意味のない励ましの握手だ。
おれはいった。
「ヒデキの仕事内容はまったく知らなかったのか」
トワコは義足のシャフトのように細く精巧な首を傾げる。
「予測はしてたけど知らなかった。ヒデキは仕事のことを自分に聞くなといっていたの。それを知ればわたしも罪に問われることになるかもしれない。ぼくもおしえないからトワコも聞くなって」
「そうか。もうひとつきいてもいいかな。」
義足のモデルはやつれた顔でうなずいた。
「トワコはなにか情報を絞りだすために、俺と寝たのか。」
俺の頬を両手ではさんでトワコはいった。
「もっと自信をもったほうがいいよ、悠くん。情報なんて寝なくても手にはいるもの。私は本当にいいなって思った人としか寝ないよ。こう見えてもわたしはトワコなんだから」
俺たちは声を揃えて笑った。
確かにトワコはトワコだった。
何が起ころうが、たとえ片足だろうが、絶対に自分の足で立ち続ける女なのだ。
俺はいった。
「なあ、別に俺と付き合わなくてもいいからさ、もうヒデキに付き添ったりするのやめておけよ。今回もそうだし、インドで事故を起こしたときも責任は全部やつにあるじゃないか。」
それは……
俺がこの数日間考えてきたことだった。
あんなクスリで眠り続けるヒデキにはトワコはもったいなさすぎる。
かりに目を覚ましてもヒデキには厳しい警察の取り調べが待っているだけだ。
トワコはひとりで笑っていた。
「あのときもじつはヒデキってものすごくハイだったから、事故のことはなにも覚えていないんだよね」
俺は目を丸めていった。
「じゃあ、やつは自分の運転ミスだって知らないのか」
トワコは肩をすくめた。
「そうだと思う」
「話してもいないのか、信じられない。………それでもトワコは目を覚ますまで、やつの面倒を見るつもりなのか?」
トワコは俺を見てしっかりうなずいた。
かすかに笑っている。
俺は…俺の負けだとわかった。
そんなふうに笑われたらなにも言えなくなる。