ー特別編ーWORLD・THE・Link【後】
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「誰も動くなよ。動けばそいつから撃つ。じゃあな。」
イッセイは盃でもあけるように、スネークバイトでいっぱいのボトルを逆さにした。
バリバリとかみ砕きごくりと一度喉の奥にクスリを送ると、鮮やかな緑色に粉をふいた口を開いて俺たちに笑ってみせた。
俺は側にいたリッカの顔を自分の胸に抱いた。
右手をあげて銃を窓に向けた。
立て続けに二度引き金をはじく。
窓が白くひび割れたが、ガラスは砕け落ちなかった。
「見ろ。おれたちのまわりはすべてが安全なような設計されている。生きることのスリルは、この世界のどこにあるんだ。」
イッセイは緑の唇をゆがめてそういうとさらに二度銃を撃った。
あいた穴から夜の風が流れ込みカーテンを揺らした。
遠くレイヴの鼓動が部屋の中を満たす。
四発の銃声は増幅されたバスドラムより遥かにちいさかった。
「あの音がきこえるか。あの心臓が跳ねる音。あれが聞こえているあいだ人は生き、聞こえなくなれば人は死ぬ。どちらにしても一人の人間のやることなど、善でも悪でもたいしたことはない。あの音がなっているあいだ、ただ狂えばいいんだ。じゃあな」
イッセイは自分の胸に顔を落とした。
ヒデキが両肩を揺らした。
「佐伯さん……」
タカシは一瞬で距離を詰めると、イッセイの力の抜けた右手から銃を奪った。
指先でつまみソファのクッションに放った。
俺はまだリッカを抱いたまま、ヒデキにいった。
「アンタはどうするんだ。」
ヒデキの夢見るような表情は崩れなかった。
にこやかにいう。
「ぼくも十分この世界でおもしろいものを見た。トワコから聞いてるかな」
別に返事の必要などないようだった。
俺は黙っていた。
「ぼくは魂を信じている。向こう側の世界の存在もね。今度はあっちに旅するねもいいかもしれない」
そういうとポケットからジップロックの小袋を抜いた。
ひと動作で緑色の粒を飲み干す。
「向こうにいくには少し量がたりないかな。ぼくはベッドルームで寝るから、君たちは好きにするといい。」
ヒデキの続きは寝室に消えた。
俺たちは呆然としていた。
ナイフを抜いた四人のSウルフは緑色の蛇が駆け抜けた部屋では間抜けに見えた。
死を決意した人間の前ではナイフなどおもちゃにすぎない。
タカシはいった。
「撤収だ。」
俺は胸のリッカをゆっくりと出入口側に解放して、いった。
「このままでいいのか」
タカシはうなずいた。
「ああ、いいさ。この現場で何が起こったかサツのやつらにたっぷりと考えさせればいい。きっとやつらにはわからないだろう。万が一俺たちにまでたどりつくことができたら、そのときは話してやればいい。ジャンキーがふたり自殺する現場に立ち会いましたとな」
腕時計を見て、タカシはいった。
「もうすぐ、レイヴも終了して、封鎖も解ける。携帯も一斉に使えるようになるぞ。ここで解散だ。各自バラバラに散ってホテルを離れろ。フロントとドアボーイには注意するんだぞ」
最後に俺にいった。
「悠、お前は俺とこい。ここで目撃されたらすべて台無しだからな。」
さすがに平民の気持ちに敏感な王様だった。
俺は正直いって疲れ切っていた。
なにもかもどうでもよかったのだ。
エディもイッセイもヒデキもバカだと思った。
俺もSウルフもヘヴンもバカだ。
何も知らずに踊ってる一万人を超えるガキもみんなバカだ。
俺はタカシと無人の廊下を歩きながら、もう二度とドラッグ絡みの事件は引き受けないと心に誓った。
俺には池袋の街と貧乏くさい現実だけで十分だ。
イッセイは盃でもあけるように、スネークバイトでいっぱいのボトルを逆さにした。
バリバリとかみ砕きごくりと一度喉の奥にクスリを送ると、鮮やかな緑色に粉をふいた口を開いて俺たちに笑ってみせた。
俺は側にいたリッカの顔を自分の胸に抱いた。
右手をあげて銃を窓に向けた。
立て続けに二度引き金をはじく。
窓が白くひび割れたが、ガラスは砕け落ちなかった。
「見ろ。おれたちのまわりはすべてが安全なような設計されている。生きることのスリルは、この世界のどこにあるんだ。」
イッセイは緑の唇をゆがめてそういうとさらに二度銃を撃った。
あいた穴から夜の風が流れ込みカーテンを揺らした。
遠くレイヴの鼓動が部屋の中を満たす。
四発の銃声は増幅されたバスドラムより遥かにちいさかった。
「あの音がきこえるか。あの心臓が跳ねる音。あれが聞こえているあいだ人は生き、聞こえなくなれば人は死ぬ。どちらにしても一人の人間のやることなど、善でも悪でもたいしたことはない。あの音がなっているあいだ、ただ狂えばいいんだ。じゃあな」
イッセイは自分の胸に顔を落とした。
ヒデキが両肩を揺らした。
「佐伯さん……」
タカシは一瞬で距離を詰めると、イッセイの力の抜けた右手から銃を奪った。
指先でつまみソファのクッションに放った。
俺はまだリッカを抱いたまま、ヒデキにいった。
「アンタはどうするんだ。」
ヒデキの夢見るような表情は崩れなかった。
にこやかにいう。
「ぼくも十分この世界でおもしろいものを見た。トワコから聞いてるかな」
別に返事の必要などないようだった。
俺は黙っていた。
「ぼくは魂を信じている。向こう側の世界の存在もね。今度はあっちに旅するねもいいかもしれない」
そういうとポケットからジップロックの小袋を抜いた。
ひと動作で緑色の粒を飲み干す。
「向こうにいくには少し量がたりないかな。ぼくはベッドルームで寝るから、君たちは好きにするといい。」
ヒデキの続きは寝室に消えた。
俺たちは呆然としていた。
ナイフを抜いた四人のSウルフは緑色の蛇が駆け抜けた部屋では間抜けに見えた。
死を決意した人間の前ではナイフなどおもちゃにすぎない。
タカシはいった。
「撤収だ。」
俺は胸のリッカをゆっくりと出入口側に解放して、いった。
「このままでいいのか」
タカシはうなずいた。
「ああ、いいさ。この現場で何が起こったかサツのやつらにたっぷりと考えさせればいい。きっとやつらにはわからないだろう。万が一俺たちにまでたどりつくことができたら、そのときは話してやればいい。ジャンキーがふたり自殺する現場に立ち会いましたとな」
腕時計を見て、タカシはいった。
「もうすぐ、レイヴも終了して、封鎖も解ける。携帯も一斉に使えるようになるぞ。ここで解散だ。各自バラバラに散ってホテルを離れろ。フロントとドアボーイには注意するんだぞ」
最後に俺にいった。
「悠、お前は俺とこい。ここで目撃されたらすべて台無しだからな。」
さすがに平民の気持ちに敏感な王様だった。
俺は正直いって疲れ切っていた。
なにもかもどうでもよかったのだ。
エディもイッセイもヒデキもバカだと思った。
俺もSウルフもヘヴンもバカだ。
何も知らずに踊ってる一万人を超えるガキもみんなバカだ。
俺はタカシと無人の廊下を歩きながら、もう二度とドラッグ絡みの事件は引き受けないと心に誓った。
俺には池袋の街と貧乏くさい現実だけで十分だ。