ー特別編ーWORLD・THE・Link【前】
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「私は十六で事務所にスカウトされてデビューした。最初の数年間はごく普通のかわいこちゃんモデルだった。ハイティーンの女性誌専属のね。カメラマンのいうとおりにポージングして、メイクさんから化粧の方法を習い、スタイリストに新しいファッショントレンドを教えてもらう。たまに芸能人が顔をだすブランドのパーティーなんかにいくのが大好きって感じ。」
泡粒のように浮かんでは消える無数のモデルたち。
中には例外もいるが、たいていの子の寿命は昆虫並みに短い。
「このままでほんとにいいのかなって迷っていたときにヒデキと出会った。五年前の夏だった。場所はちいさな広告事務所。みんなが業界の噂話や芸能人のゴシップなんかに夢中になっているのに、ヒデキはぜんぜん違っていた。なんかね、存在感がクリアだったんだ。インドの話しにドラッグと魂の話。私のファッションがエスニックやネオサイケになり、実家をでてヒデキといっしょに暮らし始めるまでたいした時間はかからなかった。ティーン誌をやめて、大人の仕事をしようってショーモデルのオーディションも受けたけど、その頃の壁はなかなかあつかったな。」
コネと運と実力がきっちり三分の一ずつ求められる世界なのだ。
「ヒデキと最初にインドにいったのは五月だった。ゴアはアラビア海沿いの有名なリゾート地で、レイヴの発祥地のひとつなの。アンジェナビーチで部屋をかりたんだけど、一日中ヤシの木の砂浜でごろごろして、レイヴの噂を集める。あっちのレイヴって中心になる何人かがお金をだして勝手にセッティングするから、基本的にはすべて無料なの。街にはいつもレイヴの噂が飛び交ってる。だってゴアってレイヴとビーチとドラッグ以外なにもないところだから。それで世界中から集まったレイヴァーがインドの蝿みたいにレイヴの噂に群がってくる。わたしたちもホンダのバイクをレンタルして、毎晩のように噂の現場にとんでいった。ほとんどは空振りだったけどね」
トワコのホルタートップの脇から締まった乳房の丸みがのぞいていた。
彼女はぜんぜん気にしていないようだ。
俺のほうが緊張してしまう。
「じゃあ、今夜みたいなのがほんとうのレイヴに近いんだ」
「そう、ただで、宣伝もなくて、口コミで広がる自然発生的なパーティー。動員人数だけを競うロックコンサートとは大違い。それでゴアについて二週間くらいして、あの日がやって来た。」
俺は一度目にしたら忘れられない数字を見た。
「5月25日。」
「その日は前日からチャポランビーチですごいレイヴがあった。ヒデキとわたしは物乞いの子供やアシッド売りを無視して、砂まみれで十時間踊り続けていた。悠くんにも見せてあげたかったなあ。アラビア海にさす夜明けの最初の光り。すごく透明でエックス線みたいに汚れた身体をとおって、内側から肉体をきれいにしてくれるんだ。レイヴが終わったのが二十五日の昼過ぎ。ヒデキは前の夜から切れ目なくドラッグをのんでたから、最後にダウン系のクスリで締めようとしたのかな。売人からなにか買って一気に飲み込んだ。それがよくなかったみたい」
トワコのため息に嫌な予感が走る。
俺はじっと彼女の横顔を見つめていた。
泡粒のように浮かんでは消える無数のモデルたち。
中には例外もいるが、たいていの子の寿命は昆虫並みに短い。
「このままでほんとにいいのかなって迷っていたときにヒデキと出会った。五年前の夏だった。場所はちいさな広告事務所。みんなが業界の噂話や芸能人のゴシップなんかに夢中になっているのに、ヒデキはぜんぜん違っていた。なんかね、存在感がクリアだったんだ。インドの話しにドラッグと魂の話。私のファッションがエスニックやネオサイケになり、実家をでてヒデキといっしょに暮らし始めるまでたいした時間はかからなかった。ティーン誌をやめて、大人の仕事をしようってショーモデルのオーディションも受けたけど、その頃の壁はなかなかあつかったな。」
コネと運と実力がきっちり三分の一ずつ求められる世界なのだ。
「ヒデキと最初にインドにいったのは五月だった。ゴアはアラビア海沿いの有名なリゾート地で、レイヴの発祥地のひとつなの。アンジェナビーチで部屋をかりたんだけど、一日中ヤシの木の砂浜でごろごろして、レイヴの噂を集める。あっちのレイヴって中心になる何人かがお金をだして勝手にセッティングするから、基本的にはすべて無料なの。街にはいつもレイヴの噂が飛び交ってる。だってゴアってレイヴとビーチとドラッグ以外なにもないところだから。それで世界中から集まったレイヴァーがインドの蝿みたいにレイヴの噂に群がってくる。わたしたちもホンダのバイクをレンタルして、毎晩のように噂の現場にとんでいった。ほとんどは空振りだったけどね」
トワコのホルタートップの脇から締まった乳房の丸みがのぞいていた。
彼女はぜんぜん気にしていないようだ。
俺のほうが緊張してしまう。
「じゃあ、今夜みたいなのがほんとうのレイヴに近いんだ」
「そう、ただで、宣伝もなくて、口コミで広がる自然発生的なパーティー。動員人数だけを競うロックコンサートとは大違い。それでゴアについて二週間くらいして、あの日がやって来た。」
俺は一度目にしたら忘れられない数字を見た。
「5月25日。」
「その日は前日からチャポランビーチですごいレイヴがあった。ヒデキとわたしは物乞いの子供やアシッド売りを無視して、砂まみれで十時間踊り続けていた。悠くんにも見せてあげたかったなあ。アラビア海にさす夜明けの最初の光り。すごく透明でエックス線みたいに汚れた身体をとおって、内側から肉体をきれいにしてくれるんだ。レイヴが終わったのが二十五日の昼過ぎ。ヒデキは前の夜から切れ目なくドラッグをのんでたから、最後にダウン系のクスリで締めようとしたのかな。売人からなにか買って一気に飲み込んだ。それがよくなかったみたい」
トワコのため息に嫌な予感が走る。
俺はじっと彼女の横顔を見つめていた。