ー特別編ーWORLD・THE・Link【前】
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館山駅の改札係は驚きの目で俺たちを見つめていた。
深夜の0時一分に到着する電車から、これほどたくさんの人間が降りたのは初めてだろうし、そいつらの格好だって奇想天外だっただろう。
完全なレイヴ仕様だ。
駅前広場は短いタクシーの列が見えるくらいで、ほとんどの商店は明かりを落としていた。
俺は近くにいた大学生ふうの男にきいてみた。
やつは目の覚めるようなブルーのヘヴンのスタッフTシャツを着ていた。
「これからどうなるんだ。」
軽くよった顔をして、肩をすくめる。
「わかんない。誰も行き先は知らないんだ。ただ今夜ここでヘヴンのシークレットレイヴがあると聞いてるだけなんだから」
駅員が構内の灯りを消してシャッターを落とすと、あたりは急に暗くなった。
それでもレイヴ参加者は文句ひとついわず暗がりの中に立っていた。
十五分たった頃だろうか。駅前のロータリーにぼろぼろのバスがゆっくりと入ってくる。
難民のような俺たちを見ると、長髪の運転手が軽くホーンを鳴らした。
返事は大歓声だった。
手動のドアを開けたのはトワコだ。
俺を見つけるとニヤリと笑った。
「さあ、みんな、乗って」
我先にと俺たちはおんぼろバスに乗り込んだ。
さすがに屋根までは誰も登らないが、乗車定員を遥かに超えた人間が押し込まれた。
それでも半分の参加者が駅前広場に取り残されてしまう。
トワコは扉を閉じながら叫んだ。
「もう一回拾いに来るから、みんなここで動かないで待ってて」
中型バスはサスペンスをきしませながら、ロータリーを半周した。
俺はトワコと一緒に最前部にあるバスガイド用のステップに立っていた。
バスが揺れるたびに俺は壁に腕をつっぱり、トワコの身体に触れないように力をいれた。
トワコはいたずらっぽい目で俺を見る。
視線の高さはほとんど同じだ。
「無理しなくていいよ。別に身体がくっついたっていいじゃん。同じバスに乗って同じレイヴにいくんだから。私たち、明日には親友になってるかもしれないよ。」
ありがいお言葉だったが、俺はそれからもずっと腕に力をいれつづけた。
バスは海沿いの道を二十分ほど走った。
人家も信号機からも遠く離れた場所でいきなり停車する。
トワコは車内の後方に向かって叫んだ。
「ここからは歩きだよ。みんな登山の用意はいいか」
イエー、やたらと元気のいい合唱が返ってくる。
俺は目を丸めてトワコにいった。
「この暗闇のなか、山に登るのか」
トワコはニヤリと笑ってうなずく。
「そう。やっぱりレイヴは屋根のあるところじゃつまらない。大自然の中が一番よ」
帰りたい。
しかたなくバスを降りた。右手には波の音しか聞こえない真っ暗な海。
左手の山は濃紺の空を背にして影絵のようだった。
街灯も階段も見当たらない。用意のいい何人かが懐中電灯つきのヘルメットをかぶり、獣道のような急坂に分けいっていく。
おれもトワコと一緒にあとに続いた。
深夜の0時一分に到着する電車から、これほどたくさんの人間が降りたのは初めてだろうし、そいつらの格好だって奇想天外だっただろう。
完全なレイヴ仕様だ。
駅前広場は短いタクシーの列が見えるくらいで、ほとんどの商店は明かりを落としていた。
俺は近くにいた大学生ふうの男にきいてみた。
やつは目の覚めるようなブルーのヘヴンのスタッフTシャツを着ていた。
「これからどうなるんだ。」
軽くよった顔をして、肩をすくめる。
「わかんない。誰も行き先は知らないんだ。ただ今夜ここでヘヴンのシークレットレイヴがあると聞いてるだけなんだから」
駅員が構内の灯りを消してシャッターを落とすと、あたりは急に暗くなった。
それでもレイヴ参加者は文句ひとついわず暗がりの中に立っていた。
十五分たった頃だろうか。駅前のロータリーにぼろぼろのバスがゆっくりと入ってくる。
難民のような俺たちを見ると、長髪の運転手が軽くホーンを鳴らした。
返事は大歓声だった。
手動のドアを開けたのはトワコだ。
俺を見つけるとニヤリと笑った。
「さあ、みんな、乗って」
我先にと俺たちはおんぼろバスに乗り込んだ。
さすがに屋根までは誰も登らないが、乗車定員を遥かに超えた人間が押し込まれた。
それでも半分の参加者が駅前広場に取り残されてしまう。
トワコは扉を閉じながら叫んだ。
「もう一回拾いに来るから、みんなここで動かないで待ってて」
中型バスはサスペンスをきしませながら、ロータリーを半周した。
俺はトワコと一緒に最前部にあるバスガイド用のステップに立っていた。
バスが揺れるたびに俺は壁に腕をつっぱり、トワコの身体に触れないように力をいれた。
トワコはいたずらっぽい目で俺を見る。
視線の高さはほとんど同じだ。
「無理しなくていいよ。別に身体がくっついたっていいじゃん。同じバスに乗って同じレイヴにいくんだから。私たち、明日には親友になってるかもしれないよ。」
ありがいお言葉だったが、俺はそれからもずっと腕に力をいれつづけた。
バスは海沿いの道を二十分ほど走った。
人家も信号機からも遠く離れた場所でいきなり停車する。
トワコは車内の後方に向かって叫んだ。
「ここからは歩きだよ。みんな登山の用意はいいか」
イエー、やたらと元気のいい合唱が返ってくる。
俺は目を丸めてトワコにいった。
「この暗闇のなか、山に登るのか」
トワコはニヤリと笑ってうなずく。
「そう。やっぱりレイヴは屋根のあるところじゃつまらない。大自然の中が一番よ」
帰りたい。
しかたなくバスを降りた。右手には波の音しか聞こえない真っ暗な海。
左手の山は濃紺の空を背にして影絵のようだった。
街灯も階段も見当たらない。用意のいい何人かが懐中電灯つきのヘルメットをかぶり、獣道のような急坂に分けいっていく。
おれもトワコと一緒にあとに続いた。