ー特別編ーWORLD・THE・Link【前】
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夕方のニュースはいつもどおりだった。
全国の海水浴場であわせて八人が水死。
高速道路ではタンクローリーが横転したせいで多重衝突が発生。
こちらは三人即死。
ドライバーは飲酒運転の疑いで現行犯逮捕されたという。
そして三番手に幕張中央病院が映った。
アナウンサーが読み上げる。
『今日未明、千葉県の幕張市で集団薬物中毒が発生しました。若者に人気の終夜ダンスパーティーの会場で十二名が倒れ、最寄りの幕張中央病院に入院しています。うちひとりが死亡、ひとりが意識不明の重体です。千葉県警では主催者から事情を聴取し、薬物乱用による事件とみて……』
映像は昼間の幕張メッセと中央病院のエントランスが短くつながれ、最後にタオルを巻いた女のぼやけた顔写真になった。
死亡、横瀬亜美(21)。集合写真から切り抜いたものなのだろう。
ピースサインをだし、日焼けした顔で女は笑っていた。
美人でも不美人でもない女だった。
広い額に日がさしていた。家族も友人もいただろうに、ミドリの粒ひとつでこの女とすべての人たちの関係は絶ちきられたのだ。
幕張のニュースが終わると、俺はリモコンでテレビを消した。
最悪の確率は三分の一だ。集中治療室にはいっていた三人のうち、ひとりは回復し、ひとりは植物状態で、ひとりは死んだ。
そろそろおれも本気で動かなきゃならないと思った。
ジャンキー同士の命がけのババ抜き遊びと高みの見物をしてはいられない。
俺は上半身裸のままCDラックから『死と乙女』を抜き出しセットする。
思い詰めた人間の最後の一言のような導入部が始まった。
汗を流しながら、手帳を開き改めて今の時点でわかってることを確認していく。
何もかもわからないことだらけ。
それでも二時間粘り、ソファのうえに倒れるように横になる。
どうしても気になることがひとつだけ頭を離れなかった。
二年間順調にミドリを製造販売していたウロボロスは、なぜ急に焦ってこんな事件を起こしたのだろうか。
ビジネスだけを考えれば、これまでの調子で長く続けるほうが賢明なはずだ。
ブランドというのは持続することだから。
きっと組織の内部でなにかが起こっているのだろうが、俺にはそのなにかがまったくわからなかった。
だが、俺の勘は告げていた。
苦しみののたうつ白い腹が見えるようだった。ヘビは急いでいる。
真夜中に携帯が鳴った。跳ね起きて取る。
毛布がかけてあるのはマオがかけてくれたのだろう。
「はい、悠」
エディの声はでたらめに明るかった。
『今夜も最高にクールだねー!悠さん、起きてたー?』
おれもやつのテンションに負けずに不機嫌な声をだした。
「いいや、寝てた。なんだよ、こんな時間に」
『悠さん、スネークバイトのこと知りたがってるらしいからー、使ってみた感じを報告しようと思ってー』
全国の海水浴場であわせて八人が水死。
高速道路ではタンクローリーが横転したせいで多重衝突が発生。
こちらは三人即死。
ドライバーは飲酒運転の疑いで現行犯逮捕されたという。
そして三番手に幕張中央病院が映った。
アナウンサーが読み上げる。
『今日未明、千葉県の幕張市で集団薬物中毒が発生しました。若者に人気の終夜ダンスパーティーの会場で十二名が倒れ、最寄りの幕張中央病院に入院しています。うちひとりが死亡、ひとりが意識不明の重体です。千葉県警では主催者から事情を聴取し、薬物乱用による事件とみて……』
映像は昼間の幕張メッセと中央病院のエントランスが短くつながれ、最後にタオルを巻いた女のぼやけた顔写真になった。
死亡、横瀬亜美(21)。集合写真から切り抜いたものなのだろう。
ピースサインをだし、日焼けした顔で女は笑っていた。
美人でも不美人でもない女だった。
広い額に日がさしていた。家族も友人もいただろうに、ミドリの粒ひとつでこの女とすべての人たちの関係は絶ちきられたのだ。
幕張のニュースが終わると、俺はリモコンでテレビを消した。
最悪の確率は三分の一だ。集中治療室にはいっていた三人のうち、ひとりは回復し、ひとりは植物状態で、ひとりは死んだ。
そろそろおれも本気で動かなきゃならないと思った。
ジャンキー同士の命がけのババ抜き遊びと高みの見物をしてはいられない。
俺は上半身裸のままCDラックから『死と乙女』を抜き出しセットする。
思い詰めた人間の最後の一言のような導入部が始まった。
汗を流しながら、手帳を開き改めて今の時点でわかってることを確認していく。
何もかもわからないことだらけ。
それでも二時間粘り、ソファのうえに倒れるように横になる。
どうしても気になることがひとつだけ頭を離れなかった。
二年間順調にミドリを製造販売していたウロボロスは、なぜ急に焦ってこんな事件を起こしたのだろうか。
ビジネスだけを考えれば、これまでの調子で長く続けるほうが賢明なはずだ。
ブランドというのは持続することだから。
きっと組織の内部でなにかが起こっているのだろうが、俺にはそのなにかがまったくわからなかった。
だが、俺の勘は告げていた。
苦しみののたうつ白い腹が見えるようだった。ヘビは急いでいる。
真夜中に携帯が鳴った。跳ね起きて取る。
毛布がかけてあるのはマオがかけてくれたのだろう。
「はい、悠」
エディの声はでたらめに明るかった。
『今夜も最高にクールだねー!悠さん、起きてたー?』
おれもやつのテンションに負けずに不機嫌な声をだした。
「いいや、寝てた。なんだよ、こんな時間に」
『悠さん、スネークバイトのこと知りたがってるらしいからー、使ってみた感じを報告しようと思ってー』