ー特別編ーWORLD・THE・Link【前】
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「そう。昔イッセイさんに直接聞いたことがあった。あの尻尾をくわえるヘビの輪、ウロボロスのマークは永遠に醒めない夢、終わりのない知恵のシンボルなんだって。私がモデルとしてデビューしたときに、永遠子という名前をつけてくれたのもイッセイさんだった。ソウメイさんは現実主義者で、イッセイさんはロマン主義者なんだな。」
現実のまえにロマンチックな人間が敗れる。
ヘヴンの歴史は世界の歴史と変わらなかった。
「だが、こうして被害者がでた以上、スネークバイトもイッセイとかいう男も、そのまま野放しにしておくわけにはいかないだろう。ヘヴンだって警察からマークされたら、好きなように活動できなくなる。」
トワコはうなずいた。
「そうだね。今回の騒ぎでスポンサーがびびってるかも。ソウメイさんは警察で知らんぷりしてくるっていってたけど、次にヘヴンの主催するレイヴで同じことが起きたら、もう大がかりなレイヴをオーガナイズするのは難しくなるかもしれない」
俺はいった。
「それが案外やつの狙いなのかもな。手作りのレイヴ時代にヘヴンを戻す。そうでなければ何もかもダメにする」
会社や政党、学生のサークル活動だって同じだろう。日本の組織ならどこでもお馴染みの近親憎悪があるのだ。
「アンタはイッセイと仲がよかったらしいけど、連絡は取れないのか」
トワコは首を横に振った。 鎖骨の影は交互に深くなる。嘘はついてないように見えた。
「向こうから一方的に電話がかかってくるだけ。誰もイッセイさんを捕まえられない。」
そのときトワコは俺の背後で何かに気づいたようだった。
小さく手を振る。
俺が振り向くと膝まであるオレンジ色のワンピースを着た男がこっちに向かってくるところだった。
濃い頬髭のなかに白い歯が見える。
ピースフルな笑顔だった。
ハーレクリシュナ教徒か、こいつ。
トワコはテーブルの横にたったビーチサンダルの男を俺に紹介した。
「この人はあたしのボーイフレンドで岡崎英樹」
おれがうなずくと、ヒッピーのような男はうなずき返してきた。
弱さとやさしさを感じさせる笑いだ。
「それで、こちらが池袋のストリート探偵で悠くん」
きっと名字は忘れているのだと思った。
男を見ていてトワコのライヴのVIP席で見かけたような気がした。
おれはいった。
「あんた、レイヴ会場にいたよね。」
男はぼんやりと笑ってうなずいた。
ここにも夢見るジャンキーがひとり。
話にならねぇ…。
トワコが代わりに返事をする。
「ヒデキは私のステージには必ずきてくれるの」
馬鹿らしくなって、お幸せにというのはやめた。
「最後にひとつききたいんだけど、アンタの腹のタトゥーにはどういう意味があるんだ」
トワコは座ったまま男を見上げた。
俺の存在など無視して視線がしばらくからみあう。
「それはまた今度ね。話すと長くなるから。」
その場で俺に出来ることはもうないようだった。
二人を残して中央病院のカフェを離れた。
なぜかひどく虚しく感じながら。
きっとなにもいいことがないまま俺の日々がすぎていくのが寂しいのだろう。
センチメンタルな探偵。
現実のまえにロマンチックな人間が敗れる。
ヘヴンの歴史は世界の歴史と変わらなかった。
「だが、こうして被害者がでた以上、スネークバイトもイッセイとかいう男も、そのまま野放しにしておくわけにはいかないだろう。ヘヴンだって警察からマークされたら、好きなように活動できなくなる。」
トワコはうなずいた。
「そうだね。今回の騒ぎでスポンサーがびびってるかも。ソウメイさんは警察で知らんぷりしてくるっていってたけど、次にヘヴンの主催するレイヴで同じことが起きたら、もう大がかりなレイヴをオーガナイズするのは難しくなるかもしれない」
俺はいった。
「それが案外やつの狙いなのかもな。手作りのレイヴ時代にヘヴンを戻す。そうでなければ何もかもダメにする」
会社や政党、学生のサークル活動だって同じだろう。日本の組織ならどこでもお馴染みの近親憎悪があるのだ。
「アンタはイッセイと仲がよかったらしいけど、連絡は取れないのか」
トワコは首を横に振った。 鎖骨の影は交互に深くなる。嘘はついてないように見えた。
「向こうから一方的に電話がかかってくるだけ。誰もイッセイさんを捕まえられない。」
そのときトワコは俺の背後で何かに気づいたようだった。
小さく手を振る。
俺が振り向くと膝まであるオレンジ色のワンピースを着た男がこっちに向かってくるところだった。
濃い頬髭のなかに白い歯が見える。
ピースフルな笑顔だった。
ハーレクリシュナ教徒か、こいつ。
トワコはテーブルの横にたったビーチサンダルの男を俺に紹介した。
「この人はあたしのボーイフレンドで岡崎英樹」
おれがうなずくと、ヒッピーのような男はうなずき返してきた。
弱さとやさしさを感じさせる笑いだ。
「それで、こちらが池袋のストリート探偵で悠くん」
きっと名字は忘れているのだと思った。
男を見ていてトワコのライヴのVIP席で見かけたような気がした。
おれはいった。
「あんた、レイヴ会場にいたよね。」
男はぼんやりと笑ってうなずいた。
ここにも夢見るジャンキーがひとり。
話にならねぇ…。
トワコが代わりに返事をする。
「ヒデキは私のステージには必ずきてくれるの」
馬鹿らしくなって、お幸せにというのはやめた。
「最後にひとつききたいんだけど、アンタの腹のタトゥーにはどういう意味があるんだ」
トワコは座ったまま男を見上げた。
俺の存在など無視して視線がしばらくからみあう。
「それはまた今度ね。話すと長くなるから。」
その場で俺に出来ることはもうないようだった。
二人を残して中央病院のカフェを離れた。
なぜかひどく虚しく感じながら。
きっとなにもいいことがないまま俺の日々がすぎていくのが寂しいのだろう。
センチメンタルな探偵。