ー特別編ーWORLD・THE・Link【前】
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オーガナイザーはジージャンの胸ポケットから、クロームに輝くピルケースをだした。
カチリと精密な音をたてて開き、青い錠剤をひと粒つまみ、俺に見せた。
X字のマーク。
風邪薬よりふたまわりほどでかい。
口に放りこんでがりがり。
「これは純度の高いMDMAで、さっき話した。エクスタシーの上のものだ。ある本にこんな記録がのっていた。一九九○年から九五年までの五年間で、エクスタシーによる死亡者は五十四人。対してタバコによる死者が五十五万人、アルコールが十二万五千人だという。わかるかな、ヘヴンは厚生労働省とは別な見解を、ドラッグについてもっている。エクスタシーやマリファナ程度のライトドラッグは、各自の責任で自由に楽しむべきだと考えているんだ。だから、ぼくたちのレイヴ会場では売人がなにをしようと自由だ。そうしたものもレイヴの楽しみのうちだし、文化の一種だと思っている。」
話がややこしくなってきた。
俺は平然と御厨の言葉を聞き流してるタカシを横目で見て口をはさんだ。
「だけど、ウロボロスはダメなんだろ」
御厨の瞳孔が開いてきたのが、正面に座る俺にはわかった。
何も問題ないなどないという偽物のほほえみがインテル面でとろけてる。
だが、なにもないなら俺がここにいるはずがないのだ。
「そうだ。ウロボロスは違う。ドラッグは強力な志向性をもっている。例えば覚醒剤は厳しい労働やセックスと直接結びつく、きわめて日本的な国民ドラッグだ。エクスタシーは生まれたときからダンスと仲がいい。」
俺はいった。
「スネークバイトは」
御厨はゆっくりと首を横に振る。
「あいつは過去の亡霊だ。知覚を極限まで拡大し、意味や存在の地平線を無理やり押し広げる。ドラッグで宇宙と精神の扉をこじ開けようとした恐竜時代に先祖がえりしたクスリだ。特に新しい薬物を使っているわけではないが、カクテルの方法と組成に特殊なノウハウがあるらしい。覚醒剤並みに強力な依存性があって、効能は……」
となりに座るトワコがいった。
「ともかくぶっ飛び」
俺はクスリには暗い。
ばかみたいなことをいった。
「どこまで」
トワコは信じられないという目で俺を見た。
癖なのだろうか、右手で義足のシャフトをなでている。
「想像力の裏側、世界のてっぺん、夜明けの王国。驚異的なものだけが存在を許されるところ。でも運が悪ければ、地獄の底までひきずりこまれる。」
トワコは細い親指で首をかき切る仕草をする。
「あの世いきだよ」
よくわからないが、きっとこの女は詩人なのだろう。
おれは言葉よりもチタンの金色の光に目を奪われていた。御厨はいう。
「だから、ヘヴンのレイヴでは覚醒剤やコカイン、それにスネークバイトのようなハードドラッグは禁じられている。ぼくがきみに頼みたいことがこれでわかるかな。」
だんだんと仕事の筋が読めてきた。
リッカが果物屋でやるのと同じだ。
大切な商品を全部だめにするまえに、段ボール箱のなかから腐ったリンゴだけ抜き出し捨てること。
カチリと精密な音をたてて開き、青い錠剤をひと粒つまみ、俺に見せた。
X字のマーク。
風邪薬よりふたまわりほどでかい。
口に放りこんでがりがり。
「これは純度の高いMDMAで、さっき話した。エクスタシーの上のものだ。ある本にこんな記録がのっていた。一九九○年から九五年までの五年間で、エクスタシーによる死亡者は五十四人。対してタバコによる死者が五十五万人、アルコールが十二万五千人だという。わかるかな、ヘヴンは厚生労働省とは別な見解を、ドラッグについてもっている。エクスタシーやマリファナ程度のライトドラッグは、各自の責任で自由に楽しむべきだと考えているんだ。だから、ぼくたちのレイヴ会場では売人がなにをしようと自由だ。そうしたものもレイヴの楽しみのうちだし、文化の一種だと思っている。」
話がややこしくなってきた。
俺は平然と御厨の言葉を聞き流してるタカシを横目で見て口をはさんだ。
「だけど、ウロボロスはダメなんだろ」
御厨の瞳孔が開いてきたのが、正面に座る俺にはわかった。
何も問題ないなどないという偽物のほほえみがインテル面でとろけてる。
だが、なにもないなら俺がここにいるはずがないのだ。
「そうだ。ウロボロスは違う。ドラッグは強力な志向性をもっている。例えば覚醒剤は厳しい労働やセックスと直接結びつく、きわめて日本的な国民ドラッグだ。エクスタシーは生まれたときからダンスと仲がいい。」
俺はいった。
「スネークバイトは」
御厨はゆっくりと首を横に振る。
「あいつは過去の亡霊だ。知覚を極限まで拡大し、意味や存在の地平線を無理やり押し広げる。ドラッグで宇宙と精神の扉をこじ開けようとした恐竜時代に先祖がえりしたクスリだ。特に新しい薬物を使っているわけではないが、カクテルの方法と組成に特殊なノウハウがあるらしい。覚醒剤並みに強力な依存性があって、効能は……」
となりに座るトワコがいった。
「ともかくぶっ飛び」
俺はクスリには暗い。
ばかみたいなことをいった。
「どこまで」
トワコは信じられないという目で俺を見た。
癖なのだろうか、右手で義足のシャフトをなでている。
「想像力の裏側、世界のてっぺん、夜明けの王国。驚異的なものだけが存在を許されるところ。でも運が悪ければ、地獄の底までひきずりこまれる。」
トワコは細い親指で首をかき切る仕草をする。
「あの世いきだよ」
よくわからないが、きっとこの女は詩人なのだろう。
おれは言葉よりもチタンの金色の光に目を奪われていた。御厨はいう。
「だから、ヘヴンのレイヴでは覚醒剤やコカイン、それにスネークバイトのようなハードドラッグは禁じられている。ぼくがきみに頼みたいことがこれでわかるかな。」
だんだんと仕事の筋が読めてきた。
リッカが果物屋でやるのと同じだ。
大切な商品を全部だめにするまえに、段ボール箱のなかから腐ったリンゴだけ抜き出し捨てること。