ー特別編ーWORLD・THE・Link【前】
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俺は何が起こったかを目で追えてしまったので少し視線をずらした。
こぶしの形をつくった右手がゆっくり離れるとき、ずるりと売人の頬からナイフが抜けた。
血の玉が黒いヴェストを転がり落ちる。
鞭は言った。
「人のビジネスに手を出すとこんな目にあう。わかったな。」
売人がうなずくと鞭が一括した。
「返事がない」
「わかり……ました」
短い言葉の途中で頬から空気が漏れて血の泡ができる。
頬を流れ落ちる血の泡を見て、鞭は笑ってうなずいた。
「いいなあ、その芸当。赤いシャボン玉なんて気が利いてるじゃないか。」
鞭は俺のほうを見てうなずいた。
「せっかくの商談中にわるかったな。だが、お前も偽物のスネークバイトには手を出さないほうがいい。あんな粗悪品を食ったら失明するぞ。じゃあな」
焦るそぶりもなく便所を出て行こうとする。
俺は言った。
「あんたたちなら、本物のスネークバイトを売ってくれるのか」
男たちはちょっと驚いた顔で振り向いた。
「どうだろうな。どちらにしても今夜はもう残っていない。次のレイヴで会ったら、そのときまた注文してみてくれ」
二人が出ていくと音もなくスチールの扉が閉まった。
俺は声も出さず泣いている売人と二人、素敵なデザインの便所に残された。
鏡のなかにきいてみる。
「あいつら、誰」
売人はペーパータオルをまとめてむしりとると、頬をおさえながらいった。
「ウロボロス。スネークバイトの卸元」
携帯をひらいて奴に言った。
「救急車呼ぼうか」
「うるさい!むこういけ!」
俺は泣いてる売人を残して便所を出た。
奴の足元はなすられた血の跡で白いタイルが台無しだった。
親切心がいつも通じるとは限らない。
俺がホールに戻ると遠くからエディが手を振ってきた。
うなづいて奴のところに向かう。
近くには見た顔の二人がいる。
俺は叫んで言った。
「土原に夙川なにしてる」
二人も叫んで返事をする。
「小鳥遊センパイ。ちっす。俺らもレイヴにきてんでさぁ。エディがいたから声かけてたらセンパイにあったんですぜぃ。」
「トワコはモノホンのリスカリだからね。じゃ、また。」
二人は踊りながら群衆の中に潜っていく。
エディが近くの女を指さして言った。
「この子たち、浦安からきた女子大生だって」
デニムのブラ一枚のうえに草木染めのバンダナを腹掛け変わりに巻いたドレッドヘアと胸の真ん中に透明なビニールの丸窓が着いたTシャツを着たウルフカットの女子大生がふたり。
へらへらと笑いながら俺にうなづいてみせる。
女たちは自分の長所がどこかよくわかっているようだった。
ドレッド女のよくしまった背中とウルフ女の胸のビニールを汗で曇らせる谷間。
エディは最高だ最高だといって踊り続けている。
女子大生の笑顔は接着剤で顔に張り付けた面のようだった。
夜店で五百円で売っているアニメのセクシーなキャラだ。
目は光のない丸い穴だ。
さっきの便所の騒動といい、この女たちといい、ここは俺のいるべき場所とは思えなくなってきた。
こぶしの形をつくった右手がゆっくり離れるとき、ずるりと売人の頬からナイフが抜けた。
血の玉が黒いヴェストを転がり落ちる。
鞭は言った。
「人のビジネスに手を出すとこんな目にあう。わかったな。」
売人がうなずくと鞭が一括した。
「返事がない」
「わかり……ました」
短い言葉の途中で頬から空気が漏れて血の泡ができる。
頬を流れ落ちる血の泡を見て、鞭は笑ってうなずいた。
「いいなあ、その芸当。赤いシャボン玉なんて気が利いてるじゃないか。」
鞭は俺のほうを見てうなずいた。
「せっかくの商談中にわるかったな。だが、お前も偽物のスネークバイトには手を出さないほうがいい。あんな粗悪品を食ったら失明するぞ。じゃあな」
焦るそぶりもなく便所を出て行こうとする。
俺は言った。
「あんたたちなら、本物のスネークバイトを売ってくれるのか」
男たちはちょっと驚いた顔で振り向いた。
「どうだろうな。どちらにしても今夜はもう残っていない。次のレイヴで会ったら、そのときまた注文してみてくれ」
二人が出ていくと音もなくスチールの扉が閉まった。
俺は声も出さず泣いている売人と二人、素敵なデザインの便所に残された。
鏡のなかにきいてみる。
「あいつら、誰」
売人はペーパータオルをまとめてむしりとると、頬をおさえながらいった。
「ウロボロス。スネークバイトの卸元」
携帯をひらいて奴に言った。
「救急車呼ぼうか」
「うるさい!むこういけ!」
俺は泣いてる売人を残して便所を出た。
奴の足元はなすられた血の跡で白いタイルが台無しだった。
親切心がいつも通じるとは限らない。
俺がホールに戻ると遠くからエディが手を振ってきた。
うなづいて奴のところに向かう。
近くには見た顔の二人がいる。
俺は叫んで言った。
「土原に夙川なにしてる」
二人も叫んで返事をする。
「小鳥遊センパイ。ちっす。俺らもレイヴにきてんでさぁ。エディがいたから声かけてたらセンパイにあったんですぜぃ。」
「トワコはモノホンのリスカリだからね。じゃ、また。」
二人は踊りながら群衆の中に潜っていく。
エディが近くの女を指さして言った。
「この子たち、浦安からきた女子大生だって」
デニムのブラ一枚のうえに草木染めのバンダナを腹掛け変わりに巻いたドレッドヘアと胸の真ん中に透明なビニールの丸窓が着いたTシャツを着たウルフカットの女子大生がふたり。
へらへらと笑いながら俺にうなづいてみせる。
女たちは自分の長所がどこかよくわかっているようだった。
ドレッド女のよくしまった背中とウルフ女の胸のビニールを汗で曇らせる谷間。
エディは最高だ最高だといって踊り続けている。
女子大生の笑顔は接着剤で顔に張り付けた面のようだった。
夜店で五百円で売っているアニメのセクシーなキャラだ。
目は光のない丸い穴だ。
さっきの便所の騒動といい、この女たちといい、ここは俺のいるべき場所とは思えなくなってきた。