ー特別編ーWORLD・THE・Link【前】
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幕張メッセのチケット売り場でふたり分のチケットをもらい、俺たちはメイン会場になる大ホールにむかった。
廊下でさえ巨大な獣の心拍のようなベース音が壁を震わせている。
エディの足は自然に早くなった。
「もうたまんないなあ。悠さん、ちょい待ち。」
エディは柱の影に隠れるとペットボトルのミネラルウォーターでなにか飲み下した。
「おいおぃ…今度はなんだよ。」
エディはニヤリと笑っていう。
「へへ、ネットで買った青いドルフィン。結構飛べるって噂だったんだけど」
俺はあきれていった。
「そいつの中身は」
エディは手のひらにのせた青い錠剤を俺に見せる。
確かに水面からジャンプしたばかりのイルカの模様が雑なインクで染めてあった。
「よくわかんないけど、MDMAかなんかじゃないですか。この感じだと混ぜ物多そうだけど。悠さんもひとつやりますか。」
俺は首を横に振った。
MDMAは覚醒剤に似た作用のあるアッパー系のドラッグだ。
レイヴは流行とともに世界中に広がり、日本でもとうの昔に非合法になってる。
「いいや、やめとく。俺はこれから人に会わなくちゃいけないんだ。」
トロリと溶けた目でやつはいう。
「じゃあ、あとでほしくなったらいってください。でも、早くしたほうがいいですよ。おれが最後のくっちゃうかもしれないから」
よだれを垂らしそうな顔をしてエディはいう。
きっとこのレイヴの大スポンサーなのだろう、タバコ会社とビール会社のポスターが交互に張られた廊下を、俺たちはホールを目指して歩いていった。
高さ三メートルはありそうな分厚い扉を抜けると丸天井のホールがいきなり広がった。
サッカー場よりは少し狭いだろうか。
奥の壁は遠く濁って見えた。
音楽のボリュームは真下で見上げる花火大会くらいのでかさ。
どすどすと肺の中の空気まで揺らす。
エディと話すには耳元で思い切り叫ばなければならなかった。
正面にはスチールパイプで組まれたセットがあり、そこでDJがふたり皿回しのバトルをしているようだった。
かかっているのはエイヴエックスのユーロビートみたいなゆるい曲じゃなく、工場や建築現場の騒音みたいなノイズ系のダンスミュージック。
音程のいいコンクリートドリルに合わせて、椅子のない巨大なホール全体に散らばる客たちが好き勝手におどっている。
壁際には煙草とビールの売店に、軽食の屋台がたくさん出ていた。
エディが俺の耳元で叫んだ。
「あそこのカレー屋のレンズ豆のカレーうまいですよ。なぜかルーマニアの親子がやってるんです。」
ビーチパラソルの下から小学生くらいの栗色の髪の男の子が走り出していった
手には白いポリ袋をさげている。
エディは言う。
「踊りましょう。レイヴは見てたってつまんないすよ」
それで俺たちは無数の触手を震わせる単細胞のアメーバみたいな五千人の固まりに加わった。
俺のダンスがどうだったかって?
古典派と二十世紀のクラシック音楽で鍛えた俺のリズム感をなめないほうがいい。
もちろんガツンガツンに踊ってやった。
ファンのみんなに見せられなくて残念。
廊下でさえ巨大な獣の心拍のようなベース音が壁を震わせている。
エディの足は自然に早くなった。
「もうたまんないなあ。悠さん、ちょい待ち。」
エディは柱の影に隠れるとペットボトルのミネラルウォーターでなにか飲み下した。
「おいおぃ…今度はなんだよ。」
エディはニヤリと笑っていう。
「へへ、ネットで買った青いドルフィン。結構飛べるって噂だったんだけど」
俺はあきれていった。
「そいつの中身は」
エディは手のひらにのせた青い錠剤を俺に見せる。
確かに水面からジャンプしたばかりのイルカの模様が雑なインクで染めてあった。
「よくわかんないけど、MDMAかなんかじゃないですか。この感じだと混ぜ物多そうだけど。悠さんもひとつやりますか。」
俺は首を横に振った。
MDMAは覚醒剤に似た作用のあるアッパー系のドラッグだ。
レイヴは流行とともに世界中に広がり、日本でもとうの昔に非合法になってる。
「いいや、やめとく。俺はこれから人に会わなくちゃいけないんだ。」
トロリと溶けた目でやつはいう。
「じゃあ、あとでほしくなったらいってください。でも、早くしたほうがいいですよ。おれが最後のくっちゃうかもしれないから」
よだれを垂らしそうな顔をしてエディはいう。
きっとこのレイヴの大スポンサーなのだろう、タバコ会社とビール会社のポスターが交互に張られた廊下を、俺たちはホールを目指して歩いていった。
高さ三メートルはありそうな分厚い扉を抜けると丸天井のホールがいきなり広がった。
サッカー場よりは少し狭いだろうか。
奥の壁は遠く濁って見えた。
音楽のボリュームは真下で見上げる花火大会くらいのでかさ。
どすどすと肺の中の空気まで揺らす。
エディと話すには耳元で思い切り叫ばなければならなかった。
正面にはスチールパイプで組まれたセットがあり、そこでDJがふたり皿回しのバトルをしているようだった。
かかっているのはエイヴエックスのユーロビートみたいなゆるい曲じゃなく、工場や建築現場の騒音みたいなノイズ系のダンスミュージック。
音程のいいコンクリートドリルに合わせて、椅子のない巨大なホール全体に散らばる客たちが好き勝手におどっている。
壁際には煙草とビールの売店に、軽食の屋台がたくさん出ていた。
エディが俺の耳元で叫んだ。
「あそこのカレー屋のレンズ豆のカレーうまいですよ。なぜかルーマニアの親子がやってるんです。」
ビーチパラソルの下から小学生くらいの栗色の髪の男の子が走り出していった
手には白いポリ袋をさげている。
エディは言う。
「踊りましょう。レイヴは見てたってつまんないすよ」
それで俺たちは無数の触手を震わせる単細胞のアメーバみたいな五千人の固まりに加わった。
俺のダンスがどうだったかって?
古典派と二十世紀のクラシック音楽で鍛えた俺のリズム感をなめないほうがいい。
もちろんガツンガツンに踊ってやった。
ファンのみんなに見せられなくて残念。