ー特別編ーWORLD・THE・Link【前】
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でたらな暑さの夏、俺はドラッグにもレイヴにも興味はなかった。
速い音楽なんてモーツァルトのアレグロ(三十六番交響曲のアレグロ・スピリトーソ)か亡き王女の為のセプテットで十分。
クスリはこの二三年まったくのんでない。
(肩こりもない、風邪もひかない健康優良トラブルシューターなんだ。)
ここ数年とくらべても今年の夏は異常だった。
最高気温が三十六度の超真夏日が二週間も休みなく続く。
俺がガキだったころの三十度を超える日は、夏の三月で数えるくらいだった。
それが今じゃ三十度なら涼しいなと感じるくらい。
きっと数年後には、東京の最高気温は四十度を突破するだろう。
日当(ひなた)を歩いてる人間がバタリと倒れて死ぬ気温だ。
だが、池袋にはそんな殺人的熱射だって、ぜんぜん気にしない人間がひとりいた。
やつはいつもPダッシュパルコの植え込みにもたれ、晴れてる日には朝から晩まで一日中、目の前を通りすぎるガキを眺めている。
おしゃれで金をもっていそうなやつが来ると声をかけるのだ。
「なぁ、うちの店を見に来ないか。先週、ΝYで出たばかりの新しいTシャツが届いてる。うちのはスーパークールだぜ。」
そうやってガキをひっかけて、店につれこんじまえばやつのもの。
こづかいをたっぷりと絞り取られ、からからに干からびたガキは炎天下に街に吐きもどされる。
ヒップホップスタイルのおしゃれな蟻地獄だ。
俺はJRの路線をくぐるウイロードのトンネルを抜けて、池袋駅の西口から東口にでた。
左手に新型の携帯に群がる女子中学生を眺めて、ゆるやかな坂をのぼる。
その日もやつは途切れることのないフラッシュのような日射しのなか、腕を組んで通行人をにらんでいた。
胸には大麻の葉の形をした銀のペンダントトップ。
「よう、エディ、調子はどうだ」
やつはS・ウルフのハンドサインを返し、俺にいった。
「ぜんぜんダメですよ、悠さん。夏なのに金のないガキばっかり」
やつの名は山口英臣・ウィリアムズ。
日本人ホステスとアメリカ空軍整備兵のハーフだが、英語はまったくしゃべれない。
肌はカフェラテみたいなミルクブラウンだ。
「呼び込みもこの暑さじゃきついよな。お前、また変なもんくってるだろ。」
俺は明るい日射しのなか、妙に開いたやつの瞳孔を見ていった。
やつは夢見るような笑いをうかべている。
「いやー、今日もクールだなあ。悠さんもやる?ピラセタムとビンポセチン」
エディは腰骨の横にまいたウエストポーチに手を伸ばした。
俺は苦笑いしていった。
「いいや、遠慮しとく。」
ピラセタムというのは脳の右半球と左半球の情報伝達をスピードアップして、記憶力と発想力を改善する薬。
ビンポセチンは脳内の血流を盛んにする薬だ。
やつは俺のまわりにいる数少ないドラッグマニアだ。
合法違法関係なくあらゆる薬が大好きな人種。
子供がカラフルなキャンディに目がないように、新しいクスリは何でも試さずにいられないのだ。
速い音楽なんてモーツァルトのアレグロ(三十六番交響曲のアレグロ・スピリトーソ)か亡き王女の為のセプテットで十分。
クスリはこの二三年まったくのんでない。
(肩こりもない、風邪もひかない健康優良トラブルシューターなんだ。)
ここ数年とくらべても今年の夏は異常だった。
最高気温が三十六度の超真夏日が二週間も休みなく続く。
俺がガキだったころの三十度を超える日は、夏の三月で数えるくらいだった。
それが今じゃ三十度なら涼しいなと感じるくらい。
きっと数年後には、東京の最高気温は四十度を突破するだろう。
日当(ひなた)を歩いてる人間がバタリと倒れて死ぬ気温だ。
だが、池袋にはそんな殺人的熱射だって、ぜんぜん気にしない人間がひとりいた。
やつはいつもPダッシュパルコの植え込みにもたれ、晴れてる日には朝から晩まで一日中、目の前を通りすぎるガキを眺めている。
おしゃれで金をもっていそうなやつが来ると声をかけるのだ。
「なぁ、うちの店を見に来ないか。先週、ΝYで出たばかりの新しいTシャツが届いてる。うちのはスーパークールだぜ。」
そうやってガキをひっかけて、店につれこんじまえばやつのもの。
こづかいをたっぷりと絞り取られ、からからに干からびたガキは炎天下に街に吐きもどされる。
ヒップホップスタイルのおしゃれな蟻地獄だ。
俺はJRの路線をくぐるウイロードのトンネルを抜けて、池袋駅の西口から東口にでた。
左手に新型の携帯に群がる女子中学生を眺めて、ゆるやかな坂をのぼる。
その日もやつは途切れることのないフラッシュのような日射しのなか、腕を組んで通行人をにらんでいた。
胸には大麻の葉の形をした銀のペンダントトップ。
「よう、エディ、調子はどうだ」
やつはS・ウルフのハンドサインを返し、俺にいった。
「ぜんぜんダメですよ、悠さん。夏なのに金のないガキばっかり」
やつの名は山口英臣・ウィリアムズ。
日本人ホステスとアメリカ空軍整備兵のハーフだが、英語はまったくしゃべれない。
肌はカフェラテみたいなミルクブラウンだ。
「呼び込みもこの暑さじゃきついよな。お前、また変なもんくってるだろ。」
俺は明るい日射しのなか、妙に開いたやつの瞳孔を見ていった。
やつは夢見るような笑いをうかべている。
「いやー、今日もクールだなあ。悠さんもやる?ピラセタムとビンポセチン」
エディは腰骨の横にまいたウエストポーチに手を伸ばした。
俺は苦笑いしていった。
「いいや、遠慮しとく。」
ピラセタムというのは脳の右半球と左半球の情報伝達をスピードアップして、記憶力と発想力を改善する薬。
ビンポセチンは脳内の血流を盛んにする薬だ。
やつは俺のまわりにいる数少ないドラッグマニアだ。
合法違法関係なくあらゆる薬が大好きな人種。
子供がカラフルなキャンディに目がないように、新しいクスリは何でも試さずにいられないのだ。