ー特別編ーWORLD・THE・Link【前】
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翌日…
ユウキは学生服の黒ズボンに白い半袖のシャツ。
右手には、小さなカスミソウの花束をさげている。
あたしは初めて彼の制服姿を目撃した。
ユウキははにかんでいう。
「じゃあ、約束どおり、いっしょにきてくれる?」
ひとりだと勇気がでないかもしれないとやつがいったのだ。
「わかったわ。」
この日にそなえて、あたしは久しぶりにブラをつけて、襟のあるシャツを着ていた。
タンクトップ一枚よりましだよね。
バスをのりついで、あたしたちが向かったのは、中落合にある聖母病院だった。
その一室にユウキの祖母、蓉子が入院している。
病院のエントランスは明るいガラスのダブルドアだった。
てまえで、ユウキの父と母が待ってくれている。
あたしは会釈していった。
「ユウキのすごいお手柄でした。今回の連続放火魔は、ユウキがいなかったら、まだ捕まっていなかったかもしれないです」
お世話じゃない。
そうしたら、今ごろまだ夜明けのパトロールを続けていたかもしれない。
きっとあたしは過労で倒れていただろう。
あたしたちはユウキの祖母のいる病室にむかった。
夏の日のはいる廊下の奥に、開いたままの個室の戸口が見える。
あたしはそっとユウキの背中を押した。
「ここからはひとりで…ね?」
戸惑った顔は十三歳の少年のものだった。
「でも…」
「ひとりで夜明けのパトロールできたでしょ。ちゃんとばあちゃんの顔を見て、謝ってきなさい。そのほうがいいですよね。」
両親がうなずいた。
あたしが背中をたたくと、ユウキは顔をあげていう。
「……いってきます。」
あたしたちは病室のすぐ外に立ち尽くした。
ユウキの両親とあたし。
白い壁にもたれて、狭い個室のなかの会話に耳を立てる。
「おばあちゃん、ごめんなさい」
その調子だと内心でエールを送った。
気持ちが通じているなら、言葉など単純なほどいい。
「僕はあの日、おかしくなっていた。誰がうえの部屋で寝ているかもわかっていた。逃げられないかもしれないと思ってもいた。それでも、あの家のすべてが嫌になって、火をつけちゃったんです。それで、結果も見ないで、逃げてしまった。臆病者だったんだ。せめて…せめて、おばあちゃんが助けだされるところまで、見ていればよかった。その場にいて、自分の家が燃えて、崩れていくところを見てあげればよかった…」
最後のほうはユウキは泣きながら話していた。
ずっと心のなかにあった思いなのだろう。
溢れるような言葉が続く。
「ぼくは今回の連続放火の現場を見て、わかったことがある。悪いことをする人のなかでも最低の人間は、なにがおきたか、誰を傷つけたか、決して自分でみようとしない人間なんだ。ぼくはこのひと月半近く、ずっと意気地のない人間でした。おばあちゃんの顔をみて謝りたかったけど、どうしても怖くてできなかった。自分だったら身体中に火傷を負わされたら、絶対にその相手のことを一生憎んじゃうだろうな。そう思ったら、病室まではかられても、この部屋のなかに入ることはできなかった」
ユウキは堪えきれなくなったみたい。
そこで、子供のような泣き声をあげた。
ユウキは学生服の黒ズボンに白い半袖のシャツ。
右手には、小さなカスミソウの花束をさげている。
あたしは初めて彼の制服姿を目撃した。
ユウキははにかんでいう。
「じゃあ、約束どおり、いっしょにきてくれる?」
ひとりだと勇気がでないかもしれないとやつがいったのだ。
「わかったわ。」
この日にそなえて、あたしは久しぶりにブラをつけて、襟のあるシャツを着ていた。
タンクトップ一枚よりましだよね。
バスをのりついで、あたしたちが向かったのは、中落合にある聖母病院だった。
その一室にユウキの祖母、蓉子が入院している。
病院のエントランスは明るいガラスのダブルドアだった。
てまえで、ユウキの父と母が待ってくれている。
あたしは会釈していった。
「ユウキのすごいお手柄でした。今回の連続放火魔は、ユウキがいなかったら、まだ捕まっていなかったかもしれないです」
お世話じゃない。
そうしたら、今ごろまだ夜明けのパトロールを続けていたかもしれない。
きっとあたしは過労で倒れていただろう。
あたしたちはユウキの祖母のいる病室にむかった。
夏の日のはいる廊下の奥に、開いたままの個室の戸口が見える。
あたしはそっとユウキの背中を押した。
「ここからはひとりで…ね?」
戸惑った顔は十三歳の少年のものだった。
「でも…」
「ひとりで夜明けのパトロールできたでしょ。ちゃんとばあちゃんの顔を見て、謝ってきなさい。そのほうがいいですよね。」
両親がうなずいた。
あたしが背中をたたくと、ユウキは顔をあげていう。
「……いってきます。」
あたしたちは病室のすぐ外に立ち尽くした。
ユウキの両親とあたし。
白い壁にもたれて、狭い個室のなかの会話に耳を立てる。
「おばあちゃん、ごめんなさい」
その調子だと内心でエールを送った。
気持ちが通じているなら、言葉など単純なほどいい。
「僕はあの日、おかしくなっていた。誰がうえの部屋で寝ているかもわかっていた。逃げられないかもしれないと思ってもいた。それでも、あの家のすべてが嫌になって、火をつけちゃったんです。それで、結果も見ないで、逃げてしまった。臆病者だったんだ。せめて…せめて、おばあちゃんが助けだされるところまで、見ていればよかった。その場にいて、自分の家が燃えて、崩れていくところを見てあげればよかった…」
最後のほうはユウキは泣きながら話していた。
ずっと心のなかにあった思いなのだろう。
溢れるような言葉が続く。
「ぼくは今回の連続放火の現場を見て、わかったことがある。悪いことをする人のなかでも最低の人間は、なにがおきたか、誰を傷つけたか、決して自分でみようとしない人間なんだ。ぼくはこのひと月半近く、ずっと意気地のない人間でした。おばあちゃんの顔をみて謝りたかったけど、どうしても怖くてできなかった。自分だったら身体中に火傷を負わされたら、絶対にその相手のことを一生憎んじゃうだろうな。そう思ったら、病室まではかられても、この部屋のなかに入ることはできなかった」
ユウキは堪えきれなくなったみたい。
そこで、子供のような泣き声をあげた。