ー特別編ーWORLD・THE・Link【前】
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タカシと悠君とは、また真新しいポルシェ・カイエンのなかであった。
放火魔のいなくなった夜。
あたしはまだヨレヨレのタンクトップにホットパンツ。
悠君は波しぶきがプリントされて背中に龍がうねるTシャツに本物の軍パン。
キングはシルクのシャツにイタリア製の薄いサマージャケットを着ていた。
なぜ、タカシが二十万のジャケット。
悠君が二万円のズボン。
あたしが二千円のタンクトップなのかしら…。
深く考えるのは止めることにした。
あたしにしても、彼等にしても、服で値打ちがはかれるほど安い人間じゃないからね。
「よくやったな、リッカ」
悠君があたしの頭をワシワシ撫でていった。
あたしは久々に頭を撫でられながら、ホテルのラウンジのような革シートに身体を預けていた。
前回ほどは居心地も悪く感じない。
冷たく息をはいてタカシがいう。
「一ノ瀬組も京極会もよろこんでいた。S・ウルフにもたっぷりと謝礼がはいった。一週間の仕事にしては悪くない額だ。相変わらずお前も悠と同じで自分の取り分はいらないんだな。」
あたしは黙ってうなずいた。
金に縛られるのは、好きな生き方ではない。
あたしはずっと自由にやってきたんだから。
「考えてみると、面倒な組織を動かし、のりたくもない高級車にのり、さして好きでもない高級ブランドの服を着るより、悠やリッカのほうが気楽で幸福かもしれないな。」
タカシはいつも冷たく微笑んでいるので、冗談だか本音だか、あたしでさえよくわからないところがあった。
「そうかも知れないですよ。」
悠君が笑いながらいった。
「ヨレヨレの汗くさいTシャツでも、ゴテゴテのジープでも、金がなくても、それがいいといってくれる女もいるしな、ごくまれにだけど。」
「男もね。」
あたしは車は持っていないのでそれ以外は悠君と同じ意見だった。
タカシは端正な顔をあたしたちの方に向けて、真面目な表情になった。
「女たちのほとんどは、男を見る目などない。俺が女だったら、きっとおれよりも悠のような男を選ぶと思う。いや、むしろ、お前らが付き合うといいかもな。」
あたしは自分の耳を疑った。
悠君もポカンとしている。
タカシは下々もの憂慮など意に介さずにいった。
「西口の放火犯のほうは片付いたが、二人ともまだ残ってるな。」
細かなことによく気がつく王様。それに悠君も何かあるようだ。
あたしはうなずいて、窓の外を飛びすぎる池袋のネオンサインをみつめた。
「そっちのほうは、明日で片がつくことになっているわ。…放火犯のときみたいにうまくいくかどうかは、わからないけどね」
事件を解決するよりも、ずっと難しいことが普通の家族のなかにある。
あたしたちの生活ほど深い謎は、まだどんなミステリーにも書いていない。
放火魔のいなくなった夜。
あたしはまだヨレヨレのタンクトップにホットパンツ。
悠君は波しぶきがプリントされて背中に龍がうねるTシャツに本物の軍パン。
キングはシルクのシャツにイタリア製の薄いサマージャケットを着ていた。
なぜ、タカシが二十万のジャケット。
悠君が二万円のズボン。
あたしが二千円のタンクトップなのかしら…。
深く考えるのは止めることにした。
あたしにしても、彼等にしても、服で値打ちがはかれるほど安い人間じゃないからね。
「よくやったな、リッカ」
悠君があたしの頭をワシワシ撫でていった。
あたしは久々に頭を撫でられながら、ホテルのラウンジのような革シートに身体を預けていた。
前回ほどは居心地も悪く感じない。
冷たく息をはいてタカシがいう。
「一ノ瀬組も京極会もよろこんでいた。S・ウルフにもたっぷりと謝礼がはいった。一週間の仕事にしては悪くない額だ。相変わらずお前も悠と同じで自分の取り分はいらないんだな。」
あたしは黙ってうなずいた。
金に縛られるのは、好きな生き方ではない。
あたしはずっと自由にやってきたんだから。
「考えてみると、面倒な組織を動かし、のりたくもない高級車にのり、さして好きでもない高級ブランドの服を着るより、悠やリッカのほうが気楽で幸福かもしれないな。」
タカシはいつも冷たく微笑んでいるので、冗談だか本音だか、あたしでさえよくわからないところがあった。
「そうかも知れないですよ。」
悠君が笑いながらいった。
「ヨレヨレの汗くさいTシャツでも、ゴテゴテのジープでも、金がなくても、それがいいといってくれる女もいるしな、ごくまれにだけど。」
「男もね。」
あたしは車は持っていないのでそれ以外は悠君と同じ意見だった。
タカシは端正な顔をあたしたちの方に向けて、真面目な表情になった。
「女たちのほとんどは、男を見る目などない。俺が女だったら、きっとおれよりも悠のような男を選ぶと思う。いや、むしろ、お前らが付き合うといいかもな。」
あたしは自分の耳を疑った。
悠君もポカンとしている。
タカシは下々もの憂慮など意に介さずにいった。
「西口の放火犯のほうは片付いたが、二人ともまだ残ってるな。」
細かなことによく気がつく王様。それに悠君も何かあるようだ。
あたしはうなずいて、窓の外を飛びすぎる池袋のネオンサインをみつめた。
「そっちのほうは、明日で片がつくことになっているわ。…放火犯のときみたいにうまくいくかどうかは、わからないけどね」
事件を解決するよりも、ずっと難しいことが普通の家族のなかにある。
あたしたちの生活ほど深い謎は、まだどんなミステリーにも書いていない。