ー特別編ーWORLD・THE・Link【前】
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
あたしはスプレーを抜いていった。
「じゃあ、どんな権利があって、お前は人の店に落書きしたり……」
スプレーを足元に落として次はライターをだす。
街灯の光りを浴びて、丸まったクロームの角がキラリと光った。
「……人の店に火をつけたりするのかしら。」
ガキは左右に身体を振りながらいった。
「どんな証拠があるんだよ。離せよ。」
Dイチが黙らせますかと目で、あたしにいってくる。ぜんぜん賛成なんだけど、あたしは小さく首を振って続ける。
「まず、コイツらが目撃してるわ。それにスプレーと放火現場のグラフィティの成分はきっと同じよね。撒かれていた油とこの缶の中身も、もちろん同じ。お前は全焼の放火現場といっしょだよ。全身真っ黒」
やつはガタガタと全身を震わせた。
「お、お願いします。…うちの両親に話をさせてください。うちには金ならあるから、皆さんには決して悪いようにはしないですから。」
「じゃあ、お前がやったのね。」
メガネのガキは黙ってうなずいた。
「黙ってたら、わかんない。お前がやったのね?」
「……はい」
あたしは手の中に隠しもっていた携帯電話のスイッチを押した。
録音を解除したのである。
走りながら録音の準備をして、集音マイクをジャックに差し込んでいた。
不倫に便利なだけでなく、ほんとに携帯っていろいろ活用できるよね。
そこで、あたしはもうひとつの携帯の使い方を試すことにした。
110番を呼び出し、パトカーに来てもらうことにしたのだ。
でも、これはあたしが一番苦手な携帯の使い方。
やむを得ない場合以外は、誰だってやりたくはないだろうけどね。
ガキの名前は原本孝次郎(17歳)。板橋の都立高普通科に通う高校二年生だという。
池袋西口で連続した十一件の放火すべてについて、やつは認めたそうよ。
放火に興味をもったきっかけは、ユウキの事件だった。たった一件の放火で、あれほど世間を騒がせた。
自分も街に火をつけて、注目を浴びてみたかった。
店をキチンと調べて、明け方に火をつけるのは、たいへんな快感があったそうよ。
東京には一千万を超える人間がいる。たまにはそういうイカれたガキも生まれてくるのね。
あたしは警察でヤクザからの依頼を受けた部分をきれいに取り除いて、S・ウルフの夜間パトロールの話をした。
ユウキのお手柄は当人がやめてくれというので、仕方なくあたしが見つけたことにしておいた。
新聞の東京地方面を飾った自警団のちょっといい話は、そいつを手短にまとめたやつ。
まぁ、読者はみんな美談が好きだしね。
あたしは顔写真の撮影は丁重にお断りしている。
そんなに顔が売れちゃったら、悪い場所にいきにくくなるからね。
池袋でも、いや…世界中の街のどこでも、生きることのお楽しみの半分は、悪い場所にある。
アナタもそう思うでしょ?
「じゃあ、どんな権利があって、お前は人の店に落書きしたり……」
スプレーを足元に落として次はライターをだす。
街灯の光りを浴びて、丸まったクロームの角がキラリと光った。
「……人の店に火をつけたりするのかしら。」
ガキは左右に身体を振りながらいった。
「どんな証拠があるんだよ。離せよ。」
Dイチが黙らせますかと目で、あたしにいってくる。ぜんぜん賛成なんだけど、あたしは小さく首を振って続ける。
「まず、コイツらが目撃してるわ。それにスプレーと放火現場のグラフィティの成分はきっと同じよね。撒かれていた油とこの缶の中身も、もちろん同じ。お前は全焼の放火現場といっしょだよ。全身真っ黒」
やつはガタガタと全身を震わせた。
「お、お願いします。…うちの両親に話をさせてください。うちには金ならあるから、皆さんには決して悪いようにはしないですから。」
「じゃあ、お前がやったのね。」
メガネのガキは黙ってうなずいた。
「黙ってたら、わかんない。お前がやったのね?」
「……はい」
あたしは手の中に隠しもっていた携帯電話のスイッチを押した。
録音を解除したのである。
走りながら録音の準備をして、集音マイクをジャックに差し込んでいた。
不倫に便利なだけでなく、ほんとに携帯っていろいろ活用できるよね。
そこで、あたしはもうひとつの携帯の使い方を試すことにした。
110番を呼び出し、パトカーに来てもらうことにしたのだ。
でも、これはあたしが一番苦手な携帯の使い方。
やむを得ない場合以外は、誰だってやりたくはないだろうけどね。
ガキの名前は原本孝次郎(17歳)。板橋の都立高普通科に通う高校二年生だという。
池袋西口で連続した十一件の放火すべてについて、やつは認めたそうよ。
放火に興味をもったきっかけは、ユウキの事件だった。たった一件の放火で、あれほど世間を騒がせた。
自分も街に火をつけて、注目を浴びてみたかった。
店をキチンと調べて、明け方に火をつけるのは、たいへんな快感があったそうよ。
東京には一千万を超える人間がいる。たまにはそういうイカれたガキも生まれてくるのね。
あたしは警察でヤクザからの依頼を受けた部分をきれいに取り除いて、S・ウルフの夜間パトロールの話をした。
ユウキのお手柄は当人がやめてくれというので、仕方なくあたしが見つけたことにしておいた。
新聞の東京地方面を飾った自警団のちょっといい話は、そいつを手短にまとめたやつ。
まぁ、読者はみんな美談が好きだしね。
あたしは顔写真の撮影は丁重にお断りしている。
そんなに顔が売れちゃったら、悪い場所にいきにくくなるからね。
池袋でも、いや…世界中の街のどこでも、生きることのお楽しみの半分は、悪い場所にある。
アナタもそう思うでしょ?