ー特別編ーWORLD・THE・Link【前】
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文化通りは池袋駅北口から、板橋のほうへ延びる道だ。
駅のそばには飲食店や風俗店が多く、奥へいくとビジネスビルとラブホテルがびっしりとつながっている。まあ、典型的な池袋的ストリートよね。
あたしとユウキが立ち止まったのは、大久保病院のつまえ。
黒いプラスチックに掘りこまれた『むかしむかし』の白い文字は煤けて灰色になっていた。
割れたガラスからのぞく店内はすっかり空っぽ。
どうやらパトロールする。S・ウルフに取り放題をさせたらしい。
残っているのはハンガーとマネキンと熱で歪んだ鏡だけ。
ユウキが恐る恐るいった。
「この店は……」
「一番新しい放火の現場だ。あたしはユウキが自分のやったことは十分反省してると思ってる。だけど、もっとキチンと見ておいてもいいでしょ。ちいさな火がいったいなにをするのか。…アナタが一度は試したことがどんな結果を生むのかを。」
「……はい」
あたしは歯をくいしばって耐える十三歳を見た。
悪くない顔。
「よし。さぁ、調査かいしよ。」
あたしはユウキの背中を押した。
それからあたしたちは早朝の無人の通りで、火災の現場をじっくりと観察した。
火をつけたのは、となりのビルとのすきまだったようだ。
次の日にでもだそうとしてたのだろう。
燃えるゴミの燃えカスが残っていた。
壁が焦げて、黒い煤が吸い込まれるように、割れた小窓に消えている。
「窓をわってから、火をつけたのかな。なかも燃えるように」
店の正面は三メートルほどあるショーウインドウだったのだが、今では割れたガラスはそのままにベニヤ板が打ち付けてあった。
ユウキは店の出入口のわきをじっと見つめていた。
「どうした、なにかあったの」
あたしがやつのところに移動すると、壁の文字を指さしていった。
「これ」
独特の装飾が加わったグラフィティだった。
池袋でも落書きは数多い。
もともとは三十年ばかり昔、アメリカのスラム街で生まれた文化だ。
ギャングが自分の縄張りを表すために、境界にある建物に落書きをしたのである。
犬のマーキングと変わらない。そいつが日本ではファッションになり、ガキの集まる街ならどこでも目につくようになった。
あたしは黒い細身のスプレーで書かれた、その文字を読んだ。
「R23-11。ユウキ、意味がわかる」
やつは首を横に振っていった。
「わからない。でも、もう少し、ほかの現場をみたいです」
なにかをつかんだとき、あたしたちにはその匂いがする。
形はまだ見えないけれど、そこになにかがいるのがわかるのだ。
ユウキとあたしは次の現場に向かった。
こんなときはどうしても早足になるのをとめられない。
駅のそばには飲食店や風俗店が多く、奥へいくとビジネスビルとラブホテルがびっしりとつながっている。まあ、典型的な池袋的ストリートよね。
あたしとユウキが立ち止まったのは、大久保病院のつまえ。
黒いプラスチックに掘りこまれた『むかしむかし』の白い文字は煤けて灰色になっていた。
割れたガラスからのぞく店内はすっかり空っぽ。
どうやらパトロールする。S・ウルフに取り放題をさせたらしい。
残っているのはハンガーとマネキンと熱で歪んだ鏡だけ。
ユウキが恐る恐るいった。
「この店は……」
「一番新しい放火の現場だ。あたしはユウキが自分のやったことは十分反省してると思ってる。だけど、もっとキチンと見ておいてもいいでしょ。ちいさな火がいったいなにをするのか。…アナタが一度は試したことがどんな結果を生むのかを。」
「……はい」
あたしは歯をくいしばって耐える十三歳を見た。
悪くない顔。
「よし。さぁ、調査かいしよ。」
あたしはユウキの背中を押した。
それからあたしたちは早朝の無人の通りで、火災の現場をじっくりと観察した。
火をつけたのは、となりのビルとのすきまだったようだ。
次の日にでもだそうとしてたのだろう。
燃えるゴミの燃えカスが残っていた。
壁が焦げて、黒い煤が吸い込まれるように、割れた小窓に消えている。
「窓をわってから、火をつけたのかな。なかも燃えるように」
店の正面は三メートルほどあるショーウインドウだったのだが、今では割れたガラスはそのままにベニヤ板が打ち付けてあった。
ユウキは店の出入口のわきをじっと見つめていた。
「どうした、なにかあったの」
あたしがやつのところに移動すると、壁の文字を指さしていった。
「これ」
独特の装飾が加わったグラフィティだった。
池袋でも落書きは数多い。
もともとは三十年ばかり昔、アメリカのスラム街で生まれた文化だ。
ギャングが自分の縄張りを表すために、境界にある建物に落書きをしたのである。
犬のマーキングと変わらない。そいつが日本ではファッションになり、ガキの集まる街ならどこでも目につくようになった。
あたしは黒い細身のスプレーで書かれた、その文字を読んだ。
「R23-11。ユウキ、意味がわかる」
やつは首を横に振っていった。
「わからない。でも、もう少し、ほかの現場をみたいです」
なにかをつかんだとき、あたしたちにはその匂いがする。
形はまだ見えないけれど、そこになにかがいるのがわかるのだ。
ユウキとあたしは次の現場に向かった。
こんなときはどうしても早足になるのをとめられない。