ー特別編ーWORLD・THE・Link【前】
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「アンタの目は節穴だね。ほら、少しまえに放火事件があっただろ。私の友達であの家の親戚筋がいてね。なんだっけ、水谷さんだったかな。」
あたしは心のなかで無言の叫びをあげた。
遠ざかるユウキを見た。
丸まった背中が池袋駅まえの横断歩道を渡っていく。母の声は追い討ちのようだった。
「自負の家に火をつけて、誰かに大火傷を負わせても、ああやってすぐに街にもどっている。少年法なんていっても、もうちょっと考えてもらわなきゃ困るよ。西口のボヤだって、誰のせいかわかったもんじゃない。」
母は店の奥にもどっていく。
「…放火事件。」
あたしがまだユウキが行った方を見つめていると唯君がいった。
「……ユウキの話聞きたいですか。」
「知ってるの。」
あたしは唯の目を見つめる。
「知ってるというか…事件のあらましですが。」
「嫌じゃなかったら聞かせてくれる。」
あたしは店の奥からパイプイスを3つ出して並べた。どうせ客なんか来ないし。
三人はパイナップルの串を片手に座って、まず唯君がいった
「はい。事件は西池袋二丁目の建て込んだ住宅街でおこりました。水谷家の父親はどこかの中央省庁の、そこそこのお偉いさん。」
ガバッとパイナップルをかじり優花が続けた。
「だが、国家公務員上級試験をパスしてないから、昇進にはあきらかな天井がある。当人は優秀だが、それが悔しかったらしい。一人息子のユウキには、徹底的な英才教育を施した。「ドラゴン桜」みたいな、東大にさえ受かればいいっていう単純な奴隷制の頭脳労働かよな。」
優花はフンと鼻を鳴らした。
彩香が少し声のトーンを落として続ける。
「ユウキ君は親の期待にこたえて、ずっといい子を演じていて、成績も文句なしだったみたいです。」
だが、いい子の仮面は崩壊した。
ある日、ユウキは明け方に起き出して、旅の準備を開始した。
デイバックのなかには、着替えとこづかいと任天堂のDSライト。
家出の用意を終えると、前日用意しておいたライター用のオイルを、玄関と階段のあたりにからになるまで撒き散らした。
薄暗い階段のうえには、両親(41歳の父と39歳の母)と父かたの祖母(68歳)の寝室がある。
取り調べにあたった警察官には「うえに家族が寝ていることはわかっていた。もう全員死んでもいいと思って火をつけた」と供述したそうだ。
もっともこれはどこかの怪しげな週刊誌の記事で、大部分誇張があるかもしれないとのこと。
例え間違いではなくとも、気の弱い少年が警官の意思に沿って犯行を供述するのはよくある話。
これは崇から聞いたんだけど、崇がいった中学高校では、そんなことはありふれたもの。
警官のやり口に関しては、そうやって何度か相手をしないとタフになれないし、覚えていかないとかなんとか……
あたしは心のなかで無言の叫びをあげた。
遠ざかるユウキを見た。
丸まった背中が池袋駅まえの横断歩道を渡っていく。母の声は追い討ちのようだった。
「自負の家に火をつけて、誰かに大火傷を負わせても、ああやってすぐに街にもどっている。少年法なんていっても、もうちょっと考えてもらわなきゃ困るよ。西口のボヤだって、誰のせいかわかったもんじゃない。」
母は店の奥にもどっていく。
「…放火事件。」
あたしがまだユウキが行った方を見つめていると唯君がいった。
「……ユウキの話聞きたいですか。」
「知ってるの。」
あたしは唯の目を見つめる。
「知ってるというか…事件のあらましですが。」
「嫌じゃなかったら聞かせてくれる。」
あたしは店の奥からパイプイスを3つ出して並べた。どうせ客なんか来ないし。
三人はパイナップルの串を片手に座って、まず唯君がいった
「はい。事件は西池袋二丁目の建て込んだ住宅街でおこりました。水谷家の父親はどこかの中央省庁の、そこそこのお偉いさん。」
ガバッとパイナップルをかじり優花が続けた。
「だが、国家公務員上級試験をパスしてないから、昇進にはあきらかな天井がある。当人は優秀だが、それが悔しかったらしい。一人息子のユウキには、徹底的な英才教育を施した。「ドラゴン桜」みたいな、東大にさえ受かればいいっていう単純な奴隷制の頭脳労働かよな。」
優花はフンと鼻を鳴らした。
彩香が少し声のトーンを落として続ける。
「ユウキ君は親の期待にこたえて、ずっといい子を演じていて、成績も文句なしだったみたいです。」
だが、いい子の仮面は崩壊した。
ある日、ユウキは明け方に起き出して、旅の準備を開始した。
デイバックのなかには、着替えとこづかいと任天堂のDSライト。
家出の用意を終えると、前日用意しておいたライター用のオイルを、玄関と階段のあたりにからになるまで撒き散らした。
薄暗い階段のうえには、両親(41歳の父と39歳の母)と父かたの祖母(68歳)の寝室がある。
取り調べにあたった警察官には「うえに家族が寝ていることはわかっていた。もう全員死んでもいいと思って火をつけた」と供述したそうだ。
もっともこれはどこかの怪しげな週刊誌の記事で、大部分誇張があるかもしれないとのこと。
例え間違いではなくとも、気の弱い少年が警官の意思に沿って犯行を供述するのはよくある話。
これは崇から聞いたんだけど、崇がいった中学高校では、そんなことはありふれたもの。
警官のやり口に関しては、そうやって何度か相手をしないとタフになれないし、覚えていかないとかなんとか……