ー特別編ーWORLD・THE・Link【前】
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あずみは包丁を手放すと叫び声をあげて泣き出した。白木の柄がこつんと乾いた音を立てて床で跳ねる。
俺はオヤジさんの形見だという包丁を拾った。
するとまた別の声が響いた。
「警察が来てます。急いで逃げてください。」
氷室さんの声だ……って考えてる場合じゃない。
「三田村さん、アンタも逃げろ。この事態をサツに説明したら、アンタの嫌がらせも話さなきゃならなくなる。やつらに捕まるなよ。」
ヌードルスの店長は警察ていう言葉に震えあがったようだった。
汚れた床に散らばったプリントアウトをかき集めると、誰とも視線をあわせずに地下通路の暗がりに消えてしまった。
「君たち、待ちなさい!」
遠くから警察官の声が二重奏になって響いてきた。
俺は千夜にうなずいた。
「俺たちも消えよう。別々に逃げて、十分後に和龍に集合だ。」
それでおれたちは入り組んだ地下通路を三方向に散った。
この街の通りは、頭のなかに入っていた。
悠に無理やり教えられた警察から逃げるやり方100が役に立つときがくるとは思わなかった。
自慢できないのが、残念なくらいだ。
和龍に戻ったときには、既に千夜、琉翔、あずみはそろっていた。
千夜は水道で傷口を洗い、タオルで上腕部を止血していた。
あずみはカウンター席のまんなかで放心して座り込んでいる。
俺がさっき回収した包丁をまな板の上にそっと置くと千夜は口をひらい。
「…どうして、包丁なんかもちだした。」
あずみは宙を見たまま、ぼそりという。
「あいつが許せなかったから」
俺はカウンターの端に腰を降ろした。
あずみの方を見ずにいった。
「あずみは…あんなふうになることがときどきあるのか」
あずみの声は無表情なままだった。
「うん、スイッチがはいると自分でもなにをするかわからない」
琉翔がいった。
「それで初めて見る男を刺そうとおもったのか?」
「うん。だってあいつは悪いやつでしょう。刺されてもしょうがないよ」
千夜がいった。
「そりゃあ、別にあんなクズ刺されようがどうなろうがいいけどな……刺したテメェはどうなる。」
あずみは小さく笑った。
「いいよ。私なんてゴミみたいなもんだもん。あいつのいうとおり将来だってないし」
なんだかおかしい。
普段のあずみとそのときはまるで違っていた。
ものかげに隠れて菓子を口に押し込むあずみを思い出した。
俺はゆっくりといった。
「気にさわったら許してくれ。このまえあずみがコンビニの駄菓子を隠れて食べてるところを見たんだ。なんだかあのときのあずみはひどく悲しそうな目をしていたよ。それとなにか関係あるのか。この二週間一度もこの店のまかない飯だってくってないし。」
あずみは淋しそうに笑った。
「私、ちいさなころからそれでいつもいじめられていたんだ。みんなといっしょにものを食べれないから」
俺はオヤジさんの形見だという包丁を拾った。
するとまた別の声が響いた。
「警察が来てます。急いで逃げてください。」
氷室さんの声だ……って考えてる場合じゃない。
「三田村さん、アンタも逃げろ。この事態をサツに説明したら、アンタの嫌がらせも話さなきゃならなくなる。やつらに捕まるなよ。」
ヌードルスの店長は警察ていう言葉に震えあがったようだった。
汚れた床に散らばったプリントアウトをかき集めると、誰とも視線をあわせずに地下通路の暗がりに消えてしまった。
「君たち、待ちなさい!」
遠くから警察官の声が二重奏になって響いてきた。
俺は千夜にうなずいた。
「俺たちも消えよう。別々に逃げて、十分後に和龍に集合だ。」
それでおれたちは入り組んだ地下通路を三方向に散った。
この街の通りは、頭のなかに入っていた。
悠に無理やり教えられた警察から逃げるやり方100が役に立つときがくるとは思わなかった。
自慢できないのが、残念なくらいだ。
和龍に戻ったときには、既に千夜、琉翔、あずみはそろっていた。
千夜は水道で傷口を洗い、タオルで上腕部を止血していた。
あずみはカウンター席のまんなかで放心して座り込んでいる。
俺がさっき回収した包丁をまな板の上にそっと置くと千夜は口をひらい。
「…どうして、包丁なんかもちだした。」
あずみは宙を見たまま、ぼそりという。
「あいつが許せなかったから」
俺はカウンターの端に腰を降ろした。
あずみの方を見ずにいった。
「あずみは…あんなふうになることがときどきあるのか」
あずみの声は無表情なままだった。
「うん、スイッチがはいると自分でもなにをするかわからない」
琉翔がいった。
「それで初めて見る男を刺そうとおもったのか?」
「うん。だってあいつは悪いやつでしょう。刺されてもしょうがないよ」
千夜がいった。
「そりゃあ、別にあんなクズ刺されようがどうなろうがいいけどな……刺したテメェはどうなる。」
あずみは小さく笑った。
「いいよ。私なんてゴミみたいなもんだもん。あいつのいうとおり将来だってないし」
なんだかおかしい。
普段のあずみとそのときはまるで違っていた。
ものかげに隠れて菓子を口に押し込むあずみを思い出した。
俺はゆっくりといった。
「気にさわったら許してくれ。このまえあずみがコンビニの駄菓子を隠れて食べてるところを見たんだ。なんだかあのときのあずみはひどく悲しそうな目をしていたよ。それとなにか関係あるのか。この二週間一度もこの店のまかない飯だってくってないし。」
あずみは淋しそうに笑った。
「私、ちいさなころからそれでいつもいじめられていたんだ。みんなといっしょにものを食べれないから」