ー特別編ーWORLD・THE・Link【前】
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どうやら…男はヌードルスの関係者のようだった。
ビンゴ!実際の事件なんかいつだって、わかってみれば簡単なものだ。
東京ラーメン対東京ラーメンの予想どおりの闘い。
おれは男の背中を映した映像をデジカメの液晶画面で確認しながら、ヌードルスの行列の最後尾についた。
ここの行列はほかのところとはひと味違っていた。
だいたいラーメン屋の行列というのは男が圧倒的に多い。
女がまぎれこむことはあるが、ほとんどは男の連れの女だ。
だけど、ヌードルスの行列は七三で若い女のほうが多かった。
ガラスのウインドウ越しに店をのぞくと、ラーメン屋というよりエスプレッソスタンドのような造りだった。
カウンターは赤のピアノフィニッシュ、黒革のバースツール、うえから一席ごとにさがるのはヘアライン仕上げのアルミニウムのブランケットだ。
ハロゲンライトは豆粒くらいのおおきさ。
床は黒と白のタイルのチェッカー模様。
どこかのおしゃれなバーのようだった。
若いウエイターはソムリエのように黒いエプロンで細い腰を締め上げている。
太った男はいない。
明らかに女性むけのサービスだった。
行列は二十メートルは続いているだろうか。
行列専門家のおれは待ち時間を四十から四十五分と読んだ。
たっぷりと時間はあるので携帯のiモードでラーメンサイトに接続する。
サイト内検索で探すのはもちろん池袋東口のおしゃれなラーメン屋、ヌードルスだ。
おれはランキング六位を記録したという店の紹介コピーを読んだ。
ヌードルスの親会社は大手総合商社の外食部門だという。
最近あちこちで繁盛店を企画している有名なラーメンプロデューサー、大谷雅秀(おれはそんな肩書きがつくのは映画か音楽だけだど思っていた)の新作だそうだ。
どうりで新規開店する店の多くが似たり寄ったりな味なわけだ。
内装はまた別な有名デザイナーの作品で、席数は上下階をあわせてなんと百二十を超えている。
マックやスターバックスも顔負け。
池袋の目抜き通りに巨大な吹き抜けの路面店をだす。
それだけでもたいへんな資本を投下していることだろう。
おれは同じサイトのランキングをのぞいて、ちょっとびっくりした。
億を超える大資本をおごったヌードルスが六位で、開店資金はせいぜい数百万の和龍軒がちゃっかり八位にはいっている。
しかも赤丸つきで急上昇。
なるほど、これではヌードルスの誰かさんが頭にくるのも無理はなかった。
夜の八時まえに店内に案内された。
カウンターのむこうは厨房というよりぴかぴかに磨かれたステンレスのステージのようだった。
俺は長髪をうしろで束ねたハンサムなウエイターに一番人気とメニューに書いてあった。
海鮮ヴェジタブルヌードルスを頼んだ。
なんでラーメンをいちいち複数形で呼ばなければならないのだ。
アホらしい…
日焼けしたウエイターは妙にこじゃれた調子で下唇をちゃんとかんでVの発音をした。
多分悠がいたらすでに20は悪口を言っているだろう。