ー特別編ーWORLD・THE・Link【前】
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張り込み四日目のことだった。
相変わらず日差し強く東京の熱気が記録を更新した土曜日。
何度目かの行列に並んでいた。さすがに週末の夜で、短くなったとはいえ和龍の前にも交差点方向に十メートルはある立派な行列が出来ていた。
今日も収穫はなしかと思っていると、声だかになにかはなしながらカップルが腕を組んで通りすぎた。
男のほうがいう。
「こんな店によくならぶよな。インスタントのタレと科学調味料のダシなのに」
男は紺のスーツ姿だった。スーパーマンの俳優がかけていたような黒く四角いセルフレームのメガネに長めの前髪がかかっている。
女はOLではないようだ。
ピンクのノースリーブにゼブラ模様のスカート。
髪はトウモロコシのような黄色。
同伴出勤のキャバ嬢みたいだ。
派手な声で返事をする。
「ここってそんなにまずいの」
俺はポケットから無造作にデジタルカメラを取り出した。手のひらにすっぽり収まるおおきさ。
指の間から魚の目玉ほどのレンズをのぞかせてカップルを撮った。
女は携帯をだして画面を確認している。男が吐き出すようにいった。
「ギャングがやってる店だし、なにを仕込んでるかわからない。誰かの小指だったりしてな。」
もう嫌だー、キモいーといって、女が男の肩をたたいた。
カップルはそのまま東通りの奥に歩いていく。
俺は行列を離れてあとをおった。
何枚かうしろ姿も撮影する。雑司谷中学の塀のまえをグリーン大通りのほうに曲がっていくカップルのあとを、おれはすこし距離をおいてつけた。
男はその通りに新しくできた和歌山ラーメンの店のまえで立ち止まっていた。
客のいりやおもてに張り出されたメニューをしばらくながめている。
女がいった。
「もういいでしょう。狙いはあの店だけなんだから」
女は先に歩き出した。
手帳にメニューを写していた男はあわててあとをおう。
おれはラーメン専門の諜報部員のような男をあきれて見つめていた。
カップルがわかれたのは、サンシャイン60階通りだった。通りの反対側から見ているだけでも会話の内容はだいたい予想がついた。女は営業スマイルでいう。
「今度はお店のほうにも顔をだしてね」
だが、男のほうは一刻も早くその場を離れたそうだった。
そこはキャバクラとファッションヘルスばかりが入居したビルのまえで、歩道は七色のネオンサインで昼間のように明るく照らしだされている。
女がエレベーターに消えると、男は足早に池袋駅の方へ歩き出した。
強い北風のせいで駅のうえの夜空がやけに澄んでいた。
おれは背中を丸めて、週末の人混みのなかやつのうしろ姿をおった。
スーツ男は駅前のロータリーで左折して、明治通りを南池袋方向に歩いていく。
男はヌードルスの行列を顔をそむけてとおりすぎて、同じ建物の横手にあるエレベーターにのりこんだ。
エレベーターが三階でとまるのを確認して、おれはその場を離れた。
このビルはできたばかりの九階建てで、一、二階はラーメン屋がはいっている。
相変わらず日差し強く東京の熱気が記録を更新した土曜日。
何度目かの行列に並んでいた。さすがに週末の夜で、短くなったとはいえ和龍の前にも交差点方向に十メートルはある立派な行列が出来ていた。
今日も収穫はなしかと思っていると、声だかになにかはなしながらカップルが腕を組んで通りすぎた。
男のほうがいう。
「こんな店によくならぶよな。インスタントのタレと科学調味料のダシなのに」
男は紺のスーツ姿だった。スーパーマンの俳優がかけていたような黒く四角いセルフレームのメガネに長めの前髪がかかっている。
女はOLではないようだ。
ピンクのノースリーブにゼブラ模様のスカート。
髪はトウモロコシのような黄色。
同伴出勤のキャバ嬢みたいだ。
派手な声で返事をする。
「ここってそんなにまずいの」
俺はポケットから無造作にデジタルカメラを取り出した。手のひらにすっぽり収まるおおきさ。
指の間から魚の目玉ほどのレンズをのぞかせてカップルを撮った。
女は携帯をだして画面を確認している。男が吐き出すようにいった。
「ギャングがやってる店だし、なにを仕込んでるかわからない。誰かの小指だったりしてな。」
もう嫌だー、キモいーといって、女が男の肩をたたいた。
カップルはそのまま東通りの奥に歩いていく。
俺は行列を離れてあとをおった。
何枚かうしろ姿も撮影する。雑司谷中学の塀のまえをグリーン大通りのほうに曲がっていくカップルのあとを、おれはすこし距離をおいてつけた。
男はその通りに新しくできた和歌山ラーメンの店のまえで立ち止まっていた。
客のいりやおもてに張り出されたメニューをしばらくながめている。
女がいった。
「もういいでしょう。狙いはあの店だけなんだから」
女は先に歩き出した。
手帳にメニューを写していた男はあわててあとをおう。
おれはラーメン専門の諜報部員のような男をあきれて見つめていた。
カップルがわかれたのは、サンシャイン60階通りだった。通りの反対側から見ているだけでも会話の内容はだいたい予想がついた。女は営業スマイルでいう。
「今度はお店のほうにも顔をだしてね」
だが、男のほうは一刻も早くその場を離れたそうだった。
そこはキャバクラとファッションヘルスばかりが入居したビルのまえで、歩道は七色のネオンサインで昼間のように明るく照らしだされている。
女がエレベーターに消えると、男は足早に池袋駅の方へ歩き出した。
強い北風のせいで駅のうえの夜空がやけに澄んでいた。
おれは背中を丸めて、週末の人混みのなかやつのうしろ姿をおった。
スーツ男は駅前のロータリーで左折して、明治通りを南池袋方向に歩いていく。
男はヌードルスの行列を顔をそむけてとおりすぎて、同じ建物の横手にあるエレベーターにのりこんだ。
エレベーターが三階でとまるのを確認して、おれはその場を離れた。
このビルはできたばかりの九階建てで、一、二階はラーメン屋がはいっている。