ー特別編ーWORLD・THE・Link【前】
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俺はキャベツの芯をくず野菜のバットにのせた。
ここから甘くていいダシがでる。
「なんで多恵さんはラーメン屋をはじめたんだ。」
千夜はしばらく黙っていた。
作業を続けながら背中越しにいった。
「おふくろはラーメンの食べ歩きが趣味だったらしい。ある日押し入れを整理してたら、その包丁がでてきたらしい。その包丁を見てるだけで考えたそうだ。なにか店をやろう。…洋食は修行がたいへんだから、ラーメン屋をやろうって。一生の仕事なんていっても決めるときはその程度のもんだ。」
俺は新しいキャベツに千夜の親父さんが残してくれた包丁をいれた。
勝手に薄緑の葉が裂けていくようななめらかな手応え。
水でも切ってるようだ。
「あぁ…あと…今の話は全部悠と氷室さんに聞いた。悠のバカはわざわざ、個人的に調べてな…おふくろは俺に昔の話。特にオヤジの話はしない。いいけどな…俺も勝手してるし、別に興味もねぇ…。」
寸銅に汗を垂らしながら、千夜はいった。
そうやって色んなことを乗り越えて和龍軒の東京ラーメンができた。
ストリートギャングや不良と呼ばれた千夜を見直してしまう。
なにか冗談でもいって空気を軽くしようと顔をあげるとつかさが俺の肩を叩いた。
シンクの方を指差していたので見てみるとドンブリを洗いながらあずみが肩を震わせていた。
泣いているのだろうか。
俺はビックリして千夜の方を見た。
なにも泣くような話などなかったと思うのだが。
千夜もさすがに驚いてあずみを見ている。
「ごめんなさい。わたし涙もろいのかな。やっぱりこのお店っていいなあ。千夜さんが働いているところを、お父さんに見せてあげたかった。」
「……(ん?)」
俺は不思議に思って、手拭いで涙を拭いている女にいった。
「そっちのオヤジさんもなくなったのか」
あずみはテキパキとドンブリ洗いにもどった。
「生きてるとは思うけど、どこにいるのかはわからないです」
千夜が初めてアクをすくう手をとめた。
「履歴書にはオヤジさんの名前もあったはずだ」
あずみは泡を飛ばして荒っぽくドンブリを洗っている。
「戸籍上はそうだけど、あの人はほんとうの父親じゃありません」
あずみの背中が硬くなり、続きを拒否していた。
「どうゆ…」
千夜が更になにか言おうとしたが、俺は首をふった。
その間につかさが自然にほかのネタに話を移してくれた。
千夜は微妙な顔をしている。
この店の恋する乙女の相手の神経の扱いは難しい。
悠じゃないけど、千夜ももう少し、彼女のことを気にかけてやったらいいと思った。
もちろん、口には出さないが。
俺は頭のなかであずみの事を整理しながら新しいキャベツをとった。
本日四つめのキャベツに包丁をいれた。
ここから甘くていいダシがでる。
「なんで多恵さんはラーメン屋をはじめたんだ。」
千夜はしばらく黙っていた。
作業を続けながら背中越しにいった。
「おふくろはラーメンの食べ歩きが趣味だったらしい。ある日押し入れを整理してたら、その包丁がでてきたらしい。その包丁を見てるだけで考えたそうだ。なにか店をやろう。…洋食は修行がたいへんだから、ラーメン屋をやろうって。一生の仕事なんていっても決めるときはその程度のもんだ。」
俺は新しいキャベツに千夜の親父さんが残してくれた包丁をいれた。
勝手に薄緑の葉が裂けていくようななめらかな手応え。
水でも切ってるようだ。
「あぁ…あと…今の話は全部悠と氷室さんに聞いた。悠のバカはわざわざ、個人的に調べてな…おふくろは俺に昔の話。特にオヤジの話はしない。いいけどな…俺も勝手してるし、別に興味もねぇ…。」
寸銅に汗を垂らしながら、千夜はいった。
そうやって色んなことを乗り越えて和龍軒の東京ラーメンができた。
ストリートギャングや不良と呼ばれた千夜を見直してしまう。
なにか冗談でもいって空気を軽くしようと顔をあげるとつかさが俺の肩を叩いた。
シンクの方を指差していたので見てみるとドンブリを洗いながらあずみが肩を震わせていた。
泣いているのだろうか。
俺はビックリして千夜の方を見た。
なにも泣くような話などなかったと思うのだが。
千夜もさすがに驚いてあずみを見ている。
「ごめんなさい。わたし涙もろいのかな。やっぱりこのお店っていいなあ。千夜さんが働いているところを、お父さんに見せてあげたかった。」
「……(ん?)」
俺は不思議に思って、手拭いで涙を拭いている女にいった。
「そっちのオヤジさんもなくなったのか」
あずみはテキパキとドンブリ洗いにもどった。
「生きてるとは思うけど、どこにいるのかはわからないです」
千夜が初めてアクをすくう手をとめた。
「履歴書にはオヤジさんの名前もあったはずだ」
あずみは泡を飛ばして荒っぽくドンブリを洗っている。
「戸籍上はそうだけど、あの人はほんとうの父親じゃありません」
あずみの背中が硬くなり、続きを拒否していた。
「どうゆ…」
千夜が更になにか言おうとしたが、俺は首をふった。
その間につかさが自然にほかのネタに話を移してくれた。
千夜は微妙な顔をしている。
この店の恋する乙女の相手の神経の扱いは難しい。
悠じゃないけど、千夜ももう少し、彼女のことを気にかけてやったらいいと思った。
もちろん、口には出さないが。
俺は頭のなかであずみの事を整理しながら新しいキャベツをとった。
本日四つめのキャベツに包丁をいれた。