ー特別編ーWORLD・THE・Link【前】
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「本当よ。だから、私がここに居るのよ。」
「もしかして、禅君の代役か?」
「えぇ。けど、代役じゃなく、場所を借りてるだけ。しっかり稼いでるわ。」
「へぇ…組んでる訳じゃないのか。」
「仕事仲間ではあるけど、切るところはちゃんと切ってるのよ。そういう仲なら互いに不可侵条約が守られるからね。」
稲葉が言ってる事はよくわからないがとりあえず稲葉と禅君は仲がいいのだろう。
「それで、禅君を訪ねるって事はなにかあったのかしら。よかったら話聞くわよ。」
稲葉はパソコンから目を離して、白のノースリーブのブラウスに包まれたつつましい胸を向けた。
俺は少し悩んだが、USBをテーブルにおいた。
稲葉はニコッと営業スマイルを見せてから、ノートパソコンにUSBをさしこんだ。
「そういえば、今日は一人なのね。」
「ちょっと、色々あってな。」
稲葉はマウスでさっさとUSBをひらいて、画面を見つめている。
俺は和龍軒の営業妨害の件を説明した。
稲葉は途中で遮った。
「わかったわ。どこかのサイトにコレが火をつけたら、アナタに知らせればいいのね。それでやつが接続してるコンピューターの位置を教える」
さすがに北東京一のハッカーの仕事仲間だった。
俺が思ってた考えより上をいく。
「それでいい。さすがにのみこみが早いな。」
稲葉はつまらなそうにいった。
「日本人の半分がネットにつながって、私や禅君にくる仕事のほとんどがこの手のクズ仕事になってるわ。たいていの犯人は根性のない愉快犯ね。待ってて」
そういうと稲葉はなにか新しいソフトを画面に呼び出した。
前髪をサッとかき分けて俺をまっすぐ見つめながら、キーボードを叩く
「キーワードは池袋東口、ラーメン、和龍軒でいいかしら」
俺にはなにがなんだかわからなかった。素直にそういうと。
クスリと笑って稲葉はいった。
「これは私と禅君がつくった自動追尾ソフトなの。あちこちのサイトをクモみたいに這いまわってキーワードをふくんだ書き込みに反応するわ。それで私にサイトと書き込みのあったコンピューターのアドレスを教えてくれるのよ。」
俺にとってコンピューターというのはメール、ワープロ、ネットだけにすぎない。
生き物みたいに動くソフトなんか想像も出来なかった。
「キーワードはいくつあってもいいのか。」
稲葉は退屈そうにうなずいた。おれはいった。
「じゃぁ、科学調味料とか、ストリートギャングとか、鶏ペストなんてどうかな。」
彼女は一日に何杯のんでいるのかわからない珈琲を一口すすった。
「やめておいたほうがいいわ。たくさんの言葉を使えばなにか重要な情報が手に入るなんてのは素人の考えよ。実際には引っかかるページが多くなりすぎて手に終えなくなるわ。」
なんだか文章を書くコツと同じだった。
数少ない言葉でいかに大切なことを伝えるか。
それが最初にできなきゃ、無限の語彙(ごい)も持ち腐れってな。