ー特別編ーWORLD・THE・Link【前】
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通りを入ってしばらくすると、和龍軒の看板が歩道の上に見えた。
けど、おかしなことにいつもなら最低五、六にんは並んでいるはずの行列の姿がない。
「なぁ、悠…」
「ああ。変だな。」
不思議に思い。
俺たちはさらに一方通行の通りを奥にはいった。
ラーメン戦争そのものがなくなっているのだろうか。
しかし通りのむかいの二天はしっかり十数人の行列ができている。
俺たちはは通りに戻って、店ののれんをくぐった。
ー和龍軒ー
「ちわっ。」「どうも」
カウンター席が一列に十二ならぶシンプルな作りの店内で、中ほどのスツールに腰かけた銀髪に冷たい目をした虎琥狗崇さんと縁の細い眼鏡をかけた氷室薫さんがいる。
「来たか座れ。」
「どうも、悠さん。それと…中山ともきくんでしたよね。どうぞ、掛けてください。」
冷たく鋭い言葉とやわらかい言葉が同時に聞こえた。
悠は崇さん側に、俺は氷室さん側に座る。
「お前らもきづいたか。」
ほんのひと月まえの盛況を知っていれば、誰でもわかることだった。
悠は短くうなずいた。
「ああ。」
「行列がきれいにきえてるな。」
俺はカウンターの向こうの厨房に立つ、和辰君にうなずきかけた。
いつものオールバックの髪にしっかりと手拭いをまいていて、汗だくになっている。
悠がグツグツと煮え立つスープを見ながらいった。
「別に仕込みで手を抜いてるわけじゃないんだろ」
腕を組んでいた和辰君がスッと目を細めて俺を見たあと悠を見た。
「ああ、毎日ちゃんと東京シャモの丸鶏を七時間煮込んでる」
和辰君はうんざりした表情で頭をかいた。
崇さんがスッと俺と悠の間にノートパソコンを滑らせた。
「開いて見ろ。」
悠はスープに夢中なので、俺がパソコンを開いて見ると、液晶画面に浮かぶのはどこかのラーメンサイトのスレッドだった。
延々と続く横書きの文章のなかに、その悪口がぱらぱらと散っていた。
[池袋東口・和龍軒のスープには科学調味料が、舌がしびれるくらいどっさりはいってる]
[和龍のトリガラは鶏ペストで死んだ病気の鶏だ]
[最近池袋では夜になると金もちの飼い犬が消えるそうだ。和龍軒の硬い角煮ははもしかして、セントバーナード?]
[和龍軒の店員は前科もちのストリートギャング。あそこは池袋初のぼったくりラーメン屋だって噂]
[和龍は逝ってよし!!]
俺はディスプレイから目をあげた。
どれもこれも悪意に満ちた嫌がらせだった。
書き込んだやつのハンドルネームは、ドクター・ラーメン。ふざけたアホだ。
氷室さんがいった。
「ひどいでしょう。ホームページの管理人にいって削除させていますが、残念ながらソイツは名前を変えて何度もしつこく書き込みをしています。いたちごっこですよ。」
けど、おかしなことにいつもなら最低五、六にんは並んでいるはずの行列の姿がない。
「なぁ、悠…」
「ああ。変だな。」
不思議に思い。
俺たちはさらに一方通行の通りを奥にはいった。
ラーメン戦争そのものがなくなっているのだろうか。
しかし通りのむかいの二天はしっかり十数人の行列ができている。
俺たちはは通りに戻って、店ののれんをくぐった。
ー和龍軒ー
「ちわっ。」「どうも」
カウンター席が一列に十二ならぶシンプルな作りの店内で、中ほどのスツールに腰かけた銀髪に冷たい目をした虎琥狗崇さんと縁の細い眼鏡をかけた氷室薫さんがいる。
「来たか座れ。」
「どうも、悠さん。それと…中山ともきくんでしたよね。どうぞ、掛けてください。」
冷たく鋭い言葉とやわらかい言葉が同時に聞こえた。
悠は崇さん側に、俺は氷室さん側に座る。
「お前らもきづいたか。」
ほんのひと月まえの盛況を知っていれば、誰でもわかることだった。
悠は短くうなずいた。
「ああ。」
「行列がきれいにきえてるな。」
俺はカウンターの向こうの厨房に立つ、和辰君にうなずきかけた。
いつものオールバックの髪にしっかりと手拭いをまいていて、汗だくになっている。
悠がグツグツと煮え立つスープを見ながらいった。
「別に仕込みで手を抜いてるわけじゃないんだろ」
腕を組んでいた和辰君がスッと目を細めて俺を見たあと悠を見た。
「ああ、毎日ちゃんと東京シャモの丸鶏を七時間煮込んでる」
和辰君はうんざりした表情で頭をかいた。
崇さんがスッと俺と悠の間にノートパソコンを滑らせた。
「開いて見ろ。」
悠はスープに夢中なので、俺がパソコンを開いて見ると、液晶画面に浮かぶのはどこかのラーメンサイトのスレッドだった。
延々と続く横書きの文章のなかに、その悪口がぱらぱらと散っていた。
[池袋東口・和龍軒のスープには科学調味料が、舌がしびれるくらいどっさりはいってる]
[和龍のトリガラは鶏ペストで死んだ病気の鶏だ]
[最近池袋では夜になると金もちの飼い犬が消えるそうだ。和龍軒の硬い角煮ははもしかして、セントバーナード?]
[和龍軒の店員は前科もちのストリートギャング。あそこは池袋初のぼったくりラーメン屋だって噂]
[和龍は逝ってよし!!]
俺はディスプレイから目をあげた。
どれもこれも悪意に満ちた嫌がらせだった。
書き込んだやつのハンドルネームは、ドクター・ラーメン。ふざけたアホだ。
氷室さんがいった。
「ひどいでしょう。ホームページの管理人にいって削除させていますが、残念ながらソイツは名前を変えて何度もしつこく書き込みをしています。いたちごっこですよ。」