俺は赤坂の料亭(!)で、宮崎課長に接待を受けた。
当然、大垣のオヤジといっしょだ。

ハルナと違ってやけに立派な警察官だったが、ハルナの育て方を間違ったといった時は、少し涙ぐんでいた。

だが、子供の育て方ほど、こんなんで未来が予測しがたいものもない。

うちだって、父親はさんざん同じことをいっていたものだ。

だが、すくなくとも、俺は池袋では有名人だし、さして道を踏み外してもいない。
それどころか、なかなかの頭脳派なのだ。
そいつは俺がやってきたことを見ててくれた、アンタにだってわかるだろ。






タカシと将也とはSウルフの集会が終わった後で、ラスタで呑んだ。

王は酒を水のようにのみ、決して乱れない。

「悠、あの大垣とかいう柔道家にスパーリングを申し込めないか。」

とんでもないことを考える王様。

「俺とあの男では体重差が五十キロ近くあるはずだ。俺のこぶしとスピードがどれくらい通用するのか、オリンピック級の選手と試してみたい。」

将也はかるくいった。

「悠が投げとはされて手も足も出なかったブルドックとキングのカードか…見たいな。」

「誰が手も足も出なかっただよ…。わかった。連絡しておく」

俺はバーカウンターに肘をついて、空想してみた。

背負い投げを喰らうキングの姿だ。
この男もたまにはボロボロにされた方がいいのかもしれない。
傷つかないと人間は成長しないというからな。

俺の方は肉体的な苦痛に関しては、もうけっこう。
こちらの仕事はヘッドワークだし、大事なのはコミュニケーション能力。

精神の苦悩については、俺だって青春の悩みって奴が山のようにある。
日々成長するトラブルシューターなのだ。

でも、アンタだって決して焦ることはないよ。

あの元警官を見てわかるように、人は定年を過ぎたってあれだけ動けるのだ。

慌てて成長する必要なんかない。
そう思うと日々安らかな気分で過ごせるだろ?




ｰ哀愁ブルドック・完ｰ