ー特別編ー哀愁ブルドック
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公園にもどって、大垣と将也と合流した。
「話は聞いていた。だが、あの程度でよかったのかな。もう少しきついお灸を据えてやったほうが、池本のためだとも思うんだか」
それは確かに、そのとおり。つぎつぎと女とつきあい、つぎつぎとヌード写真で脅しをかける。
その手の男には罰をあたえた方がいいのかもしれない。
将也がいった。
「でも、ハルナのことを全部、秘密にしておきたいんだろ。だったら、あのくらいでしょうがないよ。普通の男だったら、絶対二度とハルナに近づかないと思う。」
大垣はビルのあいだに広がる池袋の狭い秋空を見上げていった。
「なあ、悠、わたしは六十年以上生きてるうちに、その普通ってやつがなんだかよくわからんようになったよ。お前らのいう普通と、お嬢さんの普通と池本の普通、みんなそれぞれ別なんだろうな。」
老いぼれグマに一票。
そいつは俺も大人になるたびに感じてきたことだった。
逆にいえば、普通であることほどオリジナリティあふれている状態はないのかもしれない。
大垣が立ちあがった。
俺に手を差し出す。
「ありがとう。悠、将也、よくやってくれた。」
しっかりとにぎって返した。
「いいや、いつものことだ。それほどでもない」
おれたちは夕焼けの空のしたで別れた。
トンボは透明な羽をしならせて、都心の公園でも飛んでいる。
爽やかないいエンディングだと、そのときの俺はおもっていたのだ。
誰だって「普通」に間違えるときがあるよな。
真夜中に電話がかかってきたのは三日後だった。
こんな時間に誰だ。
腹がたつ。
俺は寝ぼけたまま携帯にでた。
「はい、なんだ」
きき覚えのあるかん高い声。
『俺だよ、カズマだよ』
どうやって、おれの番号を調べたのだろう。
困ったものだ。
やつはきっと普通以下だったに違いない。
『お前はハルナの男じゃなくて、Sウルフのメンバーでもなかったんだな。よくもあんな嘘をついて、俺を脅してくれたな』
ごろごろとのどに痰が絡んだような笑い声が聞こえた。
真夜中にきくには、なかなかうれしい音。
俺はいった。
「お前の間抜け振りは相変わらずだな」
鼻で笑って、カズマはいった。今回はやけに余裕があるみたいだ。
『そういっていられるのも今のうちだ。ちょっと声をきかせてやるよ』
がさがさと携帯がなにかに擦れる音がして、いきなり悲鳴があふれだした。
『もうー、やめてよ、変態。気持ち悪いんだから』
ハルナの声だった。
俺は叫んでいた。
「やめろ、カズマ。ハルナになにをしてる?」
うっとりと酔った声でカズマはいった。
『痛くて、いいことだよ。お前だって、この女が変態だって知ってるだろう。』
目覚めたばかりの腹のなかで怒りが沸騰していく。
声を抑えるのがきつかった。
「話は聞いていた。だが、あの程度でよかったのかな。もう少しきついお灸を据えてやったほうが、池本のためだとも思うんだか」
それは確かに、そのとおり。つぎつぎと女とつきあい、つぎつぎとヌード写真で脅しをかける。
その手の男には罰をあたえた方がいいのかもしれない。
将也がいった。
「でも、ハルナのことを全部、秘密にしておきたいんだろ。だったら、あのくらいでしょうがないよ。普通の男だったら、絶対二度とハルナに近づかないと思う。」
大垣はビルのあいだに広がる池袋の狭い秋空を見上げていった。
「なあ、悠、わたしは六十年以上生きてるうちに、その普通ってやつがなんだかよくわからんようになったよ。お前らのいう普通と、お嬢さんの普通と池本の普通、みんなそれぞれ別なんだろうな。」
老いぼれグマに一票。
そいつは俺も大人になるたびに感じてきたことだった。
逆にいえば、普通であることほどオリジナリティあふれている状態はないのかもしれない。
大垣が立ちあがった。
俺に手を差し出す。
「ありがとう。悠、将也、よくやってくれた。」
しっかりとにぎって返した。
「いいや、いつものことだ。それほどでもない」
おれたちは夕焼けの空のしたで別れた。
トンボは透明な羽をしならせて、都心の公園でも飛んでいる。
爽やかないいエンディングだと、そのときの俺はおもっていたのだ。
誰だって「普通」に間違えるときがあるよな。
真夜中に電話がかかってきたのは三日後だった。
こんな時間に誰だ。
腹がたつ。
俺は寝ぼけたまま携帯にでた。
「はい、なんだ」
きき覚えのあるかん高い声。
『俺だよ、カズマだよ』
どうやって、おれの番号を調べたのだろう。
困ったものだ。
やつはきっと普通以下だったに違いない。
『お前はハルナの男じゃなくて、Sウルフのメンバーでもなかったんだな。よくもあんな嘘をついて、俺を脅してくれたな』
ごろごろとのどに痰が絡んだような笑い声が聞こえた。
真夜中にきくには、なかなかうれしい音。
俺はいった。
「お前の間抜け振りは相変わらずだな」
鼻で笑って、カズマはいった。今回はやけに余裕があるみたいだ。
『そういっていられるのも今のうちだ。ちょっと声をきかせてやるよ』
がさがさと携帯がなにかに擦れる音がして、いきなり悲鳴があふれだした。
『もうー、やめてよ、変態。気持ち悪いんだから』
ハルナの声だった。
俺は叫んでいた。
「やめろ、カズマ。ハルナになにをしてる?」
うっとりと酔った声でカズマはいった。
『痛くて、いいことだよ。お前だって、この女が変態だって知ってるだろう。』
目覚めたばかりの腹のなかで怒りが沸騰していく。
声を抑えるのがきつかった。