ー特別編ー哀愁ブルドック
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俺たちがはいったのは西口ロータリーにあるマクドナルド。
二十四時間営業で、こんな時間でも半分の席は埋まっていた。
クマは俺のまえにアイスコーヒーをおいた。
窓の外にはタクシーの列だけが長い、寂しい駅前広場が広がっている。
都心というより、どこかの地方都市の駅前のようだった。
池袋の街はちいさいし、東京を洗う再開発の波もわずかしか及んでいない。
それが俺としては、いい感じなんだけど。
クマはホットコーヒーをひと口のむと、不機嫌そうにいった。
「わたしは大垣忠孝という。見てのとおり、元警官だ。現役のころの上司は宮崎裕史警備課長だった」
「ハルナのおやじさんか」
大垣は自慢気に胸を張った。
「そうだ。宮崎課長は警視庁柔道部では後輩だが、仕事のうえでは上司だった。ノンキャリアだが、警視正どころか、いつか警視長にでもなれる人だ。それで、今回…」
普段夜の長い俺でも今日は眠くてしかたかったが、あわてて元警官をとめた。
「ちょっと待ってくれ。おれはハルナから、恐喝の件はおやじさんに絶対ないしょだといわれてる。なんで、その課長があんたに捜査を頼んだんだ」
大垣は渋い顔をした。
「課長のところにも、写メールが送られてきた」
「そいつはハルナが縛られてるやつか」
腕っぷしは強くても、昔の男だった。
元警官はマックのなかをきょろきょろと見まわした。
「そんなことをおおきな声でいうものじゃない。お嬢さんは、まだ嫁入りまえだぞ」
乳首をクリップではさまれてよろこんでいる嫁入りまえか。
時代は変わったものだ。
俺はそれでもぜんぜん問題ないと思うけどね。
「じゃあ、ハルナのおやじさんは恐喝事件のことはしってるんだな」
「そうだ」
考えてみたら、おかしなものだった。
ハルナはおやじさんに黙ったままなんとか事件を解決しようと、俺に依頼した。
おやじさんのほうは、ハルナに秘密にしたまま、昔の部下をつけた。
ハルナはさんざん父親の悪口をいっていたが、案外お互いのことを思いあっているいい父娘じゃないか。
「仮にだけど、娘のこういうスキャンダルがばれたら、警察のなかでのおやじさんの立場はどうなるんだ」
小山がうねるように僧帽筋が盛り上がった。
大垣は全身に力をためて、冴えない顔をする。
「そこで昇進はストップだろうな。もううえの目はなくなる。警察は減点主義だ」
俺は目の前にいる大男をもう一度観察した。
この際、この男の手を借りるのもいいかもしれない。
俺よりも恐喝男をびびらせるには適役だろう。
「ところで、さっきの投げ技大したものだったけど、大垣さんって若いころは強かったんだよな。」
元警官は鼻の穴をふくらませ、胸を張った。
「ミュンヘンオリンピック柔道無差別級の指定強化選手だった。選考会では決勝で負けてしまったがな」
なるほど、六十代でもぬいぐるみのように軽く人を投げられるわけである。
二十四時間営業で、こんな時間でも半分の席は埋まっていた。
クマは俺のまえにアイスコーヒーをおいた。
窓の外にはタクシーの列だけが長い、寂しい駅前広場が広がっている。
都心というより、どこかの地方都市の駅前のようだった。
池袋の街はちいさいし、東京を洗う再開発の波もわずかしか及んでいない。
それが俺としては、いい感じなんだけど。
クマはホットコーヒーをひと口のむと、不機嫌そうにいった。
「わたしは大垣忠孝という。見てのとおり、元警官だ。現役のころの上司は宮崎裕史警備課長だった」
「ハルナのおやじさんか」
大垣は自慢気に胸を張った。
「そうだ。宮崎課長は警視庁柔道部では後輩だが、仕事のうえでは上司だった。ノンキャリアだが、警視正どころか、いつか警視長にでもなれる人だ。それで、今回…」
普段夜の長い俺でも今日は眠くてしかたかったが、あわてて元警官をとめた。
「ちょっと待ってくれ。おれはハルナから、恐喝の件はおやじさんに絶対ないしょだといわれてる。なんで、その課長があんたに捜査を頼んだんだ」
大垣は渋い顔をした。
「課長のところにも、写メールが送られてきた」
「そいつはハルナが縛られてるやつか」
腕っぷしは強くても、昔の男だった。
元警官はマックのなかをきょろきょろと見まわした。
「そんなことをおおきな声でいうものじゃない。お嬢さんは、まだ嫁入りまえだぞ」
乳首をクリップではさまれてよろこんでいる嫁入りまえか。
時代は変わったものだ。
俺はそれでもぜんぜん問題ないと思うけどね。
「じゃあ、ハルナのおやじさんは恐喝事件のことはしってるんだな」
「そうだ」
考えてみたら、おかしなものだった。
ハルナはおやじさんに黙ったままなんとか事件を解決しようと、俺に依頼した。
おやじさんのほうは、ハルナに秘密にしたまま、昔の部下をつけた。
ハルナはさんざん父親の悪口をいっていたが、案外お互いのことを思いあっているいい父娘じゃないか。
「仮にだけど、娘のこういうスキャンダルがばれたら、警察のなかでのおやじさんの立場はどうなるんだ」
小山がうねるように僧帽筋が盛り上がった。
大垣は全身に力をためて、冴えない顔をする。
「そこで昇進はストップだろうな。もううえの目はなくなる。警察は減点主義だ」
俺は目の前にいる大男をもう一度観察した。
この際、この男の手を借りるのもいいかもしれない。
俺よりも恐喝男をびびらせるには適役だろう。
「ところで、さっきの投げ技大したものだったけど、大垣さんって若いころは強かったんだよな。」
元警官は鼻の穴をふくらませ、胸を張った。
「ミュンヘンオリンピック柔道無差別級の指定強化選手だった。選考会では決勝で負けてしまったがな」
なるほど、六十代でもぬいぐるみのように軽く人を投げられるわけである。