ー特別編ー哀愁ブルドック
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だが、トラブルが続く日というのは、雲のうえに居る誰かさんがそう簡単には許してくれないものだ。
近道をしようとホテル街の路地に入ったところで、目のまえに黒い小山のような男が立ちふさがった。
いったい誰なんだろう。
事件を引き受けたばかりで、もうカズマから狙われたのか。
俺たちが驚いていると、おおきな男がすたすたと摺り足で近づいてきた。
「お前が池本か!」
腹から低い声をだす。
違うと叫ぼうとしたら、シャツの襟首を掴まれた、しかも奥襟だ。
とんでもない握力。
絞り上げられただけで身動きができなくなった。
そのまま振り回された。
気がつくと天と地がさかさまになっている。
体落としだ。
あまりに切れ味が鋭いので、投げられたという気がしない。
地面に投げつけられていたら、そのまま病院おくりだろうが、男は引き付けを解かなかった。
アスファルトに伸びた俺のうえに、男が馬乗りになった。
重い。小型トラックに乗られたようだ。
男はギリギリと襟元を締め上げてくる。
「おまえが池本だろう。はるなさんになにをした」
ひどくでかい男だが、よく見ると髪は半分白かった。六十代だろうか。
けれども身体の厚みは俺の倍くらいはある。
俺は男の腕をタップしていった。
「……人違いだ。なんなら、ハルナに電話してくれ。俺は小鳥遊悠だ。なぁ?」
少し離れた位置で将也は警戒しながらいった。
「あぁ。アンタの勘違いだ。離してやってくれ。」
男は俺の目を見た。
当たり前の話だが、俺が別れた女を脅迫するような下品な人間ではないと、ようやく気づいたようだった。
身体からおりると俺を助け起こし、直立不動で頭をさげた。
「すまない。ついあせってしまった。怪我はないか?」
別にケガをしたところは無いと思っていた。
けれども、地面に勢いよくあたった左足のふくらはぎねの外側が痛みだした。
心臓の鼓動にあわせて、ずきずきと主張している。
「大したことはないけど、足がいたいな」
初老の男はまったく気にしていないようだった。
「そうか、すまんな。ところで、アンタらははるなさんとどういう関係だ。」
さんざんな一日のあと、真っ暗な路地で年老いたクマと対峙する。
俺の気分も考えて見てほしい。
このクマが敵か味方かもわからないのだ。
俺は慎重にいった。
また体落としをくらうのは勘弁してほしい。
「あるトラブルにハルナが巻き込まれて、俺とコイツがソレを解決するように依頼を受けた」
男は腕を組んだ。
「なんだ、君達はそんな格好をしているが探偵なのか」
「いや、探偵じゃないよ。金もとらないし、プロじゃない。」
男はジロジロと俺と将也の頭からつま先まで遠慮なく視線でさぐった。
俺は別に凶器などもってはいないのだが、自分がテロリストにでもなった気がする。
「だが、アンタならクラブというのか、ああした場所に集まる若い人間のことにも詳しそうだな。ちょっと話がある。顔を貸してくれないか」
池本も深夜二時の丑三つ時だった。
俺は自分の部屋のベッドが恋しい。
「これから?」
「そうだ。明日になれば、また状況が変わるかもしれん」
とことんつきのない夜だった。
俺は将也を先に帰して、とぼとぼ背中を丸め、異様に姿勢のいい初老のクマのあとをついていった。
近道をしようとホテル街の路地に入ったところで、目のまえに黒い小山のような男が立ちふさがった。
いったい誰なんだろう。
事件を引き受けたばかりで、もうカズマから狙われたのか。
俺たちが驚いていると、おおきな男がすたすたと摺り足で近づいてきた。
「お前が池本か!」
腹から低い声をだす。
違うと叫ぼうとしたら、シャツの襟首を掴まれた、しかも奥襟だ。
とんでもない握力。
絞り上げられただけで身動きができなくなった。
そのまま振り回された。
気がつくと天と地がさかさまになっている。
体落としだ。
あまりに切れ味が鋭いので、投げられたという気がしない。
地面に投げつけられていたら、そのまま病院おくりだろうが、男は引き付けを解かなかった。
アスファルトに伸びた俺のうえに、男が馬乗りになった。
重い。小型トラックに乗られたようだ。
男はギリギリと襟元を締め上げてくる。
「おまえが池本だろう。はるなさんになにをした」
ひどくでかい男だが、よく見ると髪は半分白かった。六十代だろうか。
けれども身体の厚みは俺の倍くらいはある。
俺は男の腕をタップしていった。
「……人違いだ。なんなら、ハルナに電話してくれ。俺は小鳥遊悠だ。なぁ?」
少し離れた位置で将也は警戒しながらいった。
「あぁ。アンタの勘違いだ。離してやってくれ。」
男は俺の目を見た。
当たり前の話だが、俺が別れた女を脅迫するような下品な人間ではないと、ようやく気づいたようだった。
身体からおりると俺を助け起こし、直立不動で頭をさげた。
「すまない。ついあせってしまった。怪我はないか?」
別にケガをしたところは無いと思っていた。
けれども、地面に勢いよくあたった左足のふくらはぎねの外側が痛みだした。
心臓の鼓動にあわせて、ずきずきと主張している。
「大したことはないけど、足がいたいな」
初老の男はまったく気にしていないようだった。
「そうか、すまんな。ところで、アンタらははるなさんとどういう関係だ。」
さんざんな一日のあと、真っ暗な路地で年老いたクマと対峙する。
俺の気分も考えて見てほしい。
このクマが敵か味方かもわからないのだ。
俺は慎重にいった。
また体落としをくらうのは勘弁してほしい。
「あるトラブルにハルナが巻き込まれて、俺とコイツがソレを解決するように依頼を受けた」
男は腕を組んだ。
「なんだ、君達はそんな格好をしているが探偵なのか」
「いや、探偵じゃないよ。金もとらないし、プロじゃない。」
男はジロジロと俺と将也の頭からつま先まで遠慮なく視線でさぐった。
俺は別に凶器などもってはいないのだが、自分がテロリストにでもなった気がする。
「だが、アンタならクラブというのか、ああした場所に集まる若い人間のことにも詳しそうだな。ちょっと話がある。顔を貸してくれないか」
池本も深夜二時の丑三つ時だった。
俺は自分の部屋のベッドが恋しい。
「これから?」
「そうだ。明日になれば、また状況が変わるかもしれん」
とことんつきのない夜だった。
俺は将也を先に帰して、とぼとぼ背中を丸め、異様に姿勢のいい初老のクマのあとをついていった。