ー特別編ー哀愁ブルドック
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池袋にも、六本木や渋谷ほどではないがクラブはある。
ハードコアはテクノ系のダンスミュージックとパンクロックの境界線上のいかした音楽をかけるなかなかいかした箱。
俺は将也と軽く飯を食ったあとで、一緒に西口の線路わきにあるクラブに向かった。
本格的な秋になっても東京の夏の終わりのあたたかさ。
長袖のシャツ一枚でも汗ばむほどだった。
ホテル階のあちこちに空室のネオンサインが灯っていた。
人影はなくひっそりしている。
地下に降りるクラブの階段の周辺だけ、ガキが集まってときどき奇声をあげていた。
おかしな薬でもやっているのかもしれない。
合法のクスリでもいかれた使い方が山のようにあるからな。
依頼人らしい女は見当たらなかった。
俺たちは駐車場の端で灯台のようにまぶしい自動販売機の横に立ち、女をまった。
携帯の時計を確かめる。
十二時ちょうど。
そのまま、五分に一度、携帯を開くこと四回目。
そろそろ帰ろうかと思っていると将也がいった。
「悠、あれじゃないか?」
ふらふらした足取りで細い影が階段を上がってきた。
女は周囲をきょろきょろと見回している。
俺に気づいたようだ。
まっすぐにこちらに向かってきた。
俺は女を観察した。
身長は百七十近く。
ひどくというより、病的に細い。黒のホットパンツはもうすこしでショーツが見えそうなくらい短かった。
膝のなかばまであるストッキングは流行りのシルバーだ。
パンツから下がって揺れているのはガーターベルトのストラップのようだった。うえはノースリーブのシルバーのTシャツ。
綱引きに使えそうなくらいの長さのマフラーを巻いている。
全体としては不健康な歩くマネキンというところか。
すると女は、きゃははと笑って俺に手を振り、道路のまんなかでつまずいて、盛大な笑い声をあげたまま四つん這いになった。
俺は思わず口のなかでつぶやいた。
「……おいおい」
そのまま帰ろうかと思った。だが、女は転んだくらいでは平気なようだった。
両手をアスファルトについたまま、声をかけてくる。
「あんたら、どっちかが悠さんでしょう」
違うといえば良かったのだが、俺は根が正直だ。
「俺が小鳥遊悠だ。こっちは……助手」
隣にいた将也はえっ?という顔をした。
このままコイツだけ逃がしてなるものか。
俺は脇腹を肘でついた。
「えと、俺は星崎将也。そっちは誰だ。今夜何杯飲んだんだ」
「わかんなーい」
女はやけになって笑うと、池袋の月のない夜空に顔を向けた。
汗で化粧はどろどろ。
最悪の登場だ。
これではいいラブストーリーになるはずも無かった。
ハードコアはテクノ系のダンスミュージックとパンクロックの境界線上のいかした音楽をかけるなかなかいかした箱。
俺は将也と軽く飯を食ったあとで、一緒に西口の線路わきにあるクラブに向かった。
本格的な秋になっても東京の夏の終わりのあたたかさ。
長袖のシャツ一枚でも汗ばむほどだった。
ホテル階のあちこちに空室のネオンサインが灯っていた。
人影はなくひっそりしている。
地下に降りるクラブの階段の周辺だけ、ガキが集まってときどき奇声をあげていた。
おかしな薬でもやっているのかもしれない。
合法のクスリでもいかれた使い方が山のようにあるからな。
依頼人らしい女は見当たらなかった。
俺たちは駐車場の端で灯台のようにまぶしい自動販売機の横に立ち、女をまった。
携帯の時計を確かめる。
十二時ちょうど。
そのまま、五分に一度、携帯を開くこと四回目。
そろそろ帰ろうかと思っていると将也がいった。
「悠、あれじゃないか?」
ふらふらした足取りで細い影が階段を上がってきた。
女は周囲をきょろきょろと見回している。
俺に気づいたようだ。
まっすぐにこちらに向かってきた。
俺は女を観察した。
身長は百七十近く。
ひどくというより、病的に細い。黒のホットパンツはもうすこしでショーツが見えそうなくらい短かった。
膝のなかばまであるストッキングは流行りのシルバーだ。
パンツから下がって揺れているのはガーターベルトのストラップのようだった。うえはノースリーブのシルバーのTシャツ。
綱引きに使えそうなくらいの長さのマフラーを巻いている。
全体としては不健康な歩くマネキンというところか。
すると女は、きゃははと笑って俺に手を振り、道路のまんなかでつまずいて、盛大な笑い声をあげたまま四つん這いになった。
俺は思わず口のなかでつぶやいた。
「……おいおい」
そのまま帰ろうかと思った。だが、女は転んだくらいでは平気なようだった。
両手をアスファルトについたまま、声をかけてくる。
「あんたら、どっちかが悠さんでしょう」
違うといえば良かったのだが、俺は根が正直だ。
「俺が小鳥遊悠だ。こっちは……助手」
隣にいた将也はえっ?という顔をした。
このままコイツだけ逃がしてなるものか。
俺は脇腹を肘でついた。
「えと、俺は星崎将也。そっちは誰だ。今夜何杯飲んだんだ」
「わかんなーい」
女はやけになって笑うと、池袋の月のない夜空に顔を向けた。
汗で化粧はどろどろ。
最悪の登場だ。
これではいいラブストーリーになるはずも無かった。