ー特別編ー哀愁ブルドック
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「たったそれだけの情報で、俺に話を振ってきたのか」
池袋の氷の王は眉をしかめた。
生意気な口をきく忠臣を持っていないかもしれない。
「ああ、ゆゆみのSガールズ(少女隊)経由で、話が持ち込まれた。なんでも、若い女が恐喝されて困っているらしいとな」
恐喝なら、ただの金目当てだった。
「そいつは立派な犯罪だ。警察に行けばいい。」
タカシはにこりと笑った。
このままあと二十秒も笑顔でいたら、池袋中の女たちが押し寄せてくるだろう。
リッカの店の売り上げも上がるかもしれない。
「事情があって、警察には行けないんだそうだ。孤立無援で、若い女が困っている。どうだ、お前の好きそうな状況じゃないか」
確かに嫌いではないかもしれない。
女がスタイルのいい美人なら、なおさら。
だが、とても暇つぶしになるようなおもしろい事件とはいえなかった。
いくら企業は空前の好業績で、東京都心はミニバブルといわれても、池袋のガキにまでは金は降ってこなかった。
最近のストリートでは、やたらと恐喝や詐欺やひったくりが多いのだ。
ボーイズ&ガールズはそれなりに見映えのいいカッコはしているが、とことん金を持っていない。
「弱ったな。全然やる気がわいてこない。リッカの代わりに店番でもしていたほうが、ましな気がするよ。」
まあ、だいたいの事件なんてそんなものだ。
タカシは生まれつきの王様なので、ねばるということを知らなかった。
「そうか、だったら無理だったと断っておく。今夜、待ち合わせを指定しておいたんだがな。」
そういわれたら、引くのも困難だった。
タカシはジーンズのポケットから、携帯電話を抜いた。
データフォルダから映像を選んでいる。
お目当てが見つかったようだ。
俺の方に小さな液晶画面を向けた。
黒髪に黒く、大きな瞳。
アイラインはチョークで塗ったような太さ。
終始トラブルを起こしているアメリカのティーンアイドルを思わせる女だった。
ブリトニー。
美人といえば美人なのだが、どこか壊れている。
「わかったよ。話だけでも聞いてみる。どこにいけばいい。」
「ハードコアのまえで、十二時に」
俺はすかさずやつにいった。
「こいつはタカシ経由の依頼なんだから、なにか手が必要になったらSウルフを借りてもいいんだよな」
少し考える顔をして、やつはいった。
「うーん、場合によってはあまり手をかけさせないでくれ。そうだ。将也を貸してやる。」
タカシがそういうと左右に分かれていた一人が俺の前に歩いてきた。
見知った顔は星崎将也。
俺の後輩でかなりの秀才リア充君なのだが、なぜかSウルフと付き合いを持っていたりする。
俺に軽く会釈した。
「ちぇき。あんまりタカシみたいなのと付き合わないほうがいいぞ」
将也はタカシの顔色をうかがいながら苦笑いを浮かべた。
「さて、おいしかったよ。ごちそうさま。俺はこれから集会があるんだ。」
たべ残しの柿を俺の方にさし出す。
仕方なく受け取った。
来た時と同じようにさよならもいわずに去っていく。
俺はてのひらのうえの柿と押し付けられた見栄えのしないトラブルを、心のなかで比較していた。
いったいどちらを、王様の紺ブレに投げつけるべきか。
人の痛みがわからないなんて、高貴な生まれの人間には困ったところがある。
池袋の氷の王は眉をしかめた。
生意気な口をきく忠臣を持っていないかもしれない。
「ああ、ゆゆみのSガールズ(少女隊)経由で、話が持ち込まれた。なんでも、若い女が恐喝されて困っているらしいとな」
恐喝なら、ただの金目当てだった。
「そいつは立派な犯罪だ。警察に行けばいい。」
タカシはにこりと笑った。
このままあと二十秒も笑顔でいたら、池袋中の女たちが押し寄せてくるだろう。
リッカの店の売り上げも上がるかもしれない。
「事情があって、警察には行けないんだそうだ。孤立無援で、若い女が困っている。どうだ、お前の好きそうな状況じゃないか」
確かに嫌いではないかもしれない。
女がスタイルのいい美人なら、なおさら。
だが、とても暇つぶしになるようなおもしろい事件とはいえなかった。
いくら企業は空前の好業績で、東京都心はミニバブルといわれても、池袋のガキにまでは金は降ってこなかった。
最近のストリートでは、やたらと恐喝や詐欺やひったくりが多いのだ。
ボーイズ&ガールズはそれなりに見映えのいいカッコはしているが、とことん金を持っていない。
「弱ったな。全然やる気がわいてこない。リッカの代わりに店番でもしていたほうが、ましな気がするよ。」
まあ、だいたいの事件なんてそんなものだ。
タカシは生まれつきの王様なので、ねばるということを知らなかった。
「そうか、だったら無理だったと断っておく。今夜、待ち合わせを指定しておいたんだがな。」
そういわれたら、引くのも困難だった。
タカシはジーンズのポケットから、携帯電話を抜いた。
データフォルダから映像を選んでいる。
お目当てが見つかったようだ。
俺の方に小さな液晶画面を向けた。
黒髪に黒く、大きな瞳。
アイラインはチョークで塗ったような太さ。
終始トラブルを起こしているアメリカのティーンアイドルを思わせる女だった。
ブリトニー。
美人といえば美人なのだが、どこか壊れている。
「わかったよ。話だけでも聞いてみる。どこにいけばいい。」
「ハードコアのまえで、十二時に」
俺はすかさずやつにいった。
「こいつはタカシ経由の依頼なんだから、なにか手が必要になったらSウルフを借りてもいいんだよな」
少し考える顔をして、やつはいった。
「うーん、場合によってはあまり手をかけさせないでくれ。そうだ。将也を貸してやる。」
タカシがそういうと左右に分かれていた一人が俺の前に歩いてきた。
見知った顔は星崎将也。
俺の後輩でかなりの秀才リア充君なのだが、なぜかSウルフと付き合いを持っていたりする。
俺に軽く会釈した。
「ちぇき。あんまりタカシみたいなのと付き合わないほうがいいぞ」
将也はタカシの顔色をうかがいながら苦笑いを浮かべた。
「さて、おいしかったよ。ごちそうさま。俺はこれから集会があるんだ。」
たべ残しの柿を俺の方にさし出す。
仕方なく受け取った。
来た時と同じようにさよならもいわずに去っていく。
俺はてのひらのうえの柿と押し付けられた見栄えのしないトラブルを、心のなかで比較していた。
いったいどちらを、王様の紺ブレに投げつけるべきか。
人の痛みがわからないなんて、高貴な生まれの人間には困ったところがある。