ー特別編ー哀愁ブルドック
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その電話はリッカの店に並べられた、秋の夕日みたいに赤い富有柿を手にとったときにやってきた。
時刻もちょうど、西一番街のビルの空が、透明に燃え上がる夕方。
リッカの店は夜遅くが稼ぎどきなので、まだまだ客の方はさっぱりだった。
店先ではベートーヴェンの七番がかかっていた。
たしかに秋といえば、この黄金の七番だな。
テレビドラマで何度もかかっていたから、すっかりおなじみになったかもしれないが、いい曲であることに変わりはない。
携帯電話からは、聞き慣れた声がした。
『悠か』
池袋の街でずっと王様を張り続け、永世キングの噂もあるタカシだった。
「そうだけど、合コンの誘い以外はお断りだ。俺、今、勉強で頭がいっぱいなんだ」
テストの期限まで数週間だった。
もちろんハナッから勉強なんてするきは無いんだけど。
この時点でテスト範囲を知らないのはなかなだ。なにせ、俺は頭のなか空っぽだからね。
タカシはひどく愉快そうに低く笑った。
『なんだ、まだ学生を続ける気があったのか。そんな事よりこっちの話を聞いてみないか、どうせ暇を持て余してるんだろ』
俺は柿を手にとって立ち上がった。
「めんどいのは嫌だぞ。」
俺が喰いついてきたのがわかったのだろう。
王様は余裕だ。
『どうかな。だが、おもしろい話ではある。』
このところ池袋も静かな日々が続いていた。
そろそろ学生以外の副業も良いかもしれない。
散歩といっしょで、全然金にならないサイドビジネスだけど、それでも退屈しないだけましだった。
「わかったよ。聞かせてくれ。」
最近の携帯って、本当にノイズが少なくなったよな。
耳もとで聞くタカシの声は、実物のようだった。
『ちょっと待て』
それだけけいうと、通話はぷつんと切れてしまった。
同時にジーパンのポケットに携帯電話をしまいながら、タカシが角をまがってやってきた。
この秋流行のスクールボーイ風のパイピングがついた紺のブレザーに、ワンウオッシュのジーンズ。
相変わらずのおしゃれ。
ボディガードは最少の二名だった。
やつはリッカの店の前のガードレールに座ると、右手をあげた。
「よう。こいつはベートーヴェンの七番第二楽章のアレグレットだな」
最近俺やリッカの影響で、タカシもクラシックをききはじめていた。
やつは頭もいいが、耳もいい。
これではすぐに追い抜かれてしまうかもしれない。
俺はキングにかなりのスピードで手にしていた柿を投げつけてやった。
アンダーハンドのトスじゃなく、オーバースロー。
奴は顔色も変えずにぴたりっと吸いつくように果物をうけとり、にやりと笑う。
「音楽の趣味はいいが、ピッチャーとしての才能はあまりないみたいだな。」
俺も並んで腰を降ろした。
随行員の二名はリッカの果物屋の左右に展開した。
「で、今回の依頼はなんなんだ。」
タカシは皮をむかずに富有柿にかじりついた。
「甘いものだな。渋そうなふりをして甘いところは、悠に良く似ている。依頼主は俺ではない。お前の嫌いな暴力団でもない。若い女だ。詳しい話は俺もよく知らない。」
王様にはあきれたものだ。
下々の生活に関心がないのかもしれない。
時刻もちょうど、西一番街のビルの空が、透明に燃え上がる夕方。
リッカの店は夜遅くが稼ぎどきなので、まだまだ客の方はさっぱりだった。
店先ではベートーヴェンの七番がかかっていた。
たしかに秋といえば、この黄金の七番だな。
テレビドラマで何度もかかっていたから、すっかりおなじみになったかもしれないが、いい曲であることに変わりはない。
携帯電話からは、聞き慣れた声がした。
『悠か』
池袋の街でずっと王様を張り続け、永世キングの噂もあるタカシだった。
「そうだけど、合コンの誘い以外はお断りだ。俺、今、勉強で頭がいっぱいなんだ」
テストの期限まで数週間だった。
もちろんハナッから勉強なんてするきは無いんだけど。
この時点でテスト範囲を知らないのはなかなだ。なにせ、俺は頭のなか空っぽだからね。
タカシはひどく愉快そうに低く笑った。
『なんだ、まだ学生を続ける気があったのか。そんな事よりこっちの話を聞いてみないか、どうせ暇を持て余してるんだろ』
俺は柿を手にとって立ち上がった。
「めんどいのは嫌だぞ。」
俺が喰いついてきたのがわかったのだろう。
王様は余裕だ。
『どうかな。だが、おもしろい話ではある。』
このところ池袋も静かな日々が続いていた。
そろそろ学生以外の副業も良いかもしれない。
散歩といっしょで、全然金にならないサイドビジネスだけど、それでも退屈しないだけましだった。
「わかったよ。聞かせてくれ。」
最近の携帯って、本当にノイズが少なくなったよな。
耳もとで聞くタカシの声は、実物のようだった。
『ちょっと待て』
それだけけいうと、通話はぷつんと切れてしまった。
同時にジーパンのポケットに携帯電話をしまいながら、タカシが角をまがってやってきた。
この秋流行のスクールボーイ風のパイピングがついた紺のブレザーに、ワンウオッシュのジーンズ。
相変わらずのおしゃれ。
ボディガードは最少の二名だった。
やつはリッカの店の前のガードレールに座ると、右手をあげた。
「よう。こいつはベートーヴェンの七番第二楽章のアレグレットだな」
最近俺やリッカの影響で、タカシもクラシックをききはじめていた。
やつは頭もいいが、耳もいい。
これではすぐに追い抜かれてしまうかもしれない。
俺はキングにかなりのスピードで手にしていた柿を投げつけてやった。
アンダーハンドのトスじゃなく、オーバースロー。
奴は顔色も変えずにぴたりっと吸いつくように果物をうけとり、にやりと笑う。
「音楽の趣味はいいが、ピッチャーとしての才能はあまりないみたいだな。」
俺も並んで腰を降ろした。
随行員の二名はリッカの果物屋の左右に展開した。
「で、今回の依頼はなんなんだ。」
タカシは皮をむかずに富有柿にかじりついた。
「甘いものだな。渋そうなふりをして甘いところは、悠に良く似ている。依頼主は俺ではない。お前の嫌いな暴力団でもない。若い女だ。詳しい話は俺もよく知らない。」
王様にはあきれたものだ。
下々の生活に関心がないのかもしれない。