ー特別編ーストリートキャッチャー
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その後、週刊誌やスポーツ新聞で続いたブラッド宮元のたたきについては、俺よりもみんなのほうがきっと詳しいだろう。
いつの間にかレギュラー番組を降板させられたブラッド宮元(本名=宮元亮二)は、その後、消費者基本法、消費者契約法、特定商取引法、薬事法の各違反で、警察から取り調べを受けることになった。
たいしたこのない人物を一気に引き上げてスターに仕立てて、次にみんなでつてきまわして潰してしまう。
いつもながら手のひら返しのタレントバッシングだった。
俺はこの事件のお礼ということで、またフォーシーズンズのイタリアンに呼ばれた。
今回はナナエとミチコの二人だけだ。
ミス平凡は田舎の両親のところに帰ったという。
たとえ宮元が有罪になったとしても、被害の全額がもどることは無いそうだ。
またそれにはまだ何年もの時間がかかってしまうらしい。
教訓は一つだ。
【俺たちが生きている世界では、圧倒的にだますよりだまされるほうが悪い】
すべてが終わって一週間後、俺はタカシから呼び出された。
また同じ真夜中の千登世橋のうえ。新宿の超高層が繭にでも包まれたように白くかすむ曇り空の夜だった。
「なんだよ、タカシのほうから誘うなんて珍しいな。」
キングはジル・サンダーの透ける素材のシャツジャケットを着て、橋の欄干にもたれていた。
空にはふれたら切れそうな三日月。
「悠に礼をいおうと思ってな」
たいへんにありがたい王のお言葉だった。
今年の夏は雪が降るかもしれない。
俺がビックリして黙っていると、やつは白いパンツのポケットから封筒をとりだした。
「悠にやるよ。ブラッド宮元からの報奨金だ。Sウルフは別口で被害者の会から、受け取っているからな」
俺はカチンときてしまった。そんな金などほしくない。
「別な金なら、喜んで受けとるさ。でも、そいつはあの商売オカマの汚れた金だし、タカシが一週間女の連絡先を集めてもらった歩合だろ。そいつはお前自身で稼いだ金だ。そんなもん、二重の意味で断じてもらいたくない。」
タカシは霜でもおりたように冷えた表情のまま、少しだけ笑った。
「やっぱり悠もそうか。俺もこんなものはいらないんだ。」
そういうと欄干から手を伸ばし、封筒を明治通りに落としてしまった。
金一封のはいった白い封筒は、自動車が起こす風にあおられ、ひらひらと宙を舞う。
気がついたときには叫んでいた。
「もったいないじゃないか。お前はいつか一円に泣くぞ。」
「間抜け、あの封筒の中身は十万だ。もういいんだ、飲みにいくぞ。お前を歓迎しようと、Sウルフのガールズの被害者の会がラスタ・ラヴで待ってる。俺のおごりだ、朝まで好きなだけ呑んでくれ。」
池袋のキングがこんなに優しいなんて、やはり今年の夏も異常気象に違いない。
メルセデスのRVが静かにやってきて、俺たちのわきにとまった。
黒いボディに三日月が映っている。
なんだか実物よりも、きれいに見えた。
俺は意味もなく右手をさしだした。
タカシは不思議そうな顔で俺の手を見た。
「なんだ、それ」
「だから、友情の握手」
タカシは売り物のロックアイスのように角のとがった声でいう。
「キモチワルッ」
そのままやつはRVに乗り込んでしまった。
感心した俺がバカだったのだ。
今夜ひと晩キングとは絶対に口を聞かない。
そう固く決心して、俺はタカシのとなりの空席に滑り込んだ。
ーストリートキャッチャー・完ー
いつの間にかレギュラー番組を降板させられたブラッド宮元(本名=宮元亮二)は、その後、消費者基本法、消費者契約法、特定商取引法、薬事法の各違反で、警察から取り調べを受けることになった。
たいしたこのない人物を一気に引き上げてスターに仕立てて、次にみんなでつてきまわして潰してしまう。
いつもながら手のひら返しのタレントバッシングだった。
俺はこの事件のお礼ということで、またフォーシーズンズのイタリアンに呼ばれた。
今回はナナエとミチコの二人だけだ。
ミス平凡は田舎の両親のところに帰ったという。
たとえ宮元が有罪になったとしても、被害の全額がもどることは無いそうだ。
またそれにはまだ何年もの時間がかかってしまうらしい。
教訓は一つだ。
【俺たちが生きている世界では、圧倒的にだますよりだまされるほうが悪い】
すべてが終わって一週間後、俺はタカシから呼び出された。
また同じ真夜中の千登世橋のうえ。新宿の超高層が繭にでも包まれたように白くかすむ曇り空の夜だった。
「なんだよ、タカシのほうから誘うなんて珍しいな。」
キングはジル・サンダーの透ける素材のシャツジャケットを着て、橋の欄干にもたれていた。
空にはふれたら切れそうな三日月。
「悠に礼をいおうと思ってな」
たいへんにありがたい王のお言葉だった。
今年の夏は雪が降るかもしれない。
俺がビックリして黙っていると、やつは白いパンツのポケットから封筒をとりだした。
「悠にやるよ。ブラッド宮元からの報奨金だ。Sウルフは別口で被害者の会から、受け取っているからな」
俺はカチンときてしまった。そんな金などほしくない。
「別な金なら、喜んで受けとるさ。でも、そいつはあの商売オカマの汚れた金だし、タカシが一週間女の連絡先を集めてもらった歩合だろ。そいつはお前自身で稼いだ金だ。そんなもん、二重の意味で断じてもらいたくない。」
タカシは霜でもおりたように冷えた表情のまま、少しだけ笑った。
「やっぱり悠もそうか。俺もこんなものはいらないんだ。」
そういうと欄干から手を伸ばし、封筒を明治通りに落としてしまった。
金一封のはいった白い封筒は、自動車が起こす風にあおられ、ひらひらと宙を舞う。
気がついたときには叫んでいた。
「もったいないじゃないか。お前はいつか一円に泣くぞ。」
「間抜け、あの封筒の中身は十万だ。もういいんだ、飲みにいくぞ。お前を歓迎しようと、Sウルフのガールズの被害者の会がラスタ・ラヴで待ってる。俺のおごりだ、朝まで好きなだけ呑んでくれ。」
池袋のキングがこんなに優しいなんて、やはり今年の夏も異常気象に違いない。
メルセデスのRVが静かにやってきて、俺たちのわきにとまった。
黒いボディに三日月が映っている。
なんだか実物よりも、きれいに見えた。
俺は意味もなく右手をさしだした。
タカシは不思議そうな顔で俺の手を見た。
「なんだ、それ」
「だから、友情の握手」
タカシは売り物のロックアイスのように角のとがった声でいう。
「キモチワルッ」
そのままやつはRVに乗り込んでしまった。
感心した俺がバカだったのだ。
今夜ひと晩キングとは絶対に口を聞かない。
そう固く決心して、俺はタカシのとなりの空席に滑り込んだ。
ーストリートキャッチャー・完ー