「「グッドモーニング、サー」」

やつは簡単な挨拶をしてから、また成績優秀者の名前を呼んだ。

「サイモン、トーマス、リバー。うちのトップガン三名、まえに」

タカシが俺のとなりで、軽くうなずいた。
すでにポケットのなかの機材のスイッチは入れられている。

俺たちはトイレの個室のなかで、お互いにチエックをすませていた。
タカシがステージに移動した。

静かに壇上に上がり、姿勢よく待つ。
ブラッド宮元がタカシの肩を叩いた。

「リバー、君ならやってくれると期待していた。おめでとう」

白い封筒を手渡された。
拍手が起こる。
個人表彰は流れ作業で終了した。

つぎは恐怖の見せしめの時間だ。

「アクセル、クリス、コリン。おまえたちはどういうつもりだ。こっちにこい」

格闘技用のグローブをはめながら、ブラッドが怒鳴っていた。

この声が録れるのなら、一発殴られるくらい安いもの。

俺の先をステージにむかうアクセルの背中が小刻みに震えていた。

俺は三人の成績下位者の中央。左手にアクセルがいて、その正面に宮元が立った。

撮影のために上半身全体を左に向ける。
ステージの端では、タカシがやはりこちらに身体を向けていた。

「いいカモを集められないやつは、自分がカモの代わりになるんだ」

ブラッド宮元が一週間前と同じ手順を踏んだ。
頬を張り、衝撃で身体がゆるんだ隙をついて、腹にフックを刺す。

腰のはいったいい右だった。

つぎは俺の番だ。
動画サイトに登場するのは気が進まないが仕方無い。腹筋に力をいれて、ボディブローに備えた。

そのとき、誰かがステージのしたで叫んだ。

「思い出した。そいつは池袋の何でも屋の悠だ！ボス、そいつはいろんなやつをはめて、潰してきてます。気をつけてください。」

そちらの方に目をやると、あのルーサーが俺を指差していた。

タカシの右手が上着のポケットに入った。
SOSを送っているのだろう。

ステージしたから古参のキャッチが何人か上がってきた。

タカシが叫んだ。

「悠、十秒持ちこたえろ」

俺は飛びかかってきた最初の男の拳を腰をしずめて避けた。

膝を戻す反動をつかって、ショートレンジの右肘を男の頬骨にぶち当てる。

メシリと骨の逝く音がきれいに聞こえた。
男はその場に崩れ落ちた。

「悠、うしろだ」

もうひとりのキャッチが襲ってきた。
最初の男が倒されたので、慎重になっていた。

なかなか突っ掛けてこない。

俺は身体を丸めて、防御の姿勢をとっていた。

下手に闘って、機材が壊れるのが心配だったのだ。