ー特別編ーストリートキャッチャー
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「それにとくに優れているのは音が静かなことなのよ。個体メモリに録画するから、テープやディスクみたいにモーターをまわす必要がないわ。盗撮にはぴったりなのよ」
まったくメカおたくは幸福なものだった。
この世界がビデオカメラのように単純だったらいいのだが。
「超小型のCCDカメラをスーツのポケットか襟元につけておくから、あとでどのいちに立つとフレームがどのくらいの大きさになるか、確かめておいて。まあ、映像のほうはあんまり心配してないけどね」
イナバは楽しいのか、くすくすと笑って前髪をかきあげた。
「難しいのはきちんと鮮明な音を録ることのほうなの。音はデリケートだからね。でも、こっちにもデジタル録音のすごいメカがあるわ。スルーで普通に録るだけで、並のCDよりもいい音でステレオ収録できるリニアPCMのレコーダーよ。」
ビデオカメラよりも少しだけおおきな録音機をとりだした。
「まあ、予備にiCレコーダーもつけておくわ、やっぱり音はこっちの方が圧倒的にいいのよ」
タカシは苦笑していた。
「わかった、わかった。いいから、操作方法を教えろ。」
ゼニアのジャケットの裏地に穴を開けられるのは嫌だったが、子供の小指の爪ほどのマイクとCCDカメラを通すためには仕方なかった。
機材は上着の内ポケットとパンツの尻ポケットに振り分けた。
どちらもほとんどスーツのラインを崩さないほど小型である。
それから俺らは何度かリハーサルをおこなった。
おれがタカシを撮り、タカシが俺を撮る。
二、三度練習すれば、もう十分だった。
俺たちに必要なのは芸術的な名カットではなく、あるがままドキュメンタリータッチの暴力シーンだ。
夏の熱気がかげろうのように揺らめきだした円形広場を離れて、冷房のきいたメルセデスのなかで時間まで待機した。
ようやくこれで一週間の苦労も報われるというものだ。
目白に向かうクルマのなかで、タカシがいった。
「今回のシューティングにはそれほど危険はないと思う。だが、万が一ということがあるからな、Sウルフの腕利きを十人ほど建物の周囲に散開させている。まあ、実際につかうことはないだろうが、バックアップ要員だ。」
わかったといった。
三十分前に千登世橋でRVをおりてハンドレッドビューティに向かった。
さすがに緊張して、喉が乾いてしかたない。
タカシはあのクールな表情を崩さなかった。
どんな心臓をしているんだろう。
朝礼が始まったのは、定時の午前十時ちょうど。
ステージにブラッド宮元が登ると、俺たちキャッチは直立不動で叫んだ。
まったくメカおたくは幸福なものだった。
この世界がビデオカメラのように単純だったらいいのだが。
「超小型のCCDカメラをスーツのポケットか襟元につけておくから、あとでどのいちに立つとフレームがどのくらいの大きさになるか、確かめておいて。まあ、映像のほうはあんまり心配してないけどね」
イナバは楽しいのか、くすくすと笑って前髪をかきあげた。
「難しいのはきちんと鮮明な音を録ることのほうなの。音はデリケートだからね。でも、こっちにもデジタル録音のすごいメカがあるわ。スルーで普通に録るだけで、並のCDよりもいい音でステレオ収録できるリニアPCMのレコーダーよ。」
ビデオカメラよりも少しだけおおきな録音機をとりだした。
「まあ、予備にiCレコーダーもつけておくわ、やっぱり音はこっちの方が圧倒的にいいのよ」
タカシは苦笑していた。
「わかった、わかった。いいから、操作方法を教えろ。」
ゼニアのジャケットの裏地に穴を開けられるのは嫌だったが、子供の小指の爪ほどのマイクとCCDカメラを通すためには仕方なかった。
機材は上着の内ポケットとパンツの尻ポケットに振り分けた。
どちらもほとんどスーツのラインを崩さないほど小型である。
それから俺らは何度かリハーサルをおこなった。
おれがタカシを撮り、タカシが俺を撮る。
二、三度練習すれば、もう十分だった。
俺たちに必要なのは芸術的な名カットではなく、あるがままドキュメンタリータッチの暴力シーンだ。
夏の熱気がかげろうのように揺らめきだした円形広場を離れて、冷房のきいたメルセデスのなかで時間まで待機した。
ようやくこれで一週間の苦労も報われるというものだ。
目白に向かうクルマのなかで、タカシがいった。
「今回のシューティングにはそれほど危険はないと思う。だが、万が一ということがあるからな、Sウルフの腕利きを十人ほど建物の周囲に散開させている。まあ、実際につかうことはないだろうが、バックアップ要員だ。」
わかったといった。
三十分前に千登世橋でRVをおりてハンドレッドビューティに向かった。
さすがに緊張して、喉が乾いてしかたない。
タカシはあのクールな表情を崩さなかった。
どんな心臓をしているんだろう。
朝礼が始まったのは、定時の午前十時ちょうど。
ステージにブラッド宮元が登ると、俺たちキャッチは直立不動で叫んだ。