ー特別編ーストリートキャッチャー
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「けっこう厳しいみたいですね、アクセルさん」
ガキは青い顔をして振り返った。
「数字をあげなきゃ、来週からはお前たちの番だ。」
研修室は殺風景な小部屋で、液晶テレビとDVDプレーヤーがおいてあるだけだった。
アクセルがディスクをセットしていった。
「午前中はこのビデオを見ておけ。うちのエステの基本的なサービスと商品の説明してある」
タカシがまた敬礼した。
「イエス、アクセル」
「ボスがいないところでは、そういうのやめろよ。気持ち悪いだろ、なにがアクセルだ。俺にはちゃんと臣吾って日本人の名前がある。じゃあな」
それから残る午前の九十分はインチキエステの業務用ビデオの鑑賞会になった。タカシはいう。
「さっきの朝礼のシーンだけでも世の中に流せば、それでブラッド宮元のイメージは崩壊するな。」
そのブラッドが画面のなかでは、猫なで声で自分で発明したというBMマッサージについて説明していた。
営業オカマもこけまでできればたいしたものだ。
「だけどどうやって、あんな絵を撮るんだ。朝礼にはこの会社のやつが三十人もいるんだぞ。」
キングは落ち着いたものだった。涼しい顔でいう。
「このマッサージは本当にきくのかな。考えるのは、そっちの仕事だろ。働け、コリン」
王様を一発殴ったら、ほんとに胸がすくんだがな。
忠実なる臣民はつらい。
俺とタカシは初日から路上に立たされた。
目白駅まえの広場である。
猛暑日にはすこし足りない夏の午後だ。
俺はすぐに汗だくになったが、スーツの上着を脱ぐことは許されていなかった。
ぽたぽたと汗を額から落としながら、駅前をいく女たちに声をかける。
さぞかし不気味なことだったろう。
すまない、高級住宅街の女性たち。
俺のほうは午後の六時間で、立ち止まってくれたのは二人だけだった。
そのふたりも、エステの話をしたとたんにアウト。
問答無用でいってしまう。
タカシはやはりキャッチをしてもキングだった。
つぎつぎと声をかけ、そのほとんどでうまくいってしまうのだ。
ほんの五分も立ち話しただけで、女たちは頬を赤くして、携帯の番号とアドレスをおいていく。
ハンドレッドビューティのキャッチの場合、その場で撮影会に持ち込まなくてもかまわないのだった。
連絡先を聞いておいて、後日ゆっくりと口説きおとす方法を、やつらは「ツバメ返し」と呼んで重宝しているようだ。
その日は午後の戦果は、タカシがカモの連絡先十四本、おれがゼロ。
キャッチにも歴然と才能の差があるのだった。
やっぱり神さまは不公平。
ガキは青い顔をして振り返った。
「数字をあげなきゃ、来週からはお前たちの番だ。」
研修室は殺風景な小部屋で、液晶テレビとDVDプレーヤーがおいてあるだけだった。
アクセルがディスクをセットしていった。
「午前中はこのビデオを見ておけ。うちのエステの基本的なサービスと商品の説明してある」
タカシがまた敬礼した。
「イエス、アクセル」
「ボスがいないところでは、そういうのやめろよ。気持ち悪いだろ、なにがアクセルだ。俺にはちゃんと臣吾って日本人の名前がある。じゃあな」
それから残る午前の九十分はインチキエステの業務用ビデオの鑑賞会になった。タカシはいう。
「さっきの朝礼のシーンだけでも世の中に流せば、それでブラッド宮元のイメージは崩壊するな。」
そのブラッドが画面のなかでは、猫なで声で自分で発明したというBMマッサージについて説明していた。
営業オカマもこけまでできればたいしたものだ。
「だけどどうやって、あんな絵を撮るんだ。朝礼にはこの会社のやつが三十人もいるんだぞ。」
キングは落ち着いたものだった。涼しい顔でいう。
「このマッサージは本当にきくのかな。考えるのは、そっちの仕事だろ。働け、コリン」
王様を一発殴ったら、ほんとに胸がすくんだがな。
忠実なる臣民はつらい。
俺とタカシは初日から路上に立たされた。
目白駅まえの広場である。
猛暑日にはすこし足りない夏の午後だ。
俺はすぐに汗だくになったが、スーツの上着を脱ぐことは許されていなかった。
ぽたぽたと汗を額から落としながら、駅前をいく女たちに声をかける。
さぞかし不気味なことだったろう。
すまない、高級住宅街の女性たち。
俺のほうは午後の六時間で、立ち止まってくれたのは二人だけだった。
そのふたりも、エステの話をしたとたんにアウト。
問答無用でいってしまう。
タカシはやはりキャッチをしてもキングだった。
つぎつぎと声をかけ、そのほとんどでうまくいってしまうのだ。
ほんの五分も立ち話しただけで、女たちは頬を赤くして、携帯の番号とアドレスをおいていく。
ハンドレッドビューティのキャッチの場合、その場で撮影会に持ち込まなくてもかまわないのだった。
連絡先を聞いておいて、後日ゆっくりと口説きおとす方法を、やつらは「ツバメ返し」と呼んで重宝しているようだ。
その日は午後の戦果は、タカシがカモの連絡先十四本、おれがゼロ。
キャッチにも歴然と才能の差があるのだった。
やっぱり神さまは不公平。