ー特別編ーストリートキャッチャー
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「あの、おれ、今飛び込みの営業やらされてるんですけど、どんなに頑張ってもぜんぜん給料があがらないんです。歩合じゃないもんで。仕事やめようかなって悩んでたもんですから」
ガキはおれから目をそらし、改札を抜ける人波に目をやった。
獲物を探す視線だ。
「歩合はつくけど、こっちの仕事も楽じゃねえよ。うえのいうことには絶対服従だし、叩かれても文句もいえねえしな」
俺は金にしか関心のない間抜けの振りをした。
「でも、歩合制ですよね。いいなあ」
ガキは仕事の邪魔をされていらついたようだった。
「うるせえな、向こう行け。うちはネットでリクルートしてるから、ブラッド宮元のハンドレッドビューティのサイトでも、勝手にのぞけ。いっとくけど、こっちだって人の入れ替わりは激しいからな」
俺は頭をさげてから、直立不動でいった。
「はい。ありがとうございました、先輩」
かわいそうなこのガキから、いいアイディアをもらったのだ。
俺の礼の気持ちには雑じり気はなかった。
夕方のラッシュが始まった山手線にのるきにはなれなかった。
そのまま線路沿いに歩いて池袋に帰った。
西日を浴びて、そんな道を歩いていると、ガキのころを思い出した。
家に帰りたくなくて、ずっとどこまでもわき道をぼとぼと歩いていく。
あれは心のどこかが破けるようか切ない気持ちだった。
人間は大人になってもたいして変わらないのだと思った。
クラスのなかの友人関係に悩んでいたのが、悪質なキャッチ対策で悩むようになるだけである。
進歩ゼロのさして意味のない悩み。
もうすぐ芸術劇場というところで、俺の携帯がなった。
『よう、悠か』
夏の夕日などどこ吹く風のタカシの冷たい声だった。
『面接は無事すんだようだな。仕事も請けることにきまったんだってな』
被害者の会から連絡が入ったのだろう。
タカシは笑いをふくんだ声でいう。
『今回はぼったくってやるんじゃなかったのか』
嫌味な王様。
「ふざけんなよ。結婚資金を空っぽにされた女から、金なんか受け取れないだろ」
雪が積もるようにキングは静かに笑った。
『策はあるのか』
雪を吹き飛ばすように俺はいってやった。
「当たり前だ、誰だと思ってる」
俺は目白駅の広場で浮かんだばかりのアイディアを話してやった。
タカシは携帯のむこうで、高原の風のように乾いた笑い声をあげる。
『おもしろいな、お前が潜入キャッチマンになるのか。悠なら口がうまいから、けっこう稼げるかもしれないな』
まったく多彩な才能があって困ってしまう。
なぜ、俺には年収はないのだろうか。
ガキはおれから目をそらし、改札を抜ける人波に目をやった。
獲物を探す視線だ。
「歩合はつくけど、こっちの仕事も楽じゃねえよ。うえのいうことには絶対服従だし、叩かれても文句もいえねえしな」
俺は金にしか関心のない間抜けの振りをした。
「でも、歩合制ですよね。いいなあ」
ガキは仕事の邪魔をされていらついたようだった。
「うるせえな、向こう行け。うちはネットでリクルートしてるから、ブラッド宮元のハンドレッドビューティのサイトでも、勝手にのぞけ。いっとくけど、こっちだって人の入れ替わりは激しいからな」
俺は頭をさげてから、直立不動でいった。
「はい。ありがとうございました、先輩」
かわいそうなこのガキから、いいアイディアをもらったのだ。
俺の礼の気持ちには雑じり気はなかった。
夕方のラッシュが始まった山手線にのるきにはなれなかった。
そのまま線路沿いに歩いて池袋に帰った。
西日を浴びて、そんな道を歩いていると、ガキのころを思い出した。
家に帰りたくなくて、ずっとどこまでもわき道をぼとぼと歩いていく。
あれは心のどこかが破けるようか切ない気持ちだった。
人間は大人になってもたいして変わらないのだと思った。
クラスのなかの友人関係に悩んでいたのが、悪質なキャッチ対策で悩むようになるだけである。
進歩ゼロのさして意味のない悩み。
もうすぐ芸術劇場というところで、俺の携帯がなった。
『よう、悠か』
夏の夕日などどこ吹く風のタカシの冷たい声だった。
『面接は無事すんだようだな。仕事も請けることにきまったんだってな』
被害者の会から連絡が入ったのだろう。
タカシは笑いをふくんだ声でいう。
『今回はぼったくってやるんじゃなかったのか』
嫌味な王様。
「ふざけんなよ。結婚資金を空っぽにされた女から、金なんか受け取れないだろ」
雪が積もるようにキングは静かに笑った。
『策はあるのか』
雪を吹き飛ばすように俺はいってやった。
「当たり前だ、誰だと思ってる」
俺は目白駅の広場で浮かんだばかりのアイディアを話してやった。
タカシは携帯のむこうで、高原の風のように乾いた笑い声をあげる。
『おもしろいな、お前が潜入キャッチマンになるのか。悠なら口がうまいから、けっこう稼げるかもしれないな』
まったく多彩な才能があって困ってしまう。
なぜ、俺には年収はないのだろうか。